衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2023年10月)
ここでは、2023年(令和5年)10月公表の過去問のうち「労働衛生:一般(有害業務に係るもの以外のもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2023年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2023年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2023年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2023年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2023年10月)
問11 温熱条件に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)温度感覚を左右する環境条件は、気温、湿度及びふく射(放射)熱の三つの要素で決まる。
(2)実効温度は、人の温熱感に基礎を置いた指標で、気温、湿度及び気流の総合効果を温度目盛りで表したものである。
(3)相対湿度は、乾球温度と湿球温度によって求められる。
(4)WBGT基準値は、身体に対する負荷が大きな作業の方が、負荷が小さな作業より小さな値となる。
(5)WBGT値がその基準値を超えるおそれのあるときには、冷房などによりWBGT値を低減すること、代謝率レベルの低い作業に変更することなどの対策が必要である。
(1)は誤り。温度感覚を左右する環境条件は、気温、湿度、気流及びふく射(放射)熱の四つの要素で決まります。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問12 一般の事務室における換気に関する次のAからDの記述について、誤っているものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 人間の呼気の成分の中で、酸素の濃度は約16%、二酸化炭素の濃度は約4%である。
B 新鮮な外気中の酸素濃度は約21%、二酸化炭素濃度は0.3~0.4%程度である。
C 室内の必要換気量(m3/h)は、次の式により算出される。
D 必要換気量の算出に当たって、室内二酸化炭素基準濃度は、通常、1%とする。
(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D
A,Cは正しい。
Bは誤り。新鮮な外気中の二酸化炭素濃度は、0.03~0.04%程度です。
Dは誤り。必要換気量の算出に当たって、室内二酸化炭素基準濃度は、通常、0.1%とします。
問13 厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に基づく措置に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)ディスプレイとの視距離は、おおむね50cmとし、ディスプレイ画面の上端を眼の高さよりもやや下にしている。
(2)書類上及びキーボード上における照度を400ルクス程度とし、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくしている。
(3)一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に5分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において2回の小休止を設けている。
(4)1日の情報機器作業の作業時間が4時間未満である労働者については、自覚症状を訴える者についてのみ、情報機器作業に係る定期健康診断の対象としている。
(5)情報機器作業に係る定期健康診断において、眼科学的検査と筋骨格系に関する検査のそれぞれの実施日が異なっている。
(1)(2)(4)(5)は適切。
(3)は不適切。一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回~2回程度の小休止を設けるようにします。5分の作業休止時間では、不十分です。
問14 健康診断における検査項目に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)HDLコレステロールは、善玉コレステロールとも呼ばれ、低値であることは動脈硬化の危険因子となる。
(2)γ-GTPは、正常な肝細胞に含まれている酵素で、肝細胞が障害を受けると血液中に流れ出し、特にアルコールの摂取で高値を示す特徴がある。
(3)ヘモグロビンA1cは、血液1μL中に含まれるヘモグロビンの数を表す値であり、貧血の有無を調べるために利用される。
(4)尿素窒素(BUN)は、腎臓から排泄(せつ)される老廃物の一種で、腎臓の働きが低下すると尿中に排泄(せつ)されず、血液中の値が高くなる。
(5)血清トリグリセライド(中性脂肪)は、食後に値が上昇する脂質で、内臓脂肪が蓄積している者において、空腹時にも高値が持続することは動脈硬化の危険因子となる。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。ヘモグロビンA1cは、過去2~3か月の平均的な血糖値を表す値で、糖尿病のコントロールの経過を見るためにも利用されます。貧血の有無を調べるものではありません。
問15 厚生労働省の「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」に関する次のAからDの記述について、誤っているものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 第一種施設とは、多数の者が利用する施設のうち、学校、病院、国や地方公共団体の行政機関の庁舎等をいい、「原則敷地内禁煙」とされている。
B 一般の事務所や工場は、第二種施設に含まれ、「原則屋内禁煙」とされている。
C 第二種施設においては、特定の時間を禁煙とする時間分煙が認められている。
D たばこの煙の流出を防止するための技術的基準に適合した喫煙専用室においては、食事はしてはならないが、飲料を飲むことは認められている。
(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D
A,Bは正しい。
Cは誤り。受動喫煙防止のガイドラインには、時間分煙について規定されていません。
Dは誤り。喫煙専用室においては、飲食を行うことが認められていません。
問16 労働衛生管理に用いられる統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)生体から得られたある指標が正規分布である場合、そのばらつきの程度は、平均値や最頻値によって表される。
(2)集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。
(3)健康管理統計において、ある時点での検査における有所見者の割合を有所見率といい、このようなデータを静態データという。
(4)健康診断において、対象人数、受診者数などのデータを計数データといい、身長、体重などのデータを計量データという。
(5)ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。
(1)は誤り。正規分布のばらつきの程度は、標準偏差や分散で表します。平均値や最頻値は、ばらつきの指標ではありません。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問17 厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」に基づき、腰部に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者に対して当該作業に配置する際に行う健康診断の項目として、適切でないものは次のうちどれか。
(1)既往歴及び業務歴の調査
(2)自覚症状の有無の検査
(3)負荷心電図検査
(4)神経学的検査
(5)脊柱の検査
(1)(2)(4)(5)は適切。
(3)は不適切。腰痛予防対策指針では、負荷心電図検査は求められていません。ちなみに、負荷心電図検査は、心疾患の有無を評価するための検査です。
問18 脳血管障害及び虚血性心疾患に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)虚血性の脳血管障害である脳梗塞は、脳血管自体の動脈硬化性病変による脳血栓症と、心臓や動脈壁の血栓が剥がれて脳血管を閉塞する脳塞栓症に分類される。
(2)くも膜下出血は、通常、脳動脈瘤(りゅう)が破れて数日後、激しい頭痛で発症する。
(3)虚血性心疾患は、冠動脈による心筋への血液の供給が不足したり途絶えることにより起こる心筋障害である。
(4)心筋梗塞では、突然激しい胸痛が起こり、「締め付けられるように痛い」、「胸が苦しい」などの症状が、1時間以上続くこともある。
(5)運動負荷心電図検査は、虚血性心疾患の発見に有用である。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。くも膜下出血の症状は、動脈瘤が破れた直後に激しい頭痛が起こります。数日後ではありません。
問19 食中毒に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)感染型食中毒は、食物に付着した細菌そのものの感染によって起こる食中毒で、サルモネラ菌によるものがある。
(2)赤身魚などに含まれるヒスチジンが細菌により分解されて生成されるヒスタミンは、加熱調理によって分解する。
(3)エンテロトキシンは、フグ毒の主成分で、手足のしびれや呼吸麻痺(ひ)を起こす。
(4)カンピロバクターは、カビの産生する毒素で、腹痛や下痢を起こす。
(5)ボツリヌス菌は、缶詰や真空パックなど酸素のない密封食品中でも増殖するが、熱には弱く、60℃、10分間程度の加熱で殺菌することができる。
(1)は正しい。感染型食中毒の原因菌には、サルモネラ菌やカンピロバクターが含まれます。
(2)は誤り。カジキ、マグロといった赤身魚などに含まれるヒスチジンが細菌により分解されて生成されるヒスタミンは、加熱で分解されません。
(3)は誤り。エンテロトキシンは、フグ毒ではなく黄色ブドウ球菌毒素です。
(4)は誤り。カンピロバクターは細菌です。カビが産生する毒素ではありません。
(5)は誤り。ボツリヌス菌が熱に強い芽胞という形態になると、120℃で4分間以上の加熱をしなければ完全に死滅しないとされています。熱には弱いとするのは誤りです。
問20 身長175cm、体重80kg、腹囲88cmの人のBMIに最も近い値は、次のうちどれか。
(1)21
(2)26
(3)29
(4)37
(5)40
答え(2)
肥満度の評価に用いられるBMI(ボディマスインデックス)の計算は、体重(kg)を身長(m)で割って求めます。
身長175cm、体重80kgの人のBMIは次のように計算します。
80[kg]÷1.752[m]≒26.1
したがって、(2)26が正解です。
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