衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2021年4月)
ここでは、2021年(令和3年)4月公表の過去問のうち「労働生理」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2021年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2021年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2021年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2021年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2021年4月)
問21 神経系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)神経系を構成する基本的な単位である神経細胞は、通常、1個の細胞体、1本の軸索及び複数の樹状突起から成り、ニューロンともいわれる。
(2)体性神経は、運動及び感覚に関与し、自律神経は、呼吸、循環などに関与する。
(3)大脳の皮質は、神経細胞の細胞体が集まっている灰白質で、感覚、思考などの作用を支配する中枢として機能する。
(4)交感神経系と副交感神経系は、各種臓器において双方の神経線維が分布し、相反する作用を有している。
(5)交感神経系は、身体の機能をより活動的に調節する働きがあり、心拍数を増加させたり、消化管の運動を亢(こう)進する。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。交感神経系は、身体の機能をより活動的に調節する働きがあり、心拍数を増加したり、消化管の運動を抑制します。
問22 肝臓の機能として、誤っているものは次のうちどれか。
(1)コレステロールの合成
(2)尿素の合成
(3)ビリルビンの分解
(4)胆汁の生成
(5)グリコーゲンの合成及び分解
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。肝臓には、ビリルビンを分解する機能はありません。
古くなった赤血球は寿命を迎えると、脾(ひ)臓という臓器で分解され、ビリルビンという物質が作られます。
ビリルビンは、肝臓から胆汁に排出された後、様々な過程を経てウロビリンという物質になり、便とともに排泄されます。
問23 睡眠などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)睡眠は、睡眠中の目の動きなどによって、レム睡眠とノンレム睡眠に分類される。
(2)甲状腺ホルモンは、夜間に分泌が上昇するホルモンで、睡眠と覚醒のリズムの調節に関与している。
(3)睡眠と食事は深く関係しているため、就寝直前の過食は、肥満のほか不眠を招くことになる。
(4)夜間に働いた後の昼間に睡眠する場合は、一般に、就寝から入眠までの時間が長くなり、睡眠時間が短縮し、睡眠の質も低下する。
(5)睡眠中には、体温の低下、心拍数の減少などがみられる。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。脳にある松果体から分泌されるメラトニンは、夜間に分泌が上昇するホルモンで、睡眠と覚醒のリズムの調節に関与しています。
問24 消化器系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)三大栄養素のうち糖質はブドウ糖などに、蛋(たん)白質はアミノ酸に、脂肪は脂肪酸とエチレングリコールに、酵素により分解されて吸収される。
(2)無機塩、ビタミン類は、酵素による分解を受けないでそのまま吸収される。
(3)吸収された栄養分は、血液やリンパによって組織に運搬されてエネルギー源などとして利用される。
(4)胃は、塩酸やペプシノーゲンを分泌して消化を助けるが、水分の吸収はほとんど行わない。
(5)小腸は、胃に続く全長6~7mの管状の器官で、十二指腸、空腸及び回腸に分けられる。
(1)は誤り。糖質はブドウ糖に、蛋白質はアミノ酸に、脂肪は脂肪酸とグリセリンに、酵素により分解されて吸収されます。
なお、エチレングリコールとは、自動車のラジエーターの不凍液に使われる物質で、人に対して毒性があります。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問25 腎臓又は尿に関する次のAからDの記述について、誤っているものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A ネフロン(腎単位)は、尿を生成する単位構造で、1個の腎小体とそれに続く1本の尿細管から成り、1個の腎臓中に約100万個ある。
B 尿の約95%は水分で、約5%が固形物であるが、その成分は全身の健康状態をよく反映するので、尿検査は健康診断などで広く行われている。
C 腎機能が正常な場合、糖はボウマン嚢(のう)中に濾(こ)し出されないので、尿中には排出されない。
D 腎機能が正常な場合、大部分の蛋(たん)白質はボウマン嚢中に濾し出されるが、尿細管でほぼ100%再吸収されるので、尿中にはほとんど排出されない。
(1)A,B
(2)A,C
(3)A,D
(4)B,C
(5)C,D
A,Bは正しい。
Cは誤り。糖はボウマン嚢中に濾し出されます。その後、尿細管から血液中に再吸収されます。
Dは誤り。蛋白質や血球は、ボウマン嚢中に濾し出されません。
問26 血液に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)血漿(しょう)中の蛋(たん)白質のうち、アルブミンは血液の浸透圧の維持に関与している。
(2)血漿中の水溶性蛋白質であるフィブリンがフィブリノーゲンに変化する現象が、血液の凝集反応である。
(3)赤血球は、損傷部位から血管外に出ると、血液凝固を促進させる物質を放出する。
(4)血液中に占める白血球の容積の割合をヘマトクリットといい、感染や炎症があると増加する。
(5)血小板は、体内に侵入してきた細菌やウイルスを貪食する働きがある。
(1)は正しい。
(2)は誤り。血漿中のフィブリノーゲン(線維素原)がフィブリン(線維素)に変化する現象が、血液の凝固です。
(3)は誤り。血小板は、損傷部位から血管外に出ると、血液凝固を促進させる物質を放出します。
(4)は誤り。血液の容積に対する赤血球の相対的容積をヘマトクリットといい、貧血の程度を判定するのに用いられます。
(5)は誤り。白血球のうち好中球や単球などは、偽足を出してアメーバ様運動を行い、体内に侵入してきた細菌やウイルスを貪食します。
問27 感覚又は感覚器に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)眼軸が短過ぎるために、平行光線が網膜の後方で像を結ぶものを遠視という。
(2)嗅覚と味覚は化学感覚ともいわれ、物質の化学的性質を認知する感覚である。
(3)温度感覚は、皮膚のほか口腔(くう)などの粘膜にも存在し、一般に冷覚の方が温覚よりも鋭敏である。
(4)深部感覚は、内臓の動きや炎症などを感じて、内臓痛を認識する感覚である。
(5)中耳にある鼓室は、耳管によって咽頭に通じており、その内圧は外気圧と等しく保たれている。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。深部感覚は、自分の手足の位置や関節の角度などを感じて、姿勢や動きなどを認識する感覚です。
また、内臓感覚は、内臓の動きや炎症などを感じて、内臓痛を認識する感覚です。
問28 抗体に関する次の文中の[ ]内に入れるAからCの語句の組合せとして、適切なものは(1)~(5)のうちどれか。
「抗体とは、体内に入ってきた[ A ]に対して[ B ]免疫において作られる[ C ]と呼ばれる蛋(たん)白質のことで、[ A ]に特異的に結合し、[ A ]の働きを抑える働きがある。」
(1)A:化学物質 B:体液性 C:アルブミン
(2)A:化学物質 B:細胞性 C:免疫グロブリン
(3)A:抗原 B:体液性 C:アルブミン
(4)A:抗原 B:体液性 C:免疫グロブリン
(5)A:抗原 B:細胞性 C:アルブミン
「抗体とは、体内に入ってきた[ 抗原 ]に対して[ 体液性 ]免疫において作られる[ 免疫グロブリン ]と呼ばれる蛋(たん)白質のことで、[ 抗原 ]に特異的に結合し、[ 抗原 ]の働きを抑える働きがある。」
問29 代謝に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)代謝において、細胞に取り入れられた体脂肪、グリコーゲンなどが分解されてエネルギーを発生し、ATPが合成されることを同化という。
(2)代謝において、体内に摂取された栄養素が、種々の化学反応によって、ATPに蓄えられたエネルギーを用いて、細胞を構成する蛋(たん)白質などの生体に必要な物質に合成されることを異化という。
(3)基礎代謝は、心臓の拍動、呼吸運動、体温保持などに必要な代謝で、基礎代謝量は、覚醒、横臥(が)、安静時の測定値で表される。
(4)エネルギー代謝率は、一定時間中に体内で消費された酸素と排出された二酸化炭素の容積比で表される。
(5)エネルギー代謝率は、生理的負担だけでなく、精神的及び感覚的な側面をも考慮した作業強度を表す指標としても用いられる。
(1)は誤り。代謝において、体内に摂取された栄養素が、種々の化学反応によって、細胞を構成する蛋白質などの生体に必要な物質に合成されることを同化といいます。
(2)は誤り。代謝において、細胞内に蓄えられた体脂肪やグリコーゲンなどが分解されエネルギーが発生する過程を異化といいます。
(3)は正しい。
(4)は誤り。エネルギー代謝率は、作業に要したエネルギー量を基礎代謝量で割ったものになります。
(5)は誤り。エネルギー代謝率は、動的筋作業の強度をうまく表す指標の一つです。精神的作業や静的筋作業には適用できません。
問30 筋肉に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)横紋筋は、骨に付着して身体の運動の原動力となる筋肉で意志によって動かすことができるが、平滑筋は、心筋などの内臓に存在する筋肉で意志によって動かすことができない。
(2)筋肉は神経からの刺激によって収縮するが、神経より疲労しにくい。
(3)荷物を持ち上げたり、屈伸運動を行うときは、筋肉が長さを変えずに外力に抵抗して筋力を発生させる等尺性収縮が生じている。
(4)強い力を必要とする運動を続けていると、筋肉を構成する個々の筋線維の太さは変わらないが、その数が増えることによって筋肉が太くなり筋力が増強する。
(5)筋肉自体が収縮して出す最大筋力は、筋肉の断面積1cm2当たりの平均値をとると、性差や年齢差がほとんどない。
(1)は誤り。心臓の筋肉である心筋は不随意筋に属しますが、自律神経により支配されている横紋筋で構成されています。
(2)は誤り。筋肉は、神経から送られてくる刺激によって収縮しますが、神経に比べて疲労しやすいという特徴を持っています。
(3)は誤り。荷物を持ち上げたり、屈伸運動をするとき、関節運動に関与する筋肉には、等張性収縮が生じています。
(4)は誤り。強い力を必要とする運動を続けていても、筋線維の数は、大人になってからは増えないとされていますが、筋肉を構成する個々の筋線維の太さが太くなることによって、筋肉が太くなり筋力が増加します。
(5)は正しい。
-
同カテゴリーの最新記事
- 2024/10/14:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2024年10月)
- 2024/05/20:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2024年4月)
- 2023/11/20:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2023年10月)
- 2022/05/20:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2022年4月)
- 2021/11/20:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2021年10月)