衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2017年10月)
ここでは、2017年(平成29年)10月公表の過去問のうち「労働衛生:一般(有害業務に係るもの以外のもの」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2017年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2017年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2017年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2017年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2017年10月)
問11 一般作業環境において機械換気を行う場合の必要換気量(m3/h)を算出する次の計算式において、室内二酸化炭素基準濃度(%)として通常用いられる数値は、(1)~(5)のうちどれか。
(1)0.05
(2)0.1
(3)0.5
(4)1
(5)5
必要換気量を算出する計算式において、室内二酸化炭素基準濃度は0.1%を用います。
また、外気の二酸化炭素濃度は0.03~0.04%を用います。
問12 温熱条件に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)温度感覚を左右する環境要素は、気温、湿度、気流及び輻射(放射)熱である。
(2)実効温度は、人の温熱感に基礎を置いた指標で、気温、湿度及び気流の総合効果を温度目盛りで表したものである。
(3)相対湿度は、空気中の水蒸気量と、その温度における飽和水蒸気量との比を百分率で示したものである。
(4)WBGTは、自然湿球温度、黒球温度及び乾球温度から求められる指標で、暑熱環境による熱ストレス評価に用いられる。
(5)算出したWBGTの値が、作業内容に応じて設定されたWBGT基準値未満である場合には、熱中症が発生するリスクが高まる。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。算出したWBGTの値が、作業内容に応じて設定された「WBGT基準値を超えた場合」には、熱中症が発生するリスクが高まると考えることができます。
この場合、高温の暑熱環境下でのリスク低減措置の強化等の措置を徹底することが重要です。
問13 採光、照明などに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)照度の単位はルクスで、1ルクスは光度1カンデラの光源から10m離れた所で、その光に直角な面が受ける明るさに相当する。
(2)部屋の彩色に当たり、目の高さから上の壁及び天井は、まぶしさを防ぐため濁色にするとよい。
(3)立体視を必要とする作業には、影のできない照明が適している。
(4)全般照明と局部照明を併用する場合、全般照明による照度は、局部照明による照度の15分の1以下になるようにする。
(5)前方から明かりをとるときは、まぶしさをなくすため、眼と光源を結ぶ線と視線が作る角度は、おおむね30°以上になるようにする。
(1)は誤り。照度の単位はルクスで、1ルクスは光度1カンデラの光源から「1m」離れた所で、その光に直角な面が受ける明るさに相当します。
(2)は誤り。部屋の彩色として、目の高さ以下の壁面は、まぶしさを防ぎ安定感を出すために濁色を用い、目より上方の壁や天井は、照明効果を良くするため明るい色を用います。
(3)は誤り。あらゆる方向から同程度の明るさの光がくると、見る物に影ができなくなり、立体感がなくなってしまいます。立体視を必要とする作業では、影のできない照明は不都合の場合があります。
(4)は誤り。全般照明による照度は、局部照明による照度の「10分の1以上」にします。
(5)は正しい。
問14 厚生労働省の「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」に基づく健康保持増進対策に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)事業場内健康保持増進体制の整備に関することは、健康保持増進計画で定める事項に含まれない。
(2)産業医は、健康診断の結果を評価し、運動指導等の健康指導を行うための指導票を作成するとともに、個々の労働者に対して指導を行う。
(3)運動指導担当者が健康診断の結果に基づき運動指導を行い、産業保健指導担当者が個々の労働者に対して必要な栄養指導を行う。
(4)喫煙及び飲酒に関する指導及び教育を行うことは、産業保健指導担当者が行う保健指導の内容に含まれる。
(5)健康保持増進措置を実施するためのスタッフは、いかなる場合でもその事業場内で確保するべきであり、外部の機関に委託してその職務を実施させてはならない。
(1)は誤り。「事業場内健康保持増進体制の整備に関すること」は、健康保持増進計画で定める事項に含まれています。
(2)は誤り。運動指導は、運動指導担当者や運動実践担当者が行います。
(3)は誤り。運動指導担当者は「健康測定」の結果に基づき、運動プログラムを作成し、運動実践を行うに当たっての指導を行います。また、産業保健指導担当者は、個々の労働者に対して必要な「保健指導」を行います。
(4)は正しい。
(5)は誤り。スタッフを事業場内で確保できないときは、労働者健康保持増進サービス機関等の外部機関に委託しても構いません。
問15 厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において、心の健康づくり計画の実施に当たって推進すべきこととされている四つのメンタルヘルスケアに該当しないものは、次のうちどれか。
(1)労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスの予防や対処を行うセルフケア
(2)職場の同僚がメンタルヘルス不調の労働者の早期発見、相談への対応を行うとともに管理監督者に情報提供を行う同僚によるケア
(3)管理監督者が、職場環境等の改善や労働者からの相談への対応を行うラインによるケア
(4)産業医、衛生管理者等が、心の健康づくり対策の提言や推進を行うとともに、労働者及び管理監督者に対する支援を行う事業場内産業保健スタッフ等によるケア
(5)メンタルヘルスケアに関する専門的な知識を有する事業場外の機関及び専門家を活用し支援を受ける事業場外資源によるケア
四つのメンタルヘルスケアは、試験でも頻出ですので必ず覚えましょう。
四つのメンタルヘルスケアとは、「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」です。
(2)同僚によるケアは、規定されていません。
問16 厚生労働省の「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に基づく措置に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)ディスプレイは、おおむね40cm以上の視距離が確保できるようにし、画面の上端が、眼と同じ高さか、やや下になるようにする。
(2)ディスプレイ画面上における照度は、500ルクス以下になるようにする。
(3)書類上及びキーボード上における照度は、300ルクス以上になるようにする。
(4)単純入力型及び拘束型に該当するVDT作業については、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に5分間の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1~2回程度の小休止を設けるようにする。
(5)VDT作業健康診断は、一般健康診断を実施する際に、併せて実施してもよい。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。単純入力型及び拘束型に該当するVDT作業については、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に「10~15分」の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1~2回程度の小休止を設けるようにします。
問17 出血及び止血法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)直接圧迫法は、出血部を直接圧迫する方法であり、最も簡単で効果的な方法である。
(2)間接圧迫法は、出血部より心臓に近い部位の動脈を圧迫する方法である。
(3)動脈性出血は、傷口からゆっくり持続的に湧き出るような出血である。
(4)体内の全血液量の3分の1程度が急激に失われると、生命が危険な状態となる。
(5)止血処置を行うときは、感染防止のため、ビニール手袋を着用したりビニール袋を活用したりして、血液に直接触れないようにする。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。動脈性出血は、動脈からの出血で、拍動性で鮮紅色を呈し、出血量が多く、短時間でショックに陥るため、早急な止血が必要になります。
なお、傷口からゆっくり持続的に湧き出るような出血は、静脈性出血といいます。
問18 骨折及びその救急処置に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)骨にひびの入った状態を不完全骨折といい、骨が完全に折れている状態を完全骨折という。
(2)骨が1か所で折れている状態を単純骨折といい、骨が2か所以上で折れたり、砕けている部分のある状態を複雑骨折という。
(3)骨折部が皮膚から露出した状態を開放骨折という。
(4)骨折部を副子で固定するときには、骨折した部分が変形していても、そのままの状態を保持して、直近の関節部を含めた広い範囲を固定する。
(5)脊髄損傷が疑われる傷病者を移動させる必要があるときには、硬い板などの上に載せる。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。単純骨折とは、閉鎖骨折のことで、皮膚の下で骨が折れ、皮膚には損傷が及ばない骨折です。 一方、複雑骨折とは、解放骨折のことで、皮膚や皮下組織が損傷し、骨折部が露出した状態の骨折です。
問19 食中毒に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)O-157やO-111は、ベロ毒素を産生する大腸菌で、これらによる食中毒は、腹痛、出血を伴う水様性の下痢などの症状を呈する。
(2)ノロウイルスは、手指、食品などを介して経口で感染し、腸管で増殖して、嘔吐、下痢、腹痛などの急性胃腸炎を起こすもので、冬季に集団食中毒として発生することが多い。
(3)ボツリヌス菌は、缶詰、真空パック食品など酸素のない食品中で増殖して毒性の強い神経毒を産生し、筋肉の麻痺症状を起こす。
(4)毒素型食中毒は、食物に付着した細菌が増殖する際に産生した毒素によって起こる食中毒で、腸炎ビブリオ菌などによるものがある。
(5)感染型食中毒は、食物に付着した細菌そのものの感染によって起こる食中毒で、サルモネラ菌などによるものがある。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。毒素型食中毒は、細菌が産生した毒素に汚染された食品を食べることなどで症状を起こす食中毒ですが、主な原因菌として黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌などがあります。
腸炎ビブリオ菌は、感染型食中毒の原因菌です。
問20 虚血性心疾患に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)虚血性心疾患は、狭心症と心筋梗塞とに大別される。
(2)虚血性心疾患発症の危険因子には、高血圧、喫煙、脂質異常症などがある。
(3)運動負荷心電図検査は、心筋の異常や不整脈の発見には役立つが、虚血性心疾患の発見には役立たない。
(4)狭心症は、心臓の血管の一部の血流が一時的に悪くなる病気である。
(5)狭心症の痛みの場所は、心筋梗塞とほぼ同じであるが、その発作が続く時間は、通常数分程度で、長くても15分以内であることが多い。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。運動負荷心電図検査は、運動負荷を加えた状態で心電図の変化をみる検査です。
安静時心電図では診断することが難しい狭心症など、虚血性心疾患の発見に役立ちます。
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