衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2018年4月)
ここでは、2018年(平成30年)4月公表の過去問のうち「労働衛生:有害(有害業務に係るもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、特例第1種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、第2種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2018年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2018年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2018年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2018年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2018年4月)
問11 労働衛生対策を進めていくに当たっては、作業管理、作業環境管理及び健康管理が必要であるが、次のAからEの対策例について、作業管理に該当するものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 振動工具の取扱い業務において、その振動工具の周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値に応じた振動ばく露時間の制限を行う。
B 有機溶剤業務を行う作業場所に設置した局所排気装置のフード付近の吸い込み気流の風速を測定する。
C 強烈な騒音を発する場所における作業において、その作業の性質や騒音の性状に応じた耳栓や耳覆いを使用する。
D 有害な化学物質を取り扱う設備を密閉化する。
E 鉛健康診断の結果、鉛業務に従事することが健康の保持のために適当でないと医師が認めた者を配置転換する。
(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)C,D
(5)D,E
A,Cは、作業管理に該当します。
B,Dは、作業環境管理に該当します。
Eは、健康管理に該当します。
問12 電離放射線に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)電離放射線の被ばくによる影響には、身体的影響と遺伝的影響がある。
(2)電離放射線の被ばくによる身体的影響のうち、白内障は晩発障害に分類される。
(3)電離放射線の被ばくによる発がんと遺伝的影響は、確定的影響に分類される。
(4)電離放射線の被ばく後、数週間程度までに現れる造血器系障害は、急性障害に分類される。
(5)造血器、生殖腺、腸粘膜、皮膚など頻繁に細胞分裂している組織・臓器は、電離放射線の影響を受けやすい。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。電離放射線の被ばくによる発がんと遺伝的影響は、「確率的影響」に分類されます。確定的影響ではありません。
問13 有機溶剤に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)有機溶剤は、水溶性と脂溶性をともに有し、その蒸気は空気より軽い。
(2)有機溶剤は、揮発性が高いため呼吸器から吸収されやすいが、皮膚から吸収されることはない。
(3)トルエンのばく露の生物学的モニタリングの指標としての尿中代謝物は、馬尿酸である。
(4)メタノールによる健康障害として顕著なものは、網膜細動脈瘤(りゅう)を伴う脳血管障害である。
(5)ノルマルヘキサンによる障害として顕著なものには、白血病や皮膚がんがある。
(1)は誤り。有機溶剤は、すべて脂溶性(油に溶けやすい性質)があり、水溶性(水と混じりやすい性質)のものもあります。一般に、その蒸気は空気より「重い」ことで知られています。
(2)は誤り。有機溶剤は、一般に揮発性(蒸発しやすい性質)の高いものが多く、揮発性が高ければ呼吸器から吸収されやすいです。また、皮膚や粘膜から吸収されるものもあります。
(3)は正しい。
(4)は誤り。メタノールによる健康障害として、視力の低下や視野狭窄などの視神経障害がみられます。
(5)は誤り。ノルマルヘキサンによる健康障害では、末梢神経障害などがみられます。
問14 金属などによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)金属水銀中毒では、感情不安定、幻覚などの精神障害、手指の震えなどがみられる。
(2)鉛中毒では、貧血、末梢(しょう)神経障害、腹部の疝(せん)痛などがみられる。
(3)マンガン中毒では、指の骨の溶解、肝臓の血管肉腫などがみられる。
(4)カドミウム中毒では、上気道炎、肺炎、腎障害などがみられる。
(5)砒(ひ)素中毒では、角化症、黒皮症などの皮膚障害、鼻中隔穿(せん)孔などがみられる。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。マンガン中毒では、発語障害のほか、筋肉のこわばりによる歩行障害などのパーキンソン病に似た症状がみられます。
問15 有害物質とその常温・常圧(25℃、1気圧)の空気中における状態との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
ただし、ガスとは、常温・常圧で気体のものをいい、蒸気とは、常温、常圧で液体又は固体の物質が蒸気圧に応じて揮発又は昇華して気体となっているものをいうものとする。
(1)塩化ビニル ・・・・・・・・ ガス
(2)アセトン ・・・・・・・・・ 蒸気
(3)フェノール ・・・・・・・・ 蒸気
(4)ホルムアルデヒド ・・・・・ ガス
(5)二硫化炭素 ・・・・・・・・ ガス
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。二硫化炭素は、レーヨンなど化学繊維の製造工程でも使用される無色の液体で、空気中においては「蒸気」として存在します。
問16 作業環境における有害因子による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)空気中の酸素濃度が15~16%程度の酸素欠乏症では、一般に頭痛、吐き気などの症状がみられる。
(2)熱虚脱は、暑熱環境下で脳へ供給される血液量が増加したとき、代償的に心拍数が減少することにより生じ、発熱、徐脈、めまいなどの症状がみられる。
(3)金属熱は、金属の溶融作業において、高温環境により体温調節中枢が麻痺(ひ)することにより発生し、長期間にわたる発熱、関節痛などの症状がみられる。
(4)凍瘡(そう)は、皮膚組織の凍結壊(え)死を伴うしもやけのことで、0℃以下の寒冷にばく露することによって発生する。
(5)潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた酸素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。
(1)は正しい。
(2)は誤り。熱虚脱は、暑熱環境下で脳へ供給される血液量が「減少」したとき、代償的に心拍数が「増加」することにより生じ、全身倦怠感、脱力感などの症状がみられます。
(3)は誤り。金属熱は、体温調節中枢の麻痺とは関係ありません。金属熱は、亜鉛などの金属の溶解時に発生するヒュームを吸入した後に生じる疾病で、悪寒、発熱、関節痛などの症状がみられます。
(4)は誤り。凍瘡とは、いわゆるしもやけのことで、異常な寒冷にばく露することによって発生する凍傷とは異なります。
(5)は誤り。減圧症では、酸素ではなく、血液中に溶け込んでいた窒素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生します。
問17 化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)一酸化炭素による中毒では、ヘモグロビン合成の障害による貧血、溶血などがみられる。
(2)シアン化水素による中毒では、細胞内での酸素利用の障害による呼吸困難、痙攣(けいれん)などがみられる。
(3)硫化水素による中毒では、意識消失、呼吸麻痺(ひ)などがみられる。
(4)二酸化硫黄による慢性中毒では、慢性気管支炎、歯牙酸蝕(しょく)症などがみられる。
(5)弗(ふっ)化水素による慢性中毒では、骨の硬化、斑状歯などがみられる。
(1)は誤り。一酸化炭素による中毒では、息切れ、頭痛、判断力低下、意識障害などを生じ、最悪の場合、死亡することもあります。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問18 局所排気装置に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)ダクトの形状には円形、角形などがあるが、その断面積を大きくするほど、ダクトの圧力損失が増大する。
(2)フード開口部の周囲にフランジがあると、フランジがないときに比べ、気流の整流作用が増し、大きな排風量が必要となる。
(3)ドラフトチェンバ型フードは、発生源からの飛散速度を利用して捕捉するもので、外付け式フードに分類される。
(4)建築ブース型フードは、作業面を除き周りが覆われているもので、囲い式フードに分類される。
(5)空気清浄装置を付設する局所排気装置を設置する場合、排風機は、一般に、フードに接続した吸引ダクトと空気清浄装置の間に設ける。
(1)は誤り。ダクトの断面積を「小さく」するほど、ダクトの圧力損失が増大します。反対に、ダクトの断面積が大きすぎると搬送速度が不足します。
(2)は誤り。フード開口部の周囲にフランジがあると、フランジがないときに比べ、少ない排風量で所要の効果を上げることができます。
(3)は誤り。ドラフトチェンバ型フードは、囲い式フードに分類されます。
(4)は正しい。
(5)は誤り。排風機は、「吸引ダクト→空気清浄装置→排風機」の順に設置します。排風機に吸引物が入ると、排風機の故障につながることがあります。
問19 厚生労働省の「作業環境測定基準」及び「作業環境評価基準」に基づく作業環境測定及びその結果の評価に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)作業環境測定を実施する場合の単位作業場所は、労働者の作業中の行動範囲、有害物の分布の状況などに基づいて設定する。
(2)管理濃度は、有害物質に係る作業環境の状態を、単位作業場所ごとにその作業環境測定結果から評価するための指標として定められている。
(3)B測定は、単位作業場所中の有害物質の発散源に近接する場所で作業が行われる場合において、空気中の有害物質の最高濃度を知るために行う測定である。
(4)A測定とB測定を併せて行う場合は、A測定の測定値を用いて求めた第一評価値及び第二評価値とB測定の測定値に基づき、単位作業場所を第一管理区分から第三管理区分までのいずれかに区分する。
(5)A測定の第一評価値は、第二評価値より常に小さい。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。第一評価値は、第二評価値より常に「大きく」なります。
問20 呼吸用保護具に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)防じんマスクは作業に適したものを選択し、顔面とマスクの面体の高い密着性が要求される有害性の高い物質を取り扱う作業については、使い捨て式のものを選ぶ。
(2)防じんマスクの面体の接顔部に接顔メリヤスを使用すると、マスクと顔面との密着性が良くなる。
(3)2種類以上の有害ガスが混在している場合には、そのうち最も毒性の強いガス用の防毒マスクを使用する。
(4)防毒マスクの吸収缶が除毒能力を喪失するまでの時間を破過時間という。
(5)一酸化炭素用防毒マスクの吸収缶の色は、黄色である。
(1)は誤り。有害性の高い物質を取り扱う作業については、取替え式のものを選びます。
(2)は誤り。接顔メリヤスとは、綿で出来たカバーで、汗による肌荒れを防ぐためにマスクと顔の接触部分に使用します。ただし、マスクと顔面との密着性が悪くなるので、衛生管理上、防毒マスク、防じんマスクでは使用してはなりません。
(3)は誤り。2種類以上の有害ガスが混在している場合では、そのうち最も毒性の強いガス用の防毒マスクを使用しても、その他の有害ガスにばく露されるため、適切な呼吸用保護具を使用しなければなりません。
(4)は正しい。
(5)は誤り。一酸化炭素用防毒マスクの吸収缶の色は、赤色です。ちなみに、黄色の吸収缶は、硫化水素用です。
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