衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2021年4月)
ここでは、2021年(令和3年)4月公表の過去問のうち「関係法令:有害(有害業務に係るもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、特例第1種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、第2種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2021年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2021年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2021年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2021年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2021年4月)
問1 常時250人の労働者を使用する運送業の事業場における衛生管理体制に関する(1)~(5)の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。
ただし、250人中には、次の業務に常時従事する者が含まれているが、その他の有害業務はないものとし、衛生管理者の選任の特例はないものとする。
深夜業を含む業務 200人
多量の低温物体を取り扱う業務 50人
(1)総括安全衛生管理者を選任しなければならない。
(2)衛生管理者は、2人以上選任しなければならない。
(3)衛生管理者は、全て第一種衛生管理者免許を有する者のうちから選任することができる。
(4)衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければならない。
(5)衛生管理者のうち、1人は専属でない労働衛生コンサルタントを選任することができる。
(1)は正しい。常時100人以上の労働者を使用する運送業の事業場では、総括安全衛生管理者を選任しなければなりません。
(2)は正しい。200人を超え500人以下の事業場では、衛生管理者を2人選任しなければなりません。
(3)は正しい。衛生管理者の選任要件として、第一種衛生管理者免許を有する者のほか、衛生工学衛生管理者免許を有する者が該当します。例えば、常時500人を超える労働者を使用する事業場で、多量の高熱物体を取り扱う業務などに常時30人以上の労働者を従事させる事業場では、衛生管理者のうち1人を、衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任しなければなりません。
(4)は誤り。衛生管理者は、兼任でも構いません。なお、常時500人を超える労働者を使用する事業場で、多量の高熱物体を取り扱う業務などに常時30人以上の労働者を従事させる事業場では、衛生管理者のうち少なくとも1人を、専任の衛生管理者として選任しなければなりません。
(5)は正しい。衛生管理者は、原則その事業場に専属の者でなければなりませんが、2人以上選任する場合に、そのうち1人については事業場に専属でない労働衛生コンサルタントでも構いません。
問2 厚生労働大臣が定める規格を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない機械等に該当しないものは、次のうちどれか。
(1)潜水器
(2)一酸化炭素用防毒マスク
(3)ろ過材及び面体を有する防じんマスク
(4)放射性物質による汚染を防止するための防護服
(5)特定エックス線装置
(1)(2)(3)(5)は、譲渡等制限の対象になっています。
(4)放射性物質による汚染を防止するための防護服は、譲渡等制限の対象になっていません。
放射線防護服は、放射性物質が直接身体に付着したり、吸入することを防ぐための特殊な衣服です。
被ばくによる健康障害を防止するため、放射性物質が存在する作業場で作業者が着用します。
問3 法令に基づき定期に行う作業環境測定とその測定頻度との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
(1)非密封の放射性物質を取り扱う作業室における空気中の放射性物質の濃度の測定
……… 1か月以内ごとに1回
(2)チッパーによりチップする業務を行う屋内作業場における等価騒音レベルの測定
……… 6か月以内ごとに1回
(3)通気設備が設けられている坑内の作業場における通気量の測定
……… 半月以内ごとに1回
(4)鉛ライニングの業務を行う屋内作業場における空気中の鉛の濃度の測定
……… 1年以内ごとに1回
(5)多量のドライアイスを取り扱う業務を行う屋内作業場における気温及び湿度の測定
……… 1か月以内ごとに1回
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。多量のドライアイスを取り扱う業務を行う屋内作業場における気温及び湿度の測定は、半月以内ごとに1回、定期に行わなければなりません。
問4 次の作業のうち、法令上、作業主任者を選任しなければならないものはどれか。
(1)製造工程において硝酸を用いて行う洗浄の作業
(2)強烈な騒音を発する場所における作業
(3)レーザー光線による金属加工の作業
(4)セメント製造工程においてセメントを袋詰めする作業
(5)潜水器からの給気を受けて行う潜水の作業
(1)作業主任者を選任しなければならない。硝酸は特定化学物質に該当しますので、特定化学物質作業主任者を選任しなければなりません。
(2)(3)(4)(5)の作業では、作業主任者の選任が規定されていません。
問5 次の業務のうち、労働者を就かせるとき、法令に基づく安全又は衛生のための特別の教育を行わなければならないものはどれか。
(1)チェーンソーを用いて行う造材の業務
(2)エックス線回折装置を用いて行う分析の業務
(3)特定化学物質を用いて行う分析の業務
(4)有機溶剤等を入れたことがあるタンクの内部における業務
(5)削岩機、チッピングハンマー等チェーンソー以外の振動工具を取り扱う業務
(1)は特別の教育を行わなければならない。
(2)(3)(4)(5)は該当しない。
なお、(2)の「エックス線回折装置を用いて行う分析の業務」とは、検査する物体の原子の並び方など被検査物体の性質を調べる業務です。
ただし、「エックス線装置を用いて行う透過写真の撮影の業務」のように、エックス線の被ばくリスクが高い業務は特別教育を行なわなければなりません。
問6 事業者が、法令に基づく次の措置を行ったとき、その結果について所轄労働基準監督署長に報告することが義務付けられているものはどれか。
(1)高圧室内作業主任者の選任
(2)特定化学設備についての定期自主検査
(3)定期の有機溶剤等健康診断
(4)雇入時の特定化学物質健康診断
(5)鉛業務を行う屋内作業場についての作業環境測定
(1)(2)(4)(5)は、報告が義務付けられていません。
(3)は報告が義務付けられている。健康診断は、雇入れ時に実施し、その後、定期的に実施するのが一般的です。
行政は、労働者が働くことで、健康状態がどのように変化しているかを知りたいので、定期の健康診断について報告が義務付けられています。
問7 屋内作業場において、第二種有機溶剤等を使用して常時洗浄作業を行う場合の措置として、法令上、誤っているものは次のうちどれか。
ただし、有機溶剤中毒予防規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。
(1)作業場所に設けた局所排気装置について、外付け式フードの場合は0.4m/sの制御風速を出し得る能力を有するものにする。
(2)有機溶剤等の区分の色分けによる表示を黄色で行う。
(3)作業場における空気中の有機溶剤の濃度を、6か月以内ごとに1回、定期に測定し、その測定結果等の記録を3年間保存する。
(4)作業に常時従事する労働者に対し、6か月以内ごとに1回、定期に、特別の項目について医師による健康診断を行い、その結果に基づき作成した有機溶剤等健康診断個人票を5年間保存する。
(5)作業場所に設けたプッシュプル型換気装置について、原則として、1年以内ごとに1回、定期に、自主検査を行い、その検査の結果等の記録を3年間保存する。
(1)は誤り。外付け式フードの場合は、側方吸引型、下方吸引型で0.5m/s、上方吸引型で1.0m/sの制御風速を出し得る能力を有するものにしなければなりません。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問8 次の作業のうち、法令上、第二種酸素欠乏危険作業に該当するものはどれか。
(1)雨水が滞留したことのあるピットの内部における作業
(2)ヘリウム、アルゴン等の不活性の気体を入れたことのあるタンクの内部における作業
(3)果菜の熟成のために使用している倉庫の内部における作業
(4)酒類を入れたことのある醸造槽の内部における作業
(5)汚水その他腐敗しやすい物質を入れたことのある暗きょの内部における作業
(1)(2)(3)(4)は、酸素欠乏症の危険がある作業なので第一種酸素欠乏危険作業に該当します。
(5)は、酸素欠乏症と硫化水素中毒の危険がある作業なので第二種酸素欠乏危険作業に該当します。汚水に含まれる硫酸イオンを、バクテリアが還元することで硫化水素が発生し、空気中に拡散されます。
問9 粉じん作業に係る次の粉じん発生源のうち、法令上、特定粉じん発生源に該当するものはどれか。
(1)屋内の、ガラスを製造する工程において、原料を溶解炉に投げ入れる箇所
(2)屋内の、耐火物を用いた炉を解体する箇所
(3)屋内の、研磨材を用いて手持式動力工具により金属を研磨する箇所
(4)屋内の、粉状のアルミニウムを袋詰めする箇所
(5)屋内の、金属をアーク溶接する箇所
(1)(2)(3)(5)は該当しない。
(4)は該当する。粉じん作業には、通常の粉じん作業と特定粉じん作業とがあります。
粉じん作業よりも、特定粉じん作業の方が有害性が高く、屋内において、粉状のアルミニウムを袋詰めする箇所における作業は、典型的な特定粉じん作業です。
問10 次のAからDの業務について、労働基準法に基づく時間外労働に関する協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合においても、労働時間の延長が1日2時間を超えてはならないものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 病原体によって汚染された物を取り扱う業務
B 腰部に負担のかかる立ち作業の業務
C 多量の低温物体を取り扱う業務
D 鉛の粉じんを発散する場所における業務
(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D
A,Bは誤り。
C,Dは正しい。他にも、著しく暑熱な場所における業務や、ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務などが該当します。
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