衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2019年4月)
ここでは、2019年(平成31年)4月公表の過去問のうち「関係法令:有害(有害業務に係るもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、特例第1種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、第2種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2019年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2019年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2019年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2019年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2019年4月)
問1 ある製造業の事業場の労働者数及び有害業務等従事状況並びに産業医及び衛生管理者の選任の状況は、次の①~③のとおりである。
この事業場の産業医及び衛生管理者の選任についての法令違反の状況に関する(1)~(5)の記述のうち、正しいものはどれか。
ただし、産業医及び衛生管理者の選任の特例はないものとする。
① 労働者数及び有害業務等従事状況
常時使用する労働者数は800人であり、このうち、深夜業を含む業務に常時500人が、著しく暑熱な場所における業務に常時20人が従事しているが、他に有害業務に従事している者はいない。
② 産業医の選任の状況
選任している産業医は1人である。
この産業医は、この事業場に専属の者ではないが、産業医としての法令の要件を満たしている医師である。
③ 衛生管理者の選任の状況
選任している衛生管理者は3人である。
このうち1人は、この事業場に専属でない労働衛生コンサルタントで、衛生工学衛生管理者免許を有していない。
他の2人は、この事業場に専属で、共に衛生管理者としての業務以外の業務を兼任しており、また、第一種衛生管理者免許を有しているが、衛生工学衛生管理者免許を有していない。
(1)選任している産業医がこの事業場に専属でないことが違反である。
(2)選任している衛生管理者数が少ないことが違反である。
(3)衛生管理者として選任している労働衛生コンサルタントがこの事業場に専属でないことが違反である。
(4)衛生工学衛生管理者免許を有する者のうちから選任した衛生管理者が1人もいないことが違反である。
(5)専任の衛生管理者が1人もいないことが違反である。
(1)は正しい。常時1,000人以上の労働者を使用する事業場、または深夜業を含む業務などに常時500人以上の労働者を従事させる事業場では、産業医は、その事業場に専属の者でなければなりません。問題文では「常時使用する労働者数は800人」「深夜業を含む業務に500人」とありますので、選任している産業医がこの事業場に専属でないことが違反です。
(2)は誤り。常時500人を超え1,000人以下の労働者を使用する事業場では、衛生管理者を3人以上選任しなければなりません。問題文では「常時使用する労働者数は800人」「選任している衛生管理者数は3人」とありますので、違反ではありません。
(3)は誤り。衛生管理者を2人以上選任する場合は、そのうち1人だけ、事業場に専属でない労働衛生コンサルタントから衛生管理者を選任することができます。問題文では「1人は、この事業場に専属でない労働衛生コンサルタント」とありますので、違反ではありません。
(4)は誤り。常時労働者500人を超え、さらに、著しく暑熱な場所における業務などの有害業務に常時労働者30人以上の事業場には、衛生管理者のうち1人を、衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任しなければなりません。問題文では「著しく暑熱な場所における業務に常時20人」とありますので、違反ではありません。
(5)は誤り。常時労働者1,000人を超える事業場、または常時労働者500人を超え、さらに、著しく暑熱な場所における業務などの有害業務に常時労働者30人以上の事業場では、衛生管理者のうち、少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければなりません。問題文では「著しく暑熱な場所における業務に常時20人」とありますので、違反ではありません。
問2 次の作業のうち、法令上、作業主任者を選任しなければならないものはどれか。
(1)鉛蓄電池を解体する工程において人力で鉛等を運搬する業務に係る作業
(2)屋内作業場におけるアーク溶接の作業
(3)レーザー光線による金属加工の作業
(4)試験研究業務として塩素を取り扱う作業
(5)潜水器を用いボンベからの給気を受けて行う潜水作業
答え(1)
(1)は正しい。このような鉛作業については、鉛作業主任者技能講習を修了した者のうちから鉛作業主任者を選任しなければなりません。
(2)(3)(4)(5)の作業では、作業主任者の選任が規定されていません。
▼「金属アーク溶接等作業」について法改正がありました。
【改正前】作業主任者の選任は義務付けられていませんでした。
【改正後】「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者のうちから作業主任者を選任することが義務付けられました。
改正日は令和2年4月22日で、施行日は令和3年4月1日です。
ただし、作業主任者の選任については、1年間の経過措置が設けられています。
またこれに関連する他の内容についても改正されています。
施行日以降は、新基準での解答が求められますので「(2)屋内作業場におけるアーク溶接の作業」も正答となり、この問題は成立しなくなりますのでご注意ください。
【参考】金属アーク溶接等作業について健康障害防止措置が義務付けられます(屋内作業場での継続作業)
問3 次の業務に労働者を就かせるとき、法令に基づく安全又は衛生のための特別の教育を行わなければならないものはどれか。
(1)有機溶剤等を入れたことがあるタンクの内部における業務
(2)強烈な騒音を発する場所における作業に係る業務
(3)人力により重量物を取り扱う業務
(4)ガンマ線照射装置を用いて行う透過写真の撮影の業務
(5)削岩機、チッピングハンマー等チェーンソー以外の振動工具を取り扱う業務
(1)(2)(3)(5)は、特別の教育が規定されていません。
(4)は、特別の教育を行わなければなりません。なお、工業用ガンマ線照射装置とは、装置の内部に放射性物質が組み込まれており、ガンマ線という放射線を照射する装置です。
たとえばパイプラインなどのレントゲン写真を撮影することができ、その写真を見ることで、亀裂などが無いかを検査することができます。
多量のガンマ線の被ばくにより、皮膚障害、眼の障害、造血器障害などを起こすおそれがあるため、事前に特別の教育が必要なのです。
問4 次の特定化学物質を製造しようとするとき、労働安全衛生法に基づく厚生労働大臣の許可を必要としないものはどれか。
(1)ベンゾトリクロリド
(2)ベリリウム
(3)オルト-フタロジニトリル
(4)ジアニシジン
(5)アルファ-ナフチルアミン
(1)(2)(4)(5)は、製造許可物質に該当します。これらは特定化学物質の第一類物質に該当します。
(3)オルト-フタロジニトリルは、製造許可物質に該当しません。オルト-フタロジニトリルは、特定化学物質の第二類物質に該当します。
問5 有機溶剤業務を行う場合等の措置について、法令に違反しているものは次のうちどれか。
ただし、有機溶剤中毒予防規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。
(1)屋内作業場で、第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に設置した空気清浄装置を設けていない局所排気装置の排気口で、厚生労働大臣が定める濃度以上の有機溶剤を排出するものの高さを、屋根から1.5mとしている。
(2)第三種有機溶剤等を用いて払拭の業務を行う屋内作業場について、定期に、当該有機溶剤の濃度を測定していない。
(3)屋内作業場で、第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務を労働者に行わせるとき、その作業場所に最大0.4m/sの制御風速を出し得る能力を有する側方吸引型外付け式フードの局所排気装置を設け、かつ、作業に従事する労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させている。
(4)屋内作業場で、第二種有機溶剤等を用いる試験の業務に労働者を従事させるとき、有機溶剤作業主任者を選任していない。
(5)有機溶剤等を入れてあった空容器の処理として、有機溶剤の蒸気が発散するおそれのある空容器を屋外の一定の場所に集積している。
(1)(2)(4)(5)は違反していない。
(3)は違反している。作業場所に設ける局所排気装置について、「囲い式フード」の場合、0.4m/sの制御風速(フード開口面における最小風速)を出すことができる能力を有するものでなければなりません。
問6 次の粉じん作業のうち、法令上、特定粉じん作業に該当するものはどれか。
(1)屋内のガラスを製造する工程において、原料を溶解炉に投げ入れる作業
(2)耐火物を用いた炉を解体する作業
(3)屋内において、研磨材を用いて手持式動力工具により金属を研磨する箇所における作業
(4)屋内において、フライアッシュを袋詰めする箇所における作業
(5)タンクの内部において、金属をアーク溶接する作業
(1)(2)(3)(5)は該当しない。
(4)は該当する。粉じん作業には、通常の「粉じん作業」と「特定粉じん作業」とがあります。
「粉じん作業」よりも、「特定粉じん作業」の方が有害性が高く、屋内において、フライアッシュを袋詰めする箇所における作業は、典型的な特定粉じん作業です。
問7 労働安全衛生規則に基づき、関係者以外の者が立ち入ることを禁止しなければならない場所に該当しないものは、次のうちどれか。
(1)多量の高熱物体を取り扱う場所
(2)病原体による汚染のおそれの著しい場所
(3)ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所
(4)炭酸ガス(二酸化炭素)濃度が1.5%を超える場所
(5)硫化水素濃度が10ppmを超える場所
(3)は該当しない。
(1)(2)(4)(5)は該当する。
次の場所には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、その旨を表示します。
●多量の高温物体・低温物体を取り扱う場所
●著しく暑熱・寒冷な場所
●超音波にさらされる場所
●炭酸ガス(二酸化炭素)濃度が1.5%を超える場所
●硫化水素濃度が100万分の10(10ppm)を超える場所
●有害物を取り扱う場所
●病原体による汚染のおそれの著しい場所 ほか
問8 有害業務を行う作業場について、法令に基づき、定期に行う作業環境測定と測定頻度との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
(1)非密封の放射性物質を取り扱う作業室における空気中の放射性物質の濃度の測定
…………… 6か月以内ごとに1回
(2)チッパーによりチップする業務を行う屋内作業場における等価騒音レベルの測定
…………… 6か月以内ごとに1回
(3)通気設備が設けられている坑内の作業場における通気量の測定
…………… 半月以内ごとに1回
(4)鉛蓄電池の解体工程において鉛等を切断する業務を行う屋内作業場における空気中の鉛の濃度の測定
…………… 1年以内ごとに1回
(5)多量のドライアイスを取り扱う業務を行う屋内作業場における気温及び湿度の測定
…………… 半月以内ごとに1回
(1)は誤り。非密封の放射性物質を取り扱う作業室における空気中の放射性物質の濃度の測定は、「1か月以内」ごとに1回、定期に行わなければなりません。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問9 次の有害業務に従事した者のうち、離職の際に又は離職の後に、法令に基づく健康管理手帳の交付対象となるものはどれか。
(1)ビス(クロロメチル)エーテルを取り扱う業務に3年以上従事した者
(2)硝酸を取り扱う業務に5年以上従事した者
(3)鉛化合物を製造する業務に7年以上従事した者
(4)メタノールを取り扱う業務に10年以上従事した者
(5)粉じん作業に従事した者で、じん肺管理区分が管理一の者
(1)ビス(クロロメチル)エーテルを取り扱う業務に3年以上従事した者は、健康管理手帳の交付対象です。
有害業務から離れた後も、業務に起因した疾病を早期発見するために、健康管理手帳の交付制度が始まりました。
健康管理手帳の交付を受けたら、指定の医療機関で、年に2回、無料で特定の項目について健康診断を受けることができます。
現在、 ビス(クロロメチル)エーテルは、製造禁止物質ですが、かつては工業で使用されており、その蒸気を吸入することで肺がんを起こすおそれがあります。
(2)(3)(4)(5)は、健康管理手帳の交付対象ではありません。
問10 労働基準法に基づき、全ての女性労働者について、就業が禁止されている業務は次のうちどれか。
(1)20kg以上の重量物を継続的に取り扱う業務
(2)さく岩機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務
(3)異常気圧下における業務
(4)著しく寒冷な場所における業務
(5)病原体によって汚染された物の取扱いの業務
(1)は就業が禁止されている。
全ての女性労働者について、次の重量以上の重量物を取り扱う業務に就かせてはなりません。
●満16歳未満
断続作業12kg、継続作業8kg
●満16歳以上 満18歳未満
断続作業25kg、継続作業15kg
●満18歳以上
断続作業30kg、継続作業20kg
(2)(3)(4)(5)は就業が禁止されていない。
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