衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2019年4月)
ここでは、2019年(平成31年)4月公表の過去問のうち「労働衛生:有害(有害業務に係るもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、特例第1種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、第2種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2019年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2019年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2019年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2019年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2019年4月)
問11 次の化学物質のうち、常温・常圧(25℃、1気圧)の空気中で蒸気として存在するものはどれか。
ただし、蒸気とは、常温・常圧で液体又は固体の物質が蒸気圧に応じて揮発又は昇華して気体となっているものをいうものとする。
(1)塩化ビニル
(2)ホルムアルデヒド
(3)二硫化炭素
(4)硫化水素
(5)アンモニア
(1)は誤り。塩化ビニルは、ガスとして存在します。
(2)は誤り。ホルムアルデヒドは、ガスとして存在します。
(3)は正しい。二硫化炭素は、蒸気として存在します。
(4)は誤り。硫化水素は、ガスとして存在します。
(5)は誤り。アンモニアは、ガスとして存在します。
問12 厚生労働省の「作業環境測定基準」及び「作業環境評価基準」に基づく作業環境測定及びその結果の評価に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)管理濃度は、有害物質に関する作業環境の状態を単位作業場所の作業環境測定結果から評価するための指標として設定されたものである。
(2)A測定は、単位作業場所における有害物質の気中濃度の平均的な分布を知るために行う測定である。
(3)B測定は、単位作業場所中の有害物質の発散源に近接する場所で作業が行われる場合において、有害物質の気中濃度の最高値を知るために行う測定である。
(4)A測定の第二評価値は、単位作業場所における気中有害物質の幾何平均濃度の推定値である。
(5)A測定の第二評価値が管理濃度を超えている単位作業場所の管理区分は、B測定の結果に関係なく第三管理区分となる。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。A測定の第二評価値は、単位作業場所における空気中の有害物質の「算術平均濃度」の推定値です。
問13 有機溶剤に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)有機溶剤は、水溶性と脂溶性を共に有し、その蒸気は空気より軽い。
(2)有機溶剤は、揮発性が高いため呼吸器から吸収されやすく、皮膚から吸収されることはない。
(3)トルエンのばく露の生物学的モニタリングの指標としての尿中代謝物は、馬尿酸である。
(4)メタノールによる健康障害として顕著なものは、網膜細動脈瘤(りゅう)を伴う脳血管障害である。
(5)二硫化炭素による中毒では、メトヘモグロビン形成によるチアノーゼがみられる。
(1)は誤り。有機溶剤は、すべて脂溶性(油に溶けやすい性質)があり、水溶性(水と混じりやすい性質)のものもあります。一般に、その蒸気は空気より「重い」ことで知られています。
(2)は誤り。有機溶剤は、一般に揮発性(蒸発しやすい性質)の高いものが多く、揮発性が高ければ呼吸器から吸収されやすいです。また、皮膚や粘膜から吸収されるものもあります。
(3)は正しい。
(4)は誤り。メタノールによる健康障害として、視力の低下や視野狭窄などの視神経障害がみられます。
(5)は誤り。二硫化炭素による中毒では、網膜細動脈瘤を伴う脳血管障害などがみられます。
問14 厚生労働省の「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に基づくリスクアセスメントに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)リスクアセスメントは、化学物質等を原材料等として新規に採用し、又は変更するときのほか、化学物質等を製造し、又は取り扱う業務に係る作業の方法又は手順を新規に採用し、又は変更するときなどに実施する。
(2)化学物質等による危険性又は有害性の特定は、化学物質等について、リスクアセスメント等の対象となる業務を洗い出した上で、国連勧告の「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)」等に示されている危険性又は有害性の分類に則して行う。
(3)健康障害に係るリスクの見積りは、「化学物質等により当該労働者の健康障害を生ずるおそれの程度(発生可能性)」及び「当該健康障害の程度(重篤度)」を考慮して行う方法がある。
(4)化学物質等による健康障害に係るリスクについては、化学物質等への労働者のばく露濃度を測定し、測定結果を厚生労働省の「作業環境評価基準」に示されている「管理濃度」と比較することにより見積もる方法が確実性が高い。
(5)リスクアセスメントの実施に当たっては、化学物質等に係る安全データシート、作業標準、作業手順書、作業環境測定結果等の資料を入手し、その情報を活用する。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。このような方法は規定されていません。
健康障害に係るリスクの見積りについては、対象の業務について作業環境測定等により測定した作業場所における化学物質等の気中濃度等を、当該化学物質等のばく露限界(日本産業衛生学会が定めた許容濃度)と比較する方法があります。
問15 粉じんによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)じん肺は、粉じんを吸入することによって肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病である。
(2)じん肺は、ある程度進行すると、粉じんへのばく露を中止しても肺に生じた病変は治らず、更に進行することがある。
(3)鉱物性粉じんに含まれる遊離けい酸は、石灰化を伴う胸膜の肥厚である胸膜中皮腫を生じさせるという特徴がある。
(4)アルミニウムを含む粉じんや炭素を含む粉じんも、じん肺を起こすことがある。
(5)じん肺は、続発性気管支炎や肺結核を合併することがある。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。「石綿粉じん」は、胸膜に肥厚な石灰化を生じ、また、肺がんや胸膜中皮腫という悪性腫瘍を起こすおそれがあります。
問16 作業環境における有害因子による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)電離放射線による中枢神経系障害は、確率的影響に分類され、被ばく線量がしきい値を超えると、発生率及び重症度が線量に対応して増加する。
(2)熱けいれんは、高温環境下での労働において、皮膚の血管に血液がたまり、脳への血液の流れが少なくなることにより発生し、めまいや失神などの症状がみられる。
(3)金属熱は、金属の溶融作業などで亜鉛や銅のヒュームを吸入したときに発生し、悪寒、発熱、関節痛などの症状がみられる。
(4)凍瘡(そう)は、皮膚組織の凍結壊(え)死を伴うしもやけのことで、0℃以下の寒冷にばく露することによって発生する。
(5)潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた酸素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。
(1)は誤り。電離放射線による中枢神経系障害は、「確定的影響」に分類されます。
(2)は誤り。熱けいれんは、高温下の作業で、多量の発汗により体内の水分と塩分が失われたところへ水分だけが補給されたとき、体内の塩分濃度が低下することにより発生し、筋肉痙攣がみられます。
(3)は正しい。
(4)は誤り。凍瘡とは、しもやけのことで、異常な寒冷にばく露することによって発生する凍傷とは異なり、日常生活内での軽度の寒冷と湿気により発生します。
(5)は誤り。減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた「窒素」が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生します。
問17 化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)無機水銀による健康障害では、腎障害などがみられる。
(2)ノルマルヘキサンによる健康障害では、末梢(しょう)神経障害などがみられる。
(3)N,N-ジメチルホルムアミドによる健康障害では、頭痛、肝機能障害などがみられる。
(4)弗(ふっ)化水素による中毒では、脳神経細胞が侵され、幻覚、錯乱などの精神障害などがみられる。
(5)ベンゼンによる健康障害では、長期間のばく露によって造血器障害が現れ、再生不良性貧血を生じる。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。弗化水素による中毒・障害では、骨の硬化、斑状歯、歯牙酸蝕症、肺炎、肺水腫、腎障害などがみられます。
問18 化学物質と、それにより発症するおそれのある主たるがんとの組合せとして、正しいものは次のうちどれか。
(1)塩化ビニル …………………… 肝血管肉腫
(2)ベンジジン …………………… 胃がん
(3)ベータ-ナフチルアミン …… 肺がん
(4)コールタール ………………… 白血病
(5)クロム酸 ……………………… 皮膚がん
(1)は正しい。
(2)は誤り。ベンジジンは、膀胱がんを発症させます。
(3)は誤り。ベータ-ナフチルアミンは、膀胱がんを発症させます。
(4)は誤り。コールタールは、肺がんや皮膚がんを発症させます。
(5)は誤り。クロム酸は、肺がんや上気道がんを発症させます。
問19 局所排気装置に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)ダクトの形状には円形、角形などがあり、その断面積を大きくするほど、ダクトの圧力損失が増大する。
(2)フード開口部の周囲にフランジがあると、フランジがないときに比べ、気流の整流作用が増すので、大きな排風量が必要となる。
(3)ドラフトチェンバ型フードは、発生源からの飛散速度を利用して捕捉するもので、外付け式フードに分類される。
(4)建築ブース型フードは、作業面を除き周りが覆われているもので、外付け式フードに分類される。
(5)ダクトは、曲がり部分をできるだけ少なくするように配管し、主ダクトと枝ダクトとの合流角度は45°を超えないようにする。
(1)は誤り。ダクトの断面積を「小さく」するほど、ダクトの圧力損失が増大します。反対に、ダクトの断面積が大きすぎると搬送速度が不足します。
(2)は誤り。フード開口部の周囲にフランジがあると、フランジがないときに比べ、少ない排風量で所要の効果を上げることができます。
(3)は誤り。ドラフトチェンバ型フードは、囲い式フードに分類されます。
(4)は誤り。建築ブース型フードは、囲い式フードに分類されます。
(5)は正しい。
問20 呼吸用保護具に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)有機ガス用防毒マスクの吸収缶の色は黒色であり、シアン化水素用防毒マスクの吸収缶の色は青色である。
(2)ガス又は蒸気状の有害物質が粉じんと混在している作業環境中で防毒マスクを使用するときは、防じん機能を有する防毒マスクを選択する。
(3)酸素濃度18%未満の場所で使用できる呼吸用保護具には、送気マスク、空気呼吸器のほか、電動ファン付き呼吸用保護具がある。
(4)送気マスクは、清浄な空気をパイプ、ホースなどにより作業者に供給する呼吸用保護具である。
(5)空気呼吸器は、ボンベに充てんされた清浄空気を作業者に供給する自給式呼吸器である。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。ろ過式保護具である防じんマスク、電動ファン付き呼吸用保護具および防毒マスクは、いずれも酸素濃度が18%未満の場所では使用してはなりません。
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