衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2024年10月) | 衛生管理者 講習会・通信講座

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衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2024年10月)

ここでは、2024年(令和6年)10月公表の過去問のうち「労働生理」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2024年10月)
衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2024年10月)
衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2024年10月)
衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2024年10月)
衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2024年10月)



問21 次のうち、正常値に男女による差がないとされているものはどれか。

(1)赤血球数
(2)ヘモグロビン量
(3)へマトクリット値
(4)血小板数
(5)基礎代謝量


答え(4)
(1)は差がある。赤血球数は、一般的に男性の方が多いです。
(2)は差がある。ヘモグロビン量も男性の方が多く、男女差があります。
(3)は差がある。へマトクリット値も赤血球数に比例し、男女差があります。
(4)は男女差がない。血小板数には、男女差がありません
(5)は差がある。基礎代謝量は筋肉量に依存し、一般的に男性の方が高いです。



問22 心臓及び血液循環に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)肺循環により左心房に戻ってきた血液は、左心室を経て大動脈に入る。
(2)大動脈を流れる血液は動脈血であるが、肺動脈を流れる血液は静脈血である。
(3)心拍数は、左心房に存在する洞結節からの電気刺激によってコントロールされている。
(4)心臓の拍動による動脈圧の変動を末梢(しょう)の動脈で触知したものを脈拍といい、一般に、手首の橈(とう)骨動脈で触知する。
(5)心筋は人間の意思によって動かすことができない不随意筋であるが、随意筋である骨格筋と同じ横紋筋に分類される。


答え(3)
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。心拍数は、右心房に存在する洞結節(ペースメーカー)により設定されています。左心房ではありません。



問23 呼吸に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)横隔膜が下がり、胸郭内の内圧が低くなるにつれ、気道を経て肺内へ流れ込む空気が呼気である。
(2)呼吸に関与する筋肉は、間脳の視床下部にある呼吸中枢によって支配されている。
(3)肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われるガス交換は、外呼吸である。
(4)身体活動時には、血液中の窒素分圧の上昇により呼吸中枢が刺激され、1回換気量及び呼吸数が増加する。
(5)チェーンストークス呼吸とは、肺機能の低下により呼吸数が増加した状態をいい、喫煙が原因となることが多い。


答え(3)
(1)は誤り。横隔膜が下がり、胸郭内の内圧が低くなるにつれ、気道を経て肺内へ空気が流れ込みます。これが吸気です。呼気ではありません。
(2)は誤り。呼吸のリズムをコントロールしているのは、延髄であり、間脳の視床下部ではありません。視床下部は体温調節やホルモン分泌などを担当します。
(3)は正しい。
(4)は誤り。呼吸中枢は二酸化炭素分圧の上昇によって刺激されます。
(5)は誤り。チェーンストークス呼吸は、呼吸をしていない状態から次第に呼吸が深まり、やがて再び浅くなって呼吸が止まる状態を交互に繰り返すパターンの呼吸のことです。
これは、延髄の呼吸中枢の機能が衰えることで生じる現象です。喫煙が直接の原因になることはありません。



問24 消化器系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)ブドウ糖とアミノ酸は、小腸の絨(じゅう)毛の毛細血管に吸収され、門脈を通って肝臓に運ばれる。
(2)無機塩及びビタミン類は、酵素による分解を受けないでそのまま吸収される。
(3)胆汁はアルカリ性で、蛋(たん)白質を分解するトリプシンなどの消化酵素を含んでいる。
(4)胃は、塩酸やペプシノーゲンを分泌して消化を助けるが、水分の吸収はほとんど行わない。
(5)吸収された栄養分は、血液やリンパによって組織に運搬されてエネルギー源などとして利用される。


答え(3)
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。胆汁はアルカリ性ですが、消化酵素を含んでいません。胆汁は脂肪の乳化を助ける役割を持っています。トリプシンは膵臓から分泌される消化酵素です。



問25 体温調節に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)寒冷な環境においては、皮膚の血管が拡張して血流量を増し、皮膚温を上昇させる。
(2)暑熱な環境においては、内臓の血流量が増加し体内の代謝活動が亢(こう)進することにより、人体からの熱の放散が促進される。
(3)体温調節のように、外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保つ生体の仕組みを同調性といい、筋肉と神経系により調整されている。
(4)体温調節中枢は、小脳にあり、熱の産生と放散のバランスを維持し体温を一定に保つよう機能している。
(5)甲状腺ホルモンの分泌により、代謝が亢(こう)進し、体温は上昇する。


答え(5)
(1)は誤り。寒冷環境では、皮膚の血管は収縮します。
(2)は誤り。暑熱環境では、皮膚の血流量が増え、放熱を促進します。
(3)は誤り。体温調節は「同調性」ではなく「恒常性」です。
(4)は誤り。体温調節中枢は小脳ではなく、間脳の視床下部にあります。
(5)は正しい。甲状腺ホルモン代謝を促進し、体温を上昇させます。



問26 耳とその機能に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)耳は、聴覚と平衡感覚をつかさどる器官で、外耳、中耳及び内耳の三つの部位に分けられる。
(2)耳介で集められた音は、鼓膜を振動させ、その振動は耳小骨によって増幅され、内耳に伝えられる。
(3)内耳は、前庭、半規管及び蝸(か)牛(うずまき管)の三つの部位からなり、前庭と半規管が平衡感覚、蝸(か)牛が聴覚をそれぞれ分担している。
(4)内耳に伝わった音の振動は、蝸(か)牛の中のリンパ液を介して有毛細胞に伝わり、この時、音の振幅の大きさによって異なる部位の有毛細胞が振動することによって音の高さの違いが伝えられる。
(5)鼓室は、耳管によって咽頭に通じており、その内圧は外気圧と等しく保たれている。


答え(4)
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。内耳に伝わった音の振動は、蝸牛の中のリンパ液を介して有毛細胞に伝わります。
この時、大きな振動は、大きな音として伝えられます。
また、音の周波数によって異なる部位の有毛細胞が振動して、音の高さの違いが伝えられます。



問27 神経系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)神経細胞の細胞体が集合しているところを、中枢神経系では神経節といい、末梢(しょう)神経系では神経核という。
(2)小脳は、随意運動、平衡機能などの調整に関与しており、小脳が侵されると運動失調が生じる。
(3)体性神経には感覚器官からの情報を中枢に伝える感覚神経と、中枢からの命令を運動器官に伝える運動神経がある。
(4)自律神経系は、内臓、血管、腺などの不随意筋に広く分布し、各種臓器の消化、呼吸、循環などの機能を意志とは関係なく調節している。
(5)交感神経と副交感神経は、同一器官に分布していても、その作用はほぼ正反対であり、例えば、交感神経は心拍数を増加し、消化管の運動を抑制するが、副交感神経は心拍数を減少し、消化管の運動を亢(こう)進する。


答え(1)
(2)(3)(4)(5)は正しい。
(1)は誤り。この選択肢では、神経核と神経節が逆になっています。神経細胞の細胞体が集合しているところを、中枢神経系では神経核といい、末梢神経系では神経節といいます。



問28 代謝に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)代謝において、細胞に取り入れられた体脂肪、グリコーゲンなどが分解されてエネルギーを発生し、ATPが合成されることを同化という。
(2)代謝において、体内に摂取された栄養素が、種々の化学反応によって、細胞を構成する蛋(たん)白質などの生体に必要な物質に合成されることを異化という。
(3)エネルギー代謝率は、一定時間中に体内で消費された酸素と排出された二酸化炭素の容積比である。
(4)基礎代謝量は、安静時における心臓の拍動、呼吸、体温保持などに必要な代謝量で、睡眠中の測定値で表される。
(5)メッツ(METs)は、身体活動の強度を示す指標で、座位安静時の酸素消費量に対する運動時の酸素消費量で表される。


答え(5)

(1)は誤り。同化とは、体内に取り入れた栄養素(アミノ酸や糖質など)を使って、体内で必要な物質(蛋白質やグリコーゲンなど)を合成する過程を指します。
これは、エネルギーを使って行われる反応です。
一方、細胞内に蓄えられた体脂肪グリコーゲンなどが分解されてエネルギーを発生させる過程は異化です。
異化は、複雑な分子を分解してエネルギーを生成する反応を指します。

(2)は誤り。体内に摂取された栄養素が蛋白質などの必要な物質に合成されるのは、同化の過程です。
同化は、エネルギーを使って新しい物質を作り出すことです。
異化とは、逆に、複雑な分子(グリコーゲン、脂肪、蛋白質など)が分解され、エネルギーを放出する過程を指します。
したがって、この選択肢は同化と異化の意味を取り違えています。

(3)は誤り。エネルギー代謝率とは、運動や活動時に消費されるエネルギーを基礎代謝量に対する割合で表すものです。
たとえば、激しい運動をしている時のエネルギー消費が基礎代謝の3倍であれば、エネルギー代謝率は3となります。
この選択肢で述べているのは、呼吸商(RQ:Respiratory Quotient)です。
呼吸商は、酸素消費量に対する二酸化炭素排出量の比率で、代謝されている栄養素(脂質、糖質、蛋白質)を推定するために使用されます。

(4)は誤り。基礎代謝量は、心臓の拍動や呼吸、体温維持など、生命維持に必要な最低限のエネルギー消費量を指しますが、これは起きている安静時に測定されるものです。
睡眠中ではなく、通常は目覚めた状態で、心身ともに安静にしている状態で基礎代謝量が測定されます。
睡眠中は代謝がさらに低下しますが、それは基礎代謝とは異なります。

(5)は正しい。メッツ(METs)は、安静時の酸素消費量を基準に身体活動の強度を示す指標です。



問29 免疫に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)抗原とは、免疫に関係する細胞によって異物として認識される物質のことである。
(2)抗原となる物質には、蛋(たん)白質、糖質などがある。
(3)抗体とは、体内に入ってきた抗原に対して体液性免疫において作られる免疫グロブリンと呼ばれる蛋(たん)白質のことである。
(4)好中球は白血球の一種であり、偽足を出してアメーバ様運動を行い、体内に侵入してきた細菌などを貪食する。
(5)リンパ球には、血液中の抗体を作るTリンパ球と、細胞性免疫の作用を持つBリンパ球がある。


答え(5)
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。Tリンパ球細胞性免疫を担当し、Bリンパ球が抗体を作る体液性免疫を担います。この選択肢では逆になっています。



問30 腎臓・泌尿器系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)ネフロン(腎単位)は、尿を生成する単位構造で、1個の腎小体とそれに続く1本の尿細管から成り、1個の腎臓中に約100万個ある。
(2)腎臓の腎小体では、糸球体から血液中の蛋(たん)白質以外の血漿(しょう)成分がボウマン嚢(のう)に濾(こ)し出され、原尿が生成される。
(3)腎臓の尿細管では、原尿に含まれる大部分の水分及び身体に必要な成分が血液中に再吸収され、残りが尿として生成される。
(4)尿の約95%は水分で、約5%が固形物であるが、その成分が全身の健康状態をよく反映するので、尿を採取して尿素窒素の検査が広く行われている。
(5)尿の生成・排出により、体内の水分の量やナトリウムなどの電解質の濃度を調節するとともに、生命活動によって生じた不要な物質を排出する。


答え(4)
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(5)は誤り。尿の成分は全身の健康状態をよく反映し、検体の採取も簡単であるため、尿蛋白、尿糖、尿潜血などの尿検査は健康診断などで広く行われています。
尿検査のほかに、腎臓の機能をみる検査として、血液中の尿素窒素があります。

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