衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2016年4月)
ここでは、2016年(平成28年)4月公表の過去問のうち「労働衛生:一般(有害業務に係るもの以外のもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第一種衛生管理者、第二種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第一種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2016年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2016年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2016年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2016年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2016年4月)
問11 一般作業環境において機械換気を行う場合の必要換気量(m3/h)を算出する次の計算式において、室内二酸化炭素基準濃度(%)として通常用いられる数値は、(1)~(5)のうちどれか。
(1)3
(2)1
(3)0.3
(4)0.1
(5)0.03
(4)は正しい。必要換気量の問題はよく出題されます。今回、単位は百分率(%)でしたが、実数(元の数)や百万分率(ppm)で問われる場合もあります。0.1%を実数で表すと0.001、百万分率で表すと1000 ppmです。
(1)(2)(3)(5)は誤り。
問12 次のAからDの温熱指標について、乾球温度と湿球温度のみで求められるものの組合せは、(1)~(5)のうちどれか。
A 相対湿度
B 実効温度
C 不快指数
D WBGT
(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D
Aは正しい。相対湿度は、湿球温度の値が、乾球温度の値より小さくなることを利用して、『乾球温度』と『湿球温度』の差から求めることができます。
Bは誤り。実効温度は、『乾球温度』『湿球温度』『気流』から求めることができます。
Cは正しい。不快指数は、蒸し暑さによる不快の度合いを表しますので、『乾球温度』『湿球温度』から求められます。
Dは誤り。WBGT(屋外で太陽照射がある場合)は、『自然湿球温度』『黒球温度』『乾球温度』から求めます。
問13 採光、照明などに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)照度の単位はルクスで、1ルクスは光度1カンデラの光源から3 m離れた所で、その光に直角な面が受ける明るさに相当する。
(2)部屋の彩色に当たり、目の高さから上の壁及び天井は、まぶしさを防ぐため濁色にするとよい。
(3)立体視を必要とする作業には、影のできない照明が適している。
(4)全般照明と局部照明を併用する場合、全般照明による照度は、局部照明による照度の10分の1以上になるようにする。
(5)前方から明かりをとるとき、目と光源を結ぶ線と視線とが作る角度は、30°以下になるようにする。
(1)は誤り。照度の単位はルクス(lx)で、1ルクスは光度1カンデラ(cd)の光源から『1 m』離れた所で、その光に直角な面が受ける明るさに相当します。『3 m』ではありません。
(2)は誤り。部屋の彩色に当たり、目の高さから上の壁及び天井は、照明効果を良くするため『明るい色』にするとよく、目の高さ以下の壁面は、まぶしさを防ぎ安定感を出すために『濁色』にするのが良いとされています。
(3)は誤り。立体視を必要とする作業には、適当な影ができる照明が適しています。
(4)は正しい。
(5)は誤り。前方から明かりをとるとき、目と光源を結ぶ線と視線とが作る角度は、『30°以上』になるようにします。『30°以下』ではありません。
問14 厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づくメンタルヘルスケアに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)メンタルヘルスケアを中長期的視点に立って継続的かつ計画的に行うため策定する「心の健康づくり計画」は、各事業場における労働安全衛生に関する計画の中に位置付ける。
(2)「心の健康づくり計画」の策定は、衛生委員会又は安全衛生委員会において十分調査審議する。
(3)事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨を表明することは、「心の健康づくり計画」で定めるべき事項に含まれる。
(4)「心の健康づくり計画」では、「セルフケア」、「家族によるケア」、「ラインによるケア」及び「事業場外資源によるケア」の四つのケアを効果的に推進する。
(5)「セルフケア」とは、労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスを予防、軽減することである。
(4)は誤り。「家族によるケア」は定められていません。「心の健康づくり計画」では、「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」及び「事業場外資源によるケア」の4つのケアが継続的かつ計画的に行われることが重要です。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
問15 労働者の健康保持増進のために行う健康測定に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)健康測定における運動機能検査では、筋力、柔軟性、平衡性、敏捷(びんしょう)性、全身持久性などの検査を行う。
(2)健康測定における医学的検査は、労働者の健康障害や疾病を早期に発見することを主な目的として行う。
(3)健康測定の結果に基づき、必要と判断された場合や労働者自らが希望する場合は、メンタルヘルスケアを行う。
(4)健康測定の結果に基づく栄養指導では、食生活上問題が認められた労働者に対して、栄養の摂取量、食習慣や食行動の評価とその改善の指導を行う。
(5)健康測定の結果に基づき行う保健指導には、勤務形態や生活習慣によって生じる健康上の問題を解決するため、睡眠、喫煙、飲酒、口腔保健などの生活指導が含まれる。
(2)は誤り。健康測定は、労働者の健康状態を総合的に測定して、より健康で質の高い職場生活が送れるように健康指導を行う事を目的に行われています。健康障害や疾病を早期に発見することが目的ではありません。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
問16 在籍労働者数が60人の事業場において、在籍労働者の年間の延べ所定労働日数が14,400日、延べ実労働時間数が101,300時間であり、同期間の疾病休業件数が23件、疾病休業延べ日数が240日である。
このときの疾病休業日数率及び病休件数年千人率の概算値の組合せとして、適切なものは次のうちどれか。
[A]=疾病休業日数率 [B]=病休件数年千人率
(1)[A]0.10 [B]227
(2)[A]1.67 [B]227
(3)[A]1.67 [B]383
(4)[A]2.37 [B]103
(5)[A]2.37 [B]383
答え(3)
疾病休業日数率を求める式は次の通りです。
疾病休業日数率 =(疾病休業延べ日数/在籍労働者の延べ所定労働日数)× 100
病休件数年千人率を求める式は次の通りです。
病休件数年千人率 =(疾病休業件数/在籍労働者数)× 1000
問題文で与えられている値をそれぞれの式に代入して計算していきます。
疾病休業日数率 =(240日/14,400日)× 100 ≒ 1.67
病休件数年千人率 =(23件/60人)× 1000 ≒ 383
したがって、(3)[A]1.67[B]383が正解です。
問17 骨折及びその救急処置に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)複雑骨折とは、骨が多数の骨片に破砕された状態をいう。
(2)皮膚から突出している骨は、直ちに皮下に戻すようにする。
(3)骨折が疑われる部位は、よく動かしてその程度を判断する必要がある。
(4)骨折部の固定のため副子を手や足に当てるときは、その先端が手先や足先から出ないようにする。
(5)損傷が皮膚にまで及ばない骨折のことを単純骨折という。
(1)は誤り。複雑骨折とは、開放骨折ともいい、骨折とともに皮膚、皮下組織などが損傷し骨が外に出ている状態をいいます。
(2)は誤り。状態の悪化を防ぐため、皮膚から突出している骨は戻してはなりません。
(3)は誤り。骨折が疑われる部位は、動かさないことが大切です。患部の変形、痛み、腫れなどがあれば骨折を疑うことになります。
(4)は誤り。副子の先端が手先や足先から出ても、なんら問題ありません。
(5)は正しい。
問18 脳血管障害及び虚血性心疾患に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)脳血管障害は、脳の血管の病変が原因で生じ、出血性病変、虚血性病変などに分類される。
(2)出血性の脳血管障害は、脳表面のくも膜下腔(くう)に出血するくも膜下出血、脳実質内に出血する脳出血などに分類される。
(3)虚血性の脳血管障害である脳梗塞は、脳血管自体の動脈硬化性病変による脳血栓症と、心臓、動脈壁の血栓などが剥がれて脳血管を閉塞する脳塞栓症に分類される。
(4)虚血性心疾患は、門脈による心筋への血液の供給が不足したり途絶えることにより起こる心筋障害である。
(5)虚血性心疾患は、心筋の一部分に可逆的虚血が起こる狭心症と、不可逆的な心筋壊(え)死が起こる心筋梗塞とに大別される。
(4)は誤り。虚血性心疾患は、動脈硬化や血栓等で『冠動脈』が狭くなり、血液の流れが悪くなることで起こります。冠動脈は、心臓の筋肉に酸素を送るために、心臓の外側を包み込むようにして走っている血管です。
なお、『門脈』は、消化管から肝臓に栄養素を送るための極めて重要な血管のことですが、ここでは関係ありません。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
問19 食中毒に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)感染型食中毒は、食物に付着した細菌そのものの感染によって起こる食中毒で、サルモネラ菌によるものなどがある。
(2)毒素型食中毒は、食物に付着した細菌が増殖する際に産生した毒素によって起こる食中毒で、腸炎ビブリオ菌によるものなどがある。
(3)O-157やO-111は、ベロ毒素を産生する大腸菌で、これらによる食中毒は、腹痛や出血を伴う水様性の下痢などの症状を呈する。
(4)ボツリヌス菌は、缶詰、真空パック食品など酸素のない食品中で増殖して毒性の強い神経毒を産生し、筋肉の麻痺症状を起こす。
(5)ノロウイルスは、手指、食品などを介して経口で感染し、腸管で増殖して、嘔(おう)吐、下痢、腹痛などの急性胃腸炎を起こすもので、冬季に集団食中毒として発生することが多い。
(2)毒素型食中毒は、黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌によるものなどがあります。腸炎ビブリオ菌は、感染型食中毒を起こす菌です。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
問20 身長170 cmの人のBMIが25未満となる最大の体重は、次のうちどれか。
なお、BMIとは身長と体重から算出される体格指数である。
(1)65 kg
(2)67 kg
(3)69 kg
(4)71 kg
(5)73 kg
答え(4)
BMIは、体重(kg)を、身長(m)の2乗で割って求めます。
選択肢をそれぞれ計算してみると次のようになります。
(1)65 ÷ 1.72 ≒ 22.5
(2)67 ÷ 1.72 ≒ 23.2
(3)69 ÷ 1.72 ≒ 23.9
(4)71 ÷ 1.72 ≒ 24.6
(5)73 ÷ 1.72 ≒ 25.3
問題文では、「身長170 cmの人のBMIが25未満となる最大の体重はどれか。」とありますので、(4)71 kgが正解です。
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