衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2024年4月)
ここでは、2024年(令和6年)4月公表の過去問のうち「労働衛生:一般(有害業務に係るもの以外のもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2024年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2024年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2024年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2024年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2024年4月)
問11 事務室における必要換気量Q(m3/h)を算出する式として、適切なものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、AからDは次のとおりとする。
A 室内二酸化炭素基準濃度(%)
B 室内二酸化炭素濃度の測定値(%)
C 外気の二酸化炭素濃度(%)
D 在室者全員が1時間に呼出する二酸化炭素量(m3/h)
(1)Q ={ D /(A - B)}× 100
(2)Q ={ D /(A - C)}× 100
(3)Q ={ D /(B - A)}× 100
(4)Q ={ D /(B - C)}× 100
(5)Q ={ D /(C - A)}× 100
作業場内で衛生管理上、入れ替える必要がある空気量を必要換気量といい、1時間の空気量で表します。
必要換気量の計算式は「在室者全員が1時間に呼出する二酸化炭素量」を「室内二酸化炭素基準濃度」から「外気の二酸化炭素濃度」で引いたもので割って求めます。
また、二酸化炭素濃度は、百分率の「%」のほか百万分率の「ppm」で表します。
必要換気量の算出時に、二酸化炭素濃度が%の場合は100を掛けますが、ppmの場合は1,000,000を掛けます。
問12 温熱条件に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)温度感覚を左右する環境要素は、気温、湿度、気流及びふく射(放射)熱である。
(2)実効温度は、人の温熱感に基礎を置いた指標で、気温、湿度及び気流の総合効果を温度目盛りで表したものである。
(3)相対湿度は、空気中の水蒸気量と、その温度における飽和水蒸気量との比を百分率で示したものである。
(4)WBGTは、暑熱環境による熱ストレスの評価に用いられる指標で、日射がある場合は、自然湿球温度、黒球温度及び気温(乾球温度)の測定値から算出される。
(5)算出したWBGTの値が、作業内容に応じて設定されたWBGT基準値未満である場合には、熱中症が発生するリスクが高まる。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。WBGT値がWBGT基準値を超えている場合は、熱中症にかかるリスクが高まっていると判断されます。「未満である場合にリスクが高まる」というのは誤りです。
問13 照明等の視環境に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)照度の単位はルクスで、1ルクスは光度1カンデラの光源から1m離れた所で、その光に直角な面が受ける明るさに相当する。
(2)前方から明かりをとるときは、まぶしさをなくすため、眼と光源を結ぶ線と視線が作る角度は、おおむね30°以上になるようにする。
(3)全般照明と局部照明を併用する場合、全般照明による照度は、局部照明による照度の15分の1以下になるようにしている。
(4)室内の彩色で、目の高さ以下の壁や床には、まぶしさを防ぐため濁色を用いるようにする。
(5)高齢者は、若年者に比較して、一般に、高い照度が必要であるが、水晶体の混濁により、まぶしさを感じやすくなっている場合もあるので、注意が必要である。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。全般照明と局部照明を併用する場合、全般照明による照度は、局部照明による照度の10分の1以上になるようにします。「15分の1以下」とするのは誤りです。
全般照明と局部照明のバランスは、全般照明が局部照明の5分の1程度が適切とされています。
問14 厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づくメンタルヘルスケアの実施に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)「心の健康づくり計画」の策定に当たっては、衛生委員会又は安全衛生委員会において十分調査審議を行う。
(2)「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」及び「事業場外資源によるケア」の四つのケアを継続的かつ計画的に行う。
(3)メンタルヘルスケアを推進するに当たって、労働者の個人情報を主治医等の医療職や家族から取得する際には、あらかじめこれらの情報を取得する目的を労働者に明らかにして承諾を得るとともに、これらの情報は労働者本人から提出を受けることが望ましい。
(4)労働者の心の健康は、職場配置、人事異動、職場の組織等の要因によって影響を受ける可能性があるため、人事労務管理部門と連携するようにする。
(5)プライバシー保護の観点から、衛生委員会や安全衛生委員会において、ストレスチェック制度に関する調査審議とメンタルヘルスケアに関する調査審議を関連付けて行うことは避ける。
(1)(2)(3)(4)は適切である。
(5)は適切でない。ストレスチェック制度とメンタルヘルスケアは、密接に関係するため、それぞれの調査審議は、衛生委員会等において関連付けて行うことが望ましいとされています。「関連付けて行うことは避ける」というのは誤りです。
問15 労働者の健康保持増進のために行う健康測定における運動機能検査の項目とその測定種目との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
(1)筋力 ……………… 握力
(2)柔軟性 …………… 座位体前屈
(3)筋持久力 ………… 上体起こし
(4)敏しょう性 ……… 踏み台昇降
(5)全身持久性 ……… 最大酸素摂取量
(1)(2)(3)(5)は正しい。運動機能検査の項目として、筋力は握力、筋持久力は上体おこし、柔軟性は座位体前屈、敏しょう性は全身反応時間、平衡性は閉眼片足立ち、全身持久性は(間接法による)最大酸素摂取量などがあります。
(4)は誤り。敏しょう性の測定は、全身反応時間で行います。なお、踏み台昇降では、全身持久性を測定できます。
問16 1,000人を対象としたある疾病のスクリーニング検査の結果と精密検査結果によるその疾病の有無は下表のとおりであった。このスクリーニング検査の偽陽性率及び偽陰性率の近似値の組合せとして、適切なものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、偽陽性率とは、疾病無しの者を陽性と判定する率をいい、偽陰性率とは、疾病有りの者を陰性と判定する率をいうものとする。
[A]偽陽性率(%) [B]偽陰性率(%)
(1)[A]20.0 [B]0.5
(2)[A]20.5 [B]20.0
(3)[A]22.0 [B]25.0
(4)[A]25.8 [B]0.5
(5)[A]28.2 [B]20.0
答え(2)
下の表(四分表)は、ある検査で、あるスクリーニングレベルを設定したときの検査法の有効性の指標を表すのに用います。
偽陽性率と偽陰性率の指標の計算は次の通り行います。
・偽陽性率(%)=偽陽性/(偽陽性+真陰性)×100
・偽陰性率(%)=偽陰性/(真陽性+偽陰性)×100
四分表の値を代入して、それぞれ計算しましょう。
偽陽性率(%)=200/(200+775)×100
≒20.5
偽陰性率(%)=5/(20+5)×100
=20.0
したがって、偽陽性率は20.5%、偽陰性率は20.0%が正解です。
問17 脳血管障害及び虚血性心疾患に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)脳血管障害は、脳の血管の病変が原因で生じ、出血性病変、虚血性病変などに分類される。
(2)出血性の脳血管障害は、脳表面のくも膜下腔(くう)に出血するくも膜下出血、脳実質内に出血する脳出血などに分類される。
(3)くも膜下出血は、通常、脳動脈瘤(りゅう)が破れて数日後に発症し、激しい頭痛を伴う。
(4)虚血性心疾患は、心筋の一部分に可逆的な虚血が起こる狭心症と、不可逆的な心筋壊(え)死が起こる心筋梗塞とに大別される。
(5)心筋梗塞では、突然激しい胸痛が起こり、「締め付けられるように痛い」、「胸が苦しい」などの症状が、1時間以上続くこともある。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。くも膜下出血は脳動脈瘤が破れた直後に発症し、数日後ではなく即時に激しい頭痛を伴います。
問18 骨折に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)単純骨折とは、骨にひびが入った状態をいう。
(2)複雑骨折とは、骨が多数の骨片に破砕された状態をいう。
(3)不完全骨折では、骨折端どうしが擦れ合う軋轢(あつれき)音や変形などが認められる。
(4)脊髄損傷が疑われる場合は、動かさないことを原則とするが、やむを得ず搬送する場合は、負傷者に振動を与えないようにするため、柔らかいマットに乗せる。
(5)骨折に対する処置として、副子を手や足に当てるときは、骨折部分の上下の関節まで固定できる長さで、かつ、幅の広いものを用いる。
(1)は誤り。骨にひびの入った状態を不完全骨折といい、骨が完全に折れている状態を完全骨折といいます。
(2)は誤り。複雑骨折とは、骨折とともに皮膚、皮下組織などが損傷し骨が外に出ている状態をいいます。
(3)は誤り。完全骨折では、骨折端どうしが擦れ合い、動かすとギシギシという軋轢音、変形などが認められます。
(4)は誤り。脊髄損傷が疑われる場合は、骨折部にズレがないように、傷病者を硬い板の上に乗せて搬送します。
(5)は正しい。副子の当て方として、骨折部の上下関節まで固定できるものが適切です。
問19 ノロウイルスによる食中毒に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)食品に付着したウイルスが食品中で増殖し、ウイルスが産生した毒素により発症する。
(2)ウイルスの感染性は、長時間煮沸しても失われない。
(3)潜伏期間は、1~2日である。
(4)発生時期は、夏季が多い。
(5)症状は、筋肉の麻痺(ひ)などの神経症状が特徴である。
(1)は誤り。ノロウイルスは食品などから経口摂取され、人間の小腸で増殖して急性胃腸炎が生じます。
(2)は誤り。しっかりと加熱した食品では、ノロウイルスは不活性化するので感染性を失います。
(3)は正しい。ノロウイルスの潜伏期間は24~48時間なので、1~2日が正しいです。
(4)は誤り。冬季に集団食中毒として起こることが多いです。
(5)は誤り。吐き気、嘔吐、下痢が主症状です。神経症状はみられません。
問20 BMIに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)BMIは肥満や低体重(痩せ)の判定に用いられる指数で、この数値が大きいほど肥満の傾向があり、小さいほど痩せの傾向がある。
(2)BMIを算出するには、腹囲の値が必要である。
(3)BMIを算出するには、体脂肪率の値が必要である。
(4)BMIは、内臓脂肪の重量と直線的な比例関係にある。
(5)BMIによる肥満度の判定基準には、男性の方が女性より大きな数値が用いられる。
(1)は正しい。BMIは体重と身長を用いた肥満度の指標です。
(2)は誤り。腹囲の値は用いません。
(3)は誤り。体脂肪率の値は用いません。
(4)は誤り。内臓脂肪の重量を表わすものではありません。
(5)は誤り。男女とも同じ判定基準です。
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