衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2022年4月)
ここでは、2022年(令和4年)4月公表の過去問のうち「労働衛生:一般(有害業務に係るもの以外のもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2022年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2022年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2022年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2022年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2022年4月)
問11 一般の事務室における換気に関する次のAからDの記述について、誤っているものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 人間の呼気の成分の中で、酸素の濃度は約16%、二酸化炭素の濃度は約4%である。
B 新鮮な外気中の酸素濃度は約21%、二酸化炭素濃度は0.3~0.4%程度である。
C 室内の必要換気量(m3/h)は、次の式により算出される。
D 必要換気量の算出に当たって、室内二酸化炭素基準濃度は、通常、1%とする。
(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D
A,Cは正しい。
Bは誤り。外気の二酸化炭素濃度は、0.03~0.04%程度であり、0.3~0.4%は誤りです。
Dは誤り。必要換気量の算出に当たっての室内二酸化炭素基準濃度は、通常0.1%であり、1%は誤りです。
問12 温熱条件に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)WBGTは、日射がない場合は、自然湿球温度と黒球温度の測定値から算出される。
(2)熱中症はⅠ度からⅢ度までに分類され、このうちⅢ度が最も重症である。
(3)WBGT基準値は、健康な作業者を基準に、ばく露されてもほとんどの者が有害な影響を受けないレベルに相当するものとして設定されている。
(4)WBGT基準値は、身体に対する負荷が大きな作業の方が、負荷が小さな作業より小さな値となる。
(5)温度感覚を左右する環境条件は、気温、湿度及びふく射(放射)熱の三つの要素で決まる。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。温度感覚を左右する環境条件は、気温、湿度、気流およびふく射熱の4つの要素によって決まります。
問13 照明、採光などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)北向きの窓では、直射日光はほとんど入らないが一年中平均した明るさが得られる。
(2)全般照明と局部照明を併用する場合、全般照明による照度は、局部照明による照度の5分の1程度としている。
(3)前方から明かりを取るときは、まぶしさをなくすため、眼と光源を結ぶ線と視線とがなす角度が、40°以上になるように光源の位置を決めている。
(4)照明設備は、1年以内ごとに1回、定期に点検し、異常があれば電球の交換などを行っている。
(5)部屋の彩色として、目の高さ以下は、まぶしさを防ぎ安定感を出すために濁色とし、目より上方の壁や天井は、明るい色を用いるとよい。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。照明設備は、6か月以内ごとに1回、定期に点検しなければなりません。
問14 厚生労働省の「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」において、「喫煙専用室」を設置する場合に満たすべき事項として定められていないものは、次のうちどれか。
(1)喫煙専用室の出入口において、室外から室内に流入する空気の気流が、0.2m/s以上であること。
(2)喫煙専用室の出入口における室外から室内に流入する空気の気流について、6か月以内ごとに1回、定期に測定すること。
(3)喫煙専用室のたばこの煙が室内から室外に流出しないよう、喫煙専用室は、壁、天井等によって区画されていること。
(4)喫煙専用室のたばこの煙が屋外又は外部の場所に排気されていること。
(5)喫煙専用室の出入口の見やすい箇所に必要事項を記載した標識を掲示すること。
(1)(3)(4)(5)は定められている。
(2)定められていない。喫煙専用室の出入口での気流の測定は、定期的に行う必要はありません。このため「6か月以内ごとに1回定期に測定すること」という記述は誤りです。
問15 労働衛生管理に用いられる統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)健康診断において、対象人数、受診者数などのデータを計数データといい、身長、体重などのデータを計量データという。
(2)生体から得られたある指標が正規分布である場合、そのばらつきの程度は、平均値や最頻値によって表される。
(3)集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。
(4)ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。
(5)静態データとは、ある時点の集団に関するデータであり、動態データとは、ある期間の集団に関するデータである。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。生体データのばらつきの程度は標準偏差や分散で表され、平均値や最頻値ではばらつきを表すことはできません。
問16 厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」に基づく腰痛予防対策に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)作業動作、作業姿勢についての作業標準の策定は、その作業に従事する全ての労働者に一律な作業をさせることになり、個々の労働者の腰痛の発生要因の排除又は低減ができないため、腰痛の予防対策としては適切ではない。
(2)重量物取扱い作業の場合、満18歳以上の男性労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、体重のおおむね50%以下となるようにする。
(3)重量物取扱い作業の場合、満18歳以上の女性労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、男性が取り扱うことのできる重量の60%位までとする。
(4)重量物取扱い作業に常時従事する労働者に対しては、当該作業に配置する際及びその後1年以内ごとに1回、定期に、医師による腰痛の健康診断を行う。
(5)腰部保護ベルトは、重量物取扱い作業に従事する労働者全員に使用させるようにする。
(1)は誤り。腰痛の発生要因を排除または低減できるよう、作業動作、作業姿勢、作業手順、作業時間等について、作業標準を策定することとされています。
(2)は誤り。満18歳以上の男子労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、体重のおおむね40%以下となるように努めます。「50%以下」ではありません。
(3)は正しい。
(4)は誤り。重量物取扱い作業等に常時従事する労働者に対しては、当該作業に配置または再配置する際およびその後6か月以内ごとに1回、定期に、医師による腰痛の健康診断を実施しなければなりません。「1年以内ごとに1回」ではありません。
(5)は誤り。腰部保護ベルトは、個人により効果が異なるため、一律に使用するのではなく、個人ごとに効果を確認してから使用の適否を判断することとされています。
問17 厚生労働省の「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)この指針は、労働安全衛生法の規定に基づき機械、設備、化学物質等による危険又は健康障害を防止するため事業者が講ずべき具体的な措置を定めるものではない。
(2)このシステムは、生産管理等事業実施に係る管理と一体となって運用されるものである。
(3)このシステムでは、事業者は、事業場における安全衛生水準の向上を図るための安全衛生に関する基本的考え方を示すものとして、安全衛生方針を表明し、労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させる。
(4)このシステムでは、事業者は、安全衛生方針に基づき設定した安全衛生目標を達成するため、事業場における危険性又は有害性等の調査の結果等に基づき、一定の期間を限り、安全衛生計画を作成する。
(5)事業者は、このシステムに従って行う措置が適切に実施されているかどうかについて調査及び評価を行うため、外部の機関による監査を受けなければならない。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。労働安全衛生マネジメントシステムは、自主的活動であるため、外部の機関による監査を受けることは法的に必須ではありません。
問18 メタボリックシンドローム診断基準に関する次の文中の[ ]内に入れるAからDの語句又は数値の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「日本人のメタボリックシンドローム診断基準で、腹部肥満([ A ]脂肪の蓄積)とされるのは、腹囲が男性では[ B ]cm以上、女性で[ C ]cm以上の場合であり、この基準は、男女とも[ A ]脂肪面積が[ D ]cm2以上に相当する。」
(1)A:内臓 B:85 C:90 D:100
(2)A:内臓 B:85 C:90 D:200
(3)A:内臓 B:90 C:85 D:100
(4)A:皮下 B:90 C:85 D:200
(5)A:皮下 B:100 C:90 D:200
「日本人のメタボリックシンドローム診断基準で、腹部肥満([ 内臓 ]脂肪の蓄積)とされるのは、腹囲が男性では[ 85 ]cm以上、女性で[ 90 ]cm以上の場合であり、この基準は、男女とも[ 内臓 ]脂肪面積が[ 100 ]cm2以上に相当する。」
男女で腹囲の基準値が異なるのは、男性より女性の方が皮下脂肪(皮膚の下に蓄積する脂肪で内臓脂肪とは異なります)がつきやすいからです。
問19 食中毒に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)毒素型食中毒は、食物に付着した細菌により産生された毒素によって起こる食中毒で、サルモネラ菌によるものがある。
(2)感染型食中毒は、食物に付着した細菌そのものの感染によって起こる食中毒で、黄色ブドウ球菌によるものがある。
(3)O-157は、腸管出血性大腸菌の一種で、加熱不足の食肉などから摂取され、潜伏期間は3~5日である。
(4)ボツリヌス菌は、缶詰や真空パックなど酸素のない密封食品中でも増殖するが、熱には弱く、60℃、10分間程度の加熱で殺菌することができる。
(5)ノロウイルスによる食中毒は、ウイルスに汚染された食品を摂取することにより発症し、夏季に集団食中毒として発生することが多い。
(1)は誤り。サルモネラ菌は、感染型食中毒の原因菌です。サルモネラ菌自体が体内に入り、感染を引き起こします。
(2)は誤り。黄色ブドウ球菌は、毒素型食中毒の原因菌であり、菌自体ではなく、菌が産生する毒素が食中毒を引き起こします。
(3)は正しい。O-157は、腸管出血性大腸菌の一種であり、特に加熱が不十分な食肉や、汚染された水などが感染源となります。潜伏期間は通常3~5日であり、感染後には激しい腹痛や下痢、血便などの症状を引き起こします。
(4)は誤り。ボツリヌス菌は、酸素のない環境で増殖することができますが、菌が芽胞という状態になると、非常に熱に強いため、60℃で10分程度の加熱では死滅しません。120℃以上で4分以上の加熱で死滅するとされています。
(5)は誤り。ノロウイルスによる食中毒は、ウイルスに汚染された食品や接触感染で発症しますが、発生しやすいのは冬季です。夏季に発生することが多いというのは誤りです。
問20 感染症に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)人間の抵抗力が低下した場合は、通常、多くの人には影響を及ぼさない病原体が病気を発症させることがあり、これを不顕性感染という。
(2)感染が成立し、症状が現れるまでの人をキャリアといい、感染したことに気付かずに病原体をばらまく感染源になることがある。
(3)微生物を含む飛沫(まつ)の水分が蒸発して、5μm以下の小粒子として長時間空気中に浮遊し、空調などを通じて感染することを空気感染という。
(4)風しんは、発熱、発疹(しん)、リンパ節腫脹(ちょう)を特徴とするウイルス性発疹(しん)症で、免疫のない女性が妊娠初期に風しんにかかると、胎児に感染し出生児が先天性風しん症候群(CRS)となる危険性がある。
(5)インフルエンザウイルスにはA型、B型及びC型の三つの型があるが、流行の原因となるのは、主として、A型及びB型である。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
(1)は誤り。不顕性感染とは、感染しても症状が出ない状態を指します。抵抗力が低下した場合に発症する感染は日和見感染と呼ばれます。
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