衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2020年4月)
ここでは、2020年(令和2年)4月公表の過去問のうち「労働衛生:一般(有害業務に係るもの以外のもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2020年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2020年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2020年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2020年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2020年4月)
問11 事務室における必要換気量Q(m3/h)を算出する式として、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、AからDは次のとおりとする。
A 室内二酸化炭素濃度の測定値(ppm)
B 室内二酸化炭素基準濃度(ppm)
C 外気の二酸化炭素濃度(ppm)
D 在室者全員が1時間に呼出する二酸化炭素量(m3/h)
(1)Q = D/(A-B) ×100
(2)Q = D/(A-C) ×100
(3)Q = D/(B-C) ×100
(4)Q = D/(A-B) ×1,000,000
(5)Q = D/(B-C) ×1,000,000
作業場内で衛生管理上、入れ替える必要がある空気量を必要換気量と言い、1時間の空気量で表します。
必要換気量の計算式は「在室者全員が呼出する二酸化炭素量」を「室内二酸化炭素基準濃度」から「外気の二酸化炭素濃度」で引いたもので割って求めます。
また、二酸化炭素濃度は、百分率の「%」のほか百万分率の「ppm」で表します。
必要換気量の算出時に、二酸化炭素濃度が「%」の場合は「100」を掛けますが、「ppm」の場合は「1,000,000」を掛けます。
問12 照明、採光などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)1ルクス(lx)は、1カンデラ(cd)の光源から、1m離れた所において、光軸に垂直な面が受ける明るさをいう。
(2)全般照明と局部照明を併用する場合、全般照明による照度は、局部照明による照度の5分の1程度としている。
(3)前方から明かりを取るときは、まぶしさをなくすため、眼と光源を結ぶ線と視線とがなす角度が、40°程度になるように光源の位置を決めている。
(4)照明設備は、1年以内ごとに1回、定期に点検し、異常があれば電球の交換などを行っている。
(5)部屋の彩色として、目の高さ以下は、まぶしさを防ぎ安定感を出すために濁色とし、目より上方の壁や天井は、明るい色を用いるとよい。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。照明設備は、「6か月」以内ごとに1回、定期に点検し、異常があれば電球の交換などを行います。
問13 WBGT(湿球黒球温度)に関する次の文中の[ ]内に入れるAからCの語句の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「WBGTは、労働環境において作業者が受ける暑熱環境による熱ストレスの評価を行う簡便な指標で、その値は次の式により算出される。
屋外で太陽照射のある場合:
WBGT=0.7×[ A ]+0.2×[ B ]+0.1×[ C ]
屋内の場合又は屋外で太陽照射のない場合:
WBGT=0.7×[ A ]+0.3×[ B ]」
(1)A:自然湿球温度 B:黒球温度 C:乾球温度
(2)A:自然湿球温度 B:乾球温度 C:黒球温度
(3)A:乾球温度 B:黒球温度 C:自然湿球温度
(4)A:乾球温度 B:自然湿球温度 C:黒球温度
(5)A:黒球温度 B:自然湿球温度 C:乾球温度
WBGTは、「屋外で太陽照射のある場合」と「屋内の場合又は屋外で太陽照射のない場合」で計算方法が異なります。
「屋外で太陽照射のある場合」には、乾球温度を加味する必要があります。
なお、このときの乾球温度は、周りの風通しを妨げない状態で、ふく射熱による影響を受けないように感温部を囲って測定された乾球温度計が示す値となります。
問14 労働者の健康保持増進のために行う健康測定における運動機能検査の項目とその測定種目との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
(1)筋力 ……………………… 握力
(2)柔軟性 …………………… 上体起こし
(3)平衡性 …………………… 閉眼(又は開眼)片足立ち
(4)敏しょう性 ……………… 全身反応時間
(5)全身持久性 ……………… 最大酸素摂取量
労働者の健康の保持増進のための活動における健康測定の項目のひとつに運動機能検査があります。
その検査項目と種目として筋力は握力や上体起こし、柔軟性は「立位体前屈」や「座位体前屈」、平衡性は閉眼片足立ち、敏捷(しょう)性は全身反応時間、全身持久性は自転車エルゴメーターによる最大酸素摂取量間接測定法で測定を行います。
問15 厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づくメンタルヘルスケアの実施に関する次の記述のうち、不適切なものはどれか。
(1)心の健康については、客観的な測定方法が十分確立しておらず、また、心の健康問題の発生過程には個人差が大きく、そのプロセスの把握が難しいという特性がある。
(2)心の健康づくり計画の実施に当たっては、メンタルヘルス不調を早期に発見する「一次予防」、適切な措置を行う「二次予防」及びメンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援を行う「三次予防」が円滑に行われるようにする必要がある。
(3)労働者の心の健康は、職場配置、人事異動、職場の組織などの要因によって影響を受けるため、メンタルヘルスケアは、人事労務管理と連携しなければ、適切に進まない場合が多いことに留意する。
(4)労働者の心の健康は、職場のストレス要因のみならず、家庭・個人生活などの職場外のストレス要因の影響を受けている場合も多いことに留意する。
(5)メンタルヘルスケアを推進するに当たって、労働者の個人情報を主治医等の医療職や家族から取得する際には、あらかじめこれらの情報を取得する目的を労働者に明らかにして承諾を得るとともに、これらの情報は労働者本人から提出を受けることが望ましい。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は不適切。心の健康づくり計画の実施に当たっては、ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う「二次予防」及びメンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援等を行う「三次予防」が円滑に行われるようにする必要があります。
問16 一次救命処置に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)傷病者に反応がある場合は、回復体位をとらせて安静にして、経過を観察する。
(2)一次救命処置は、できる限り単独で行うことは避ける。
(3)口対口人工呼吸は、傷病者の鼻をつまみ、1回の吹き込みに約3秒かけて傷病者の胸の盛り上がりが見える程度まで吹き込む。
(4)胸骨圧迫は、胸が約5cm沈む強さで、1分間に100~120回のテンポで行う。
(5)AED(自動体外式除細動器)を用いた場合、電気ショックを行った後や電気ショックは不要と判断されたときには、音声メッセージに従い、胸骨圧迫を再開し心肺蘇(そ)生を続ける。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。口対口人工呼吸は、気道確保できた状態のまま、傷病者の鼻をつまみ空気が漏れないようにし、1回の息の吹き込みに約1秒かけて、傷病者の胸が上がるのが見てわかる程度の量の息を吹き込みます。
3秒のように時間を掛けて、過剰な換気をすることは、むしろ有害とされています。
また、人工呼吸による胸骨圧迫の中断を考慮すれば吸気時間は短いほうがよいという考えもあります。
さて、一次救命処置については、AHA(アメリカ心臓協会)が科学的な根拠に基づき心肺蘇生法に関する指針を見直してガイドライン2005を発表しました。
それを受けて日本においても救急蘇生ガイドラインが大きく改訂されました(2006年)。
その後、JRC(日本蘇生協議会)と日本救急医療財団により「JRC蘇生ガイドライン2015」が策定されています(2016年)。
このガイドラインは、最新のデータに基づき定期的に見直されるでしょう。
問17 虚血性心疾患に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)運動負荷心電図検査は、心筋の異常や不整脈の発見には役立つが、虚血性心疾患の発見には有用でない。
(2)虚血性心疾患発症の危険因子には、高血圧、喫煙、脂質異常症などがある。
(3)虚血性心疾患は、狭心症と心筋梗塞とに大別される。
(4)狭心症は、心臓の血管の一部の血流が一時的に悪くなる病気である。
(5)狭心症の痛みの場所は、心筋梗塞とほぼ同じであるが、その発作が続く時間は、通常数分程度で、長くても15分以内におさまることが多い。
(1)は誤り。運動負荷心電図検査は、運動負荷を加えた状態で心電図の変化をみる検査で、安静時心電図では診断が困難な狭心症など、虚血性心疾患などの発見に有用です。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問18 メタボリックシンドローム診断基準に関する次の文中の[ ]内に入れるAからCの語句又は数値の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「日本人のメタボリックシンドローム診断基準で、腹部肥満([ A ]脂肪の蓄積)とされるのは、腹囲が男性では[ B ]cm以上、女性では[ C ]cm以上の場合である。」
(1)A:内臓 B:85 C:90
(2)A:内臓 B:90 C:85
(3)A:皮下 B:85 C:90
(4)A:皮下 B:90 C:85
(5)A:体 B:95 C:90
「日本人のメタボリックシンドローム診断基準で、腹部肥満([内臓]脂肪の蓄積)とされるのは、腹囲が男性では[85]cm以上、女性では[90]cm以上の場合である。」
問19 細菌性食中毒に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)サルモネラ菌による食中毒は、食品に付着した菌が食品中で増殖した際に生じる毒素により発症する。
(2)ボツリヌス菌による毒素は、神経毒である。
(3)黄色ブドウ球菌による毒素は、熱に強い。
(4)腸炎ビブリオ菌は、病原性好塩菌ともいわれる。
(5)セレウス菌及びカンピロバクターは、いずれも細菌性食中毒の原因菌である。
(1)は誤り。サルモネラ菌は、感染型食中毒で、食物に付着した細菌そのものの感染によって起こる食中毒です。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問20 厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」に基づく、重量物取扱い作業などにおける腰痛予防対策に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)満18歳以上の男子労働者が人力のみで取り扱う物の重量は、体重のおおむね50%以下となるようにする。
(2)腰部保護ベルトは、全員に使用させるようにする。
(3)重量物を持ち上げるときは、できるだけ身体を対象物に近づけ、両膝を伸ばしたまま上体を下方に曲げる前屈姿勢を取る。
(4)腰掛け作業での作業姿勢は、椅子に深く腰を掛けて、背もたれで体幹を支え、履物の足裏全体が床に接する姿勢を基本とする。
(5)立ち作業では、身体を安定に保持するため、床面は弾力性のない硬い素材とし、クッション性のない作業靴を使用する。
(1)は誤り。満18歳以上の男子労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、体重のおおむね40%以下となるように努めます。
(2)は誤り。腰部保護ベルトについては、一律に使用させるのではなく、労働者ごとに効果を確認してから使用の適否を判断します。
(3)は誤り。重量物を床面等から荷物を持ち上げる場合には、片足を少し前に出し、膝を曲げ、腰を十分に降ろして当該荷物をかかえ、膝を伸ばすことによって立ち上がるようにします。
(4)は正しい。椅子に深く腰を掛けて、背もたれで体幹を支え、履物の足裏全体が床に接する姿勢を基本とします。また、必要に応じて、滑りにくい足台を使用します。
(5)は誤り。床面が硬い場合は、立っているだけでも腰部への衝撃が大きいので、クッション性のある作業靴やマットを利用して、衝撃を緩和します。
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