衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2016年10月)
ここでは、2016年(平成28年)10月公表の過去問のうち「労働衛生:一般(有害業務に係るもの以外のもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第一種衛生管理者、第二種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第一種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2016年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2016年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2016年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2016年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2016年10月)
問11 一般作業環境において機械換気を行う場合の必要換気量(m3/h)を算出する次の計算式において、室内二酸化炭素基準濃度(%)として通常用いられる数値は、(1)~(5)のうちどれか。
(1)3
(2)1
(3)0.3
(4)0.1
(5)0.03
必要換気量を算出する計算式において、室内二酸化炭素基準濃度は0.1%を用います。
また、外気の二酸化炭素濃度は0.03~0.04%を用います。
問12 次のAからDの温熱指標について、乾球温度と温球温度のみで求められるものの組合せは、(1)~(5)のうちどれか。
A 相対湿度
B 実効温度
C 不快指数
D WBGT
(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D
Aは正しい。相対湿度は、乾球温度と温球温度のみで求められます。
Bは誤り。実効温度は、気温、湿度、気流から求められます。
Cは正しい。不快指数、乾球温度と温球温度のみで求められます。
Dは誤り。WBGTは、屋外で太陽商社のある場合は、自然湿球温度、黒球温度及び乾球温度から求められます。
問13 照明などの視環境に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)前方から明かりをとるときは、まぶしさをなくすため、眼と光源を結ぶ線と視線が作る角度は、40°以上になるようにしている。
(2)全般照明と局部照明を併用する場合、全般照明による照度は、局部照明による照度の15分の1以下になるようにしている。
(3)部屋の彩色として、目の高さ以下の壁面は、まぶしさを防ぎ安定感を出すために濁色を用い、目より上方の壁や天井は、照明効果を良くするため明るい色を用いている。
(4)あらゆる方向から同程度の明るさの光がくると、見る物に影ができなくなり、立体感がなくなってしまうことがある。
(5)高齢者は、若年者に比較して、一般に、高い照度が必要であるが、水晶体の混濁により、まぶしさを感じやすくなっている場合もあるので、注意が必要である。
(2)は誤り。全般照明による照度は、局部照明による照度の「10分の1以上」にします。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
問14 厚生労働省の「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に基づく措置に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)ディスプレイ画面上における照度は、500ルクス以下になるようにする。
(2)書類上及びキーボード上における照度は、300ルクス以上になるようにする。
(3)ディスプレイは、おおむね40 cm以上の視距離が確保できるようにし、画面の上端が眼と同じ高さか、やや下になるようにする。
(4)単純入力型及び拘束型に該当するVDT作業については、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1~2回程度の小休止を設けるようにする。
(5)VDT作業健康診断では、原則として、視力検査、上肢及び下肢の運動機能検査などを行う。
(5)は誤り。VDT作業健康診断には、上肢(腕)の検査は含まれますが、下肢(脚)の検査は含まれていません。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
問15 厚生労働省の「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」に基づく健康保持増進対策に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)継続的かつ計画的に行うため、労働者の健康の保持増進を図るための基本的な計画である健康保持増進計画を策定する。
(2)健康保持増進計画で定める事項には、事業者が健康保持増進を積極的に推進する旨の表明に関することが含まれる。
(3)産業医は、健康測定の実施結果を評価し、運動指導等の健康指導を行うための指導票を作成するとともに、健康保持増進措置を実施する他のスタッフに対して指導を行う。
(4)健康測定の結果に基づき、個々の労働者に対して必要な栄養指導を行う産業保健指導担当者を配置する。
(5)健康保持増進措置を実施するためのスタッフの確保が事業場内で困難な場合は、労働者の健康の保持増進のための業務を行う外部のサービス機関などに委託して実施する。
(4)は誤り。栄養指導を行うのは、「産業栄養指導担当者」です。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
問16 1,000人を対象としたある疾病のスクリーニング検査の結果と精密検査結果によるその疾病の有無は下表のとおりであった。
このスクリーニング検査の偽陽性率及び偽陰性率の近似値の組合せとして、適切なものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、偽陽性率とは、疾病無しの者を陽性と判定する率をいい、偽陰性率とは、疾病有りの者を陰性と判定する率をいう。
A=偽陽性率(%) B=偽陰性率(%)
(1)A=18.5 B=0.5
(2)A=18.5 B=20.0
(3)A=80.0 B=0.5
(4)A=80.0 B=20.0
(5)A=90.0 B=0.6
答え(2)
下の表(四分表)は、ある検査で、あるスクリーニングレベルを設定したときの検査法の有効性の指標を表すのに用います。
偽陽性率と偽陰性率の指標の計算は次の通り行います。
・偽陽性率(%)=偽陽性/(偽陽性+真陰性)×100
・偽陰性率(%)=偽陰性/(真陽性+偽陰性)×100
四分表の値を代入して、それぞれ計算しましょう。
偽陽性率(%)=180/(180+798)×100
≒18.5
偽陰性率(%)=5/(20+5)×100
=20.0
したがって、偽陽性率は18.5%、偽陰性率は20.0%が正解です。
問17 出血及び止血法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)体内の全血液量の10分の1程度が急激に失われると、生命が危険な状態となる。
(2)直接圧迫法は、出血部を直接圧迫する方法であって、最も簡単で効果的な方法である。
(3)間接圧迫法は、出血部より心臓に近い部位の動脈を圧迫する方法である。
(4)静脈性出血は、傷口からゆっくり持続的に湧き出るような出血である。
(5)止血処置を行うときは、感染防止のため、ビニール手袋を着用したりビニール袋を活用したりして、血液に直接触れないようにする。
(1)は誤り。体内の全血液量の「3分の1」程度が急激に失われると、出血によるショックを経て、生命が危険な状態となります。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問18 熱傷の救急処置などに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)熱傷は、Ⅰ~Ⅲ度に分類され、Ⅰ度は水疱(ほう)ができる程度のもので、強い痛みと灼(しゃく)熱感を伴う。
(2)衣類を脱がすときは、熱傷面に付着している衣類は残して、その周囲の部分だけを切りとる。
(3)水疱ができたときは、周囲に広がらないように破って清潔なガーゼや布で軽く覆う。
(4)化学薬品がかかった場合は、直ちに中和剤により中和した後、水で洗浄する。
(5)高温のアスファルトやタールが皮膚に付着した場合は、水をかけて冷やしたりせず、早急に皮膚から取り除く。
(1)は誤り。「Ⅱ度」の熱傷では、水疱ができ、強い痛みと灼熱感を伴います。
(2)は正しい。応急処置の段階で熱傷面に付着した衣服を脱がそうとすると、熱傷部位の皮膚も一緒にはがれてしまうおそれがあります。
(3)は誤り。水疱ができたときは、それを破らないようにして、清潔なガーゼや布で軽く覆います。
(4)は誤り。化学熱傷では、中和剤による中和は推奨されていません。
(5)は誤り。この場合は、原因物質を皮膚からはがさずに、水をかけて冷やして熱傷の進行を抑えるようにします。
問19 細菌性食中毒の原因菌のうち、病原性好塩菌ともいわれるものは、次のうちどれか。
(1)黄色ブドウ球菌
(2)ボツリヌス菌
(3)サルモネラ菌
(4)腸炎ビブリオ
(5)セレウス菌
腸炎ビブリオは、海水を好むため病原性好塩菌ともいわれます。
問20 健康診断における検査項目に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)尿酸は、体内のプリン体と呼ばれる物質の代謝物で、血液中の尿酸値が高くなる高尿酸血症は、関節の痛風発作などの原因となるほか、動脈硬化とも関連するとされている。
(2)血清トリグリセライド(中性脂肪)は、食後に値が上昇する脂質で、空腹時にも高値が持続することは動脈硬化の危険因子となる。
(3)HDLコレステロールは、悪玉コレステロールとも呼ばれ、高値であることは動脈硬化の危険因子となる。
(4)尿素窒素(BUN)は、腎臓から排泄(せつ)される老廃物の一種で、腎臓の働きが低下すると尿中に排泄されず、血液中の値が高くなる。
(5)γ-GTPは、正常な肝細胞に含まれている酵素で、肝細胞が障害を受けると血液中に流れ出し、特にアルコールの摂取で高値を示す特徴がある。
(1)は正しい。尿酸検査は、海外派遣労働者の健康診断で、医師が必要と判断した場合に実施する検査項目です。
(2)は正しい。血清トリグリセライド(中性脂肪)は、一般的に食後に値が上昇する脂質です。ところが内臓脂肪が蓄積している人は、これが食後に異常な高値になったり、空腹時にも高値が持続することがあり、血管壁にコレステロールが溜まりやすくなり動脈硬化が進むとされています。
(3)は誤り。HDLコレステロールは、善玉コレステロールで、これが低値であることが動脈硬化の危険因子となります。一方で、LDLコレステロールは、悪玉コレステロールと呼ばれ、これが高値であることが動脈硬化の危険因子となります。
(4)は正しい。尿素窒素(BUN)は、健康測定の医学的検査の項目のひとつです。腎臓の機能を検査することができます。
(5)は正しい。γ-GTPは、正常な肝細胞に含まれている酵素で、肝細胞が障害を受けると血中に流れ出して、高値を示します。他にも一般健康診断において、GOT(AST)、GPT(ALT)も、肝機能検査項目に含まれます。
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