衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2018年10月)
ここでは、2018年(平成30年)10月公表の過去問のうち「労働衛生:一般(有害業務に係るもの以外のもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2018年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2018年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2018年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2018年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2018年10月)
問11 温熱条件に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)温度感覚を左右する環境要素は、気温、湿度、気流及びふく射(放射)熱である。
(2)高温多湿作業場所において労働者を作業に従事させる場合には、計画的に、熱への順化期間を設ける。
(3)相対湿度は、空気中の水蒸気量と、その温度における飽和水蒸気量との比を百分率で示したものである。
(4)WBGTは、自然湿球温度、黒球温度及び乾球温度から求められる指標で、暑熱環境による熱ストレス評価に用いられる。
(5)算出したWBGTの値が、作業内容に応じて設定されたWBGT基準値未満である場合には、熱中症が発生するリスクが高まる。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。算出したWBGTの値が、作業内容に応じて設定された「WBGT基準値を超えた場合」には、熱中症が発生するリスクが高まると考えることができます。
この場合、高温の暑熱環境下でのリスク低減措置の強化等の措置を徹底することが重要です。
問12 採光、照明などに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)部屋の彩色に当たり、目の高さから上の壁及び天井は、まぶしさを防ぐため濁色にするとよい。
(2)室内の彩色で、明度を高くすると光の反射率が高くなることから照度を上げる効果があるが、彩度を高くしすぎると交感神経の緊張を招き、長時間にわたる場合は疲労が生じやすい。
(3)照度の単位はルクスで、1ルクスは光度1カンデラの光源から10m離れた所で、その光に直角な面が受ける明るさに相当する。
(4)前方から明かりをとるとき、目と光源を結ぶ線と視線とが作る角度は、30°未満になるようにする。
(5)作業室全体の照度は、作業面の局部照明による照度の10%未満になるようにする。
(1)は誤り。部屋の彩色として、目の高さ以下の壁面は、まぶしさを防ぎ安定感を出すために濁色を用い、目より上方の壁や天井は、照明効果を良くするため明るい色を用います。
(2)は正しい。
(3)は誤り。照度の単位はルクスで、1ルクスは光度1カンデラの光源から「1m」離れた所で、その光に直角な面が受ける明るさに相当します。
(4)は誤り。前方から明かりをとるときは、まぶしさをなくすため、眼と光源を結ぶ線と視線が作る角度は、おおむね30°以上になるようにします。
(5)は誤り。全般照明による照度は、局部照明による照度の「10分の1以上」にします。
問13 1,000人を対象としたある疾病のスクリーニング検査の結果と精密検査結果によるその疾病の有無は下表のとおりであった。
このスクリーニング検査の偽陽性率及び偽陰性率の近似値の組合せとして、適切なものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、偽陽性率とは、疾病無しの者を陽性と判定する率をいい、偽陰性率とは、疾病有りの者を陰性と判定する率をいう。
[A]偽陽性率(%) [B]偽陰性率(%)
(1)[A]15.0 [B]98.8
(2)[A]17.0 [B]1.0
(3)[A]17.7 [B]25.0
(4)[A]82.3 [B]75.0
(5)[A]85.0 [B]1.3
答え(3)
下の表(四分表)は、ある検査で、あるスクリーニングレベルを設定したときの検査法の有効性の指標を表すのに用います。
偽陽性率と偽陰性率の指標の計算は次の通り行います。
・偽陽性率(%)=偽陽性/(偽陽性+真陰性)×100
・偽陰性率(%)=偽陰性/(真陽性+偽陰性)×100
四分表の値を代入して、それぞれ計算しましょう。
偽陽性率(%)=170/(170+790)×100
≒17.7
偽陰性率(%)=10/(30+10)×100
=25.0
したがって、偽陽性率は17.7%、偽陰性率は25.0%が正解です。
問14 在室者が12人の事務室において、二酸化炭素濃度を1,000ppm以下に保つために最小限必要な換気量の値(m3/h)に最も近いものは次のうちどれか。
ただし、在室者が呼出する二酸化炭素量は1人当たり0.018m3/h、外気の二酸化炭素濃度は400ppmとする。
(1)160
(2)220
(3)260
(4)360
(5)390
答え(4)
作業場内で衛生管理上、入れ替える必要がある空気量を必要換気量と言い、1時間の空気量で表します。
必要換気量の計算式は次の通りです。
まず、「室内にいる人が呼出する二酸化炭素量」を求めます。問題文では、「在室者が呼出する二酸化炭素量は1人当たり0.018m3/h」とあるので、ここに在室者の人数「12人」を掛けます。
0.018m3/h×12人=0.216m3/h
続いて、「室内二酸化炭素基準濃度と外気の二酸化炭素濃度の差」を求めます。問題文では、「事務室において、二酸化炭素濃度を1,000ppm以下に保つ」とあるので、ここから「外気の二酸化炭素濃度400ppm」を引きます。
1,000ppm-400ppm=600ppm
次の計算をしやすくするため、この割合を実数に直します。
600ppm÷1,000,000=0.0006
最後に、先に求めた「室内にいる人が呼出する二酸化炭素量」をこの値で割ります。
0.216m3/h÷0.0006=360m3/h
したがって、この事務室の必要換気量を、少なくとも(4)360m3/hにすれば、事務室の二酸化炭素濃度を1,000ppm以下に保つことができます。
問15 厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において、心の健康づくり計画の実施に当たって推進すべきこととされている四つのメンタルヘルスケアに該当しないものは、次のうちどれか。
(1)労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスの予防や対処を行うセルフケア
(2)職場の同僚がメンタルヘルス不調の労働者の早期発見、相談への対応を行うとともに管理監督者に情報提供を行う同僚によるケア
(3)管理監督者が、職場環境等の改善や労働者からの相談への対応を行うラインによるケア
(4)産業医、衛生管理者等が、心の健康づくり対策の提言や推進を行うとともに、労働者及び管理監督者に対する支援を行う事業場内産業保健スタッフ等によるケア
(5)メンタルヘルスケアに関する専門的な知識を有する事業場外の機関及び専門家を活用し支援を受ける事業場外資源によるケア
四つのメンタルヘルスケアは、試験でも良く出題されています。
四つのメンタルヘルスケアとは、「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」です。
(2)同僚によるケアは、規定されていません。
問16 厚生労働省の「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」において、快適な職場環境の形成のための措置の実施に関し、考慮すべき事項とされていないものは次のうちどれか。
(1)継続的かつ計画的な取組
(2)経営者の意向の反映
(3)労働者の意見の反映
(4)個人差への配慮
(5)潤いへの配慮
事業者は、単に法令に定めれらた労働災害防止のための最低基準を守るだけでなく、労働者が心身ともに健康に働ける快適な職場環境の形成の実現を求められています。
国は快適職場づくりの適切かつ有効な実施を目的として「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針(快適職場指針)」を1992年に公表しています(1997年改正。)。
その指針の中で、快適職場づくりの検討および考慮すべき事項として「継続的かつ計画的な取組」「個人差への配慮」「労働者の意見の反映」「潤いへの配慮」があります。
選択肢にある「経営者の意向の反映」は、定められていません。
問17 一次救命処置に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)傷病者の肩を軽くたたきながら「大丈夫ですか?」と呼びかけて、反応がない場合は、その場で大声で叫んで周囲の注意を喚起し、応援を呼ぶ。
(2)傷病者に反応がなく、周囲に協力者がいる場合は、119番通報やAEDの手配を依頼する。
(3)口対口人工呼吸は、傷病者の鼻をつまみ、1回の吹き込みに約3秒かけて傷病者の胸の盛り上がりが確認できる程度まで吹き込む。
(4)胸骨圧迫は、胸が約5cm沈む強さで、1分間に100~120回のテンポで行う。
(5)AEDを用いた場合、電気ショックを行った後や電気ショックは不要とメッセージがあったときには、胸骨圧迫を再開し心肺蘇(そ)生を続ける。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。口対口人工呼吸は、傷病者の鼻をつまみ、1回の吹き込みに「約1秒」かけて傷病者の胸の盛り上がりが見える程度まで吹き込みます。
3秒のように時間を掛けて、過剰な換気をすることは、むしろ有害とされています。
また、人工呼吸による胸骨圧迫の中断を考慮すれば吸気時間は短いほうがよいという考えもあります。
さて、一次救命処置については、AHA(アメリカ心臓協会)が科学的な根拠に基づき心肺蘇生法に関する指針を見直してガイドライン2005を発表しました。
それを受けて日本においても救急蘇生ガイドラインが大きく改訂されました(2006年)。
その後、JRC(日本蘇生協議会)と日本救急医療財団により「JRC蘇生ガイドライン2015」が策定されています(2016年)。
このガイドラインは、最新のデータに基づき定期的に見直されるでしょう。
問18 骨折及びその救急処置に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)骨にひびの入った状態を不完全骨折といい、骨が完全に折れている状態を完全骨折という。
(2)骨が1か所で折れている状態を単純骨折といい、骨が2か所以上で折れたり、砕けている部分のある状態を複雑骨折という。
(3)骨折部の固定のため副子を手や足に当てるときは、手先や足先が副子の先端から出るようにする。
(4)皮膚から突出している骨は、直ちに皮下に戻すようにする。
(5)脊髄損傷が疑われる負傷者を搬送させる必要があるときは、硬い板の上に乗せてはならない。
(1)は正しい。
(2)は誤り。単純骨折とは、皮膚の下で骨が折れ、損傷は皮膚には及ばない状態をいいます。また、複雑骨折とは、骨折とともに皮膚、皮下組織などが損傷し骨が外に出ている状態をいいます。
(3)は誤り。副子の先端が手先や足先から出ても、問題ありません。
(4)は誤り。皮膚から突出している骨は戻してはなりません。
(5)は誤り。脊髄損傷が疑われる場合は、骨折部にズレがないように、傷病者を硬い板の上に乗せて搬送します。
問19 食中毒に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)毒素型食中毒は、食物に付着した細菌により産生された毒素によって起こる食中毒で、ボツリヌス菌によるものなどがある。
(2)感染型食中毒は、食物に付着している細菌そのものの感染によって起こる食中毒で サルモネラ菌によるものなどがある。
(3)O-157やO-111は、ベロ毒素を産生する大腸菌で、腹痛や出血を伴う水様性の下痢などを起こす。
(4)ノロウイルスの殺菌には、エタノールはあまり効果がなく、煮沸消毒又は塩素系の消毒剤が効果的である。
(5)魚、チーズなどに含まれるヒスチジンが細菌により分解されて生成するヒスタミンは、加熱により分解される。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。赤身魚、チーズなどに含まれるヒスチジンが細菌により分解されて生成されるヒスタミンは、加熱処理しても分解されにくいため、予防として低温保存を徹底します。
問20 メタボリックシンドローム診断基準に関する次の文中の[ ]内に入れるAからCの語句又は数値の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「日本人のメタボリックシンドローム診断基準で、腹部肥満([ A ]脂肪の蓄積)とされるのは、腹囲が男性では[ B ]cm以上、女性では[ C ]cm以上の場合である。」
(1)[A]内臓 [B]85 [C]90
(2)[A]内臓 [B]90 [C]85
(3)[A]皮下 [B]85 [C]90
(4)[A]皮下 [B]90 [C]85
(5)[A]体 [B]95 [C]90
「日本人のメタボリックシンドローム診断基準で、腹部肥満([内臓]脂肪の蓄積)とされるのは、腹囲が男性では[85]cm以上、女性では[90]cm以上の場合である。」
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