衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2021年10月)
ここでは、2021年(令和3年)10月公表の過去問のうち「労働衛生:有害(有害業務に係るもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、特例第1種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、第2種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2021年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2021年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2021年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2021年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2021年10月)
問11 労働衛生対策を進めるに当たっては、作業管理、作業環境管理及び健康管理が必要であるが、次のAからEの対策例について、作業管理に該当するものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 振動工具の取扱い業務において、その振動工具の周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値に応じた振動ばく露時間の制限を行う。
B 有機溶剤業務を行う作業場所に設置した局所排気装置のフード付近の吸い込み気流の風速を測定する。
C 強烈な騒音を発する場所における作業において、その作業の性質や騒音の性状に応じた耳栓や耳覆いを使用させる。
D 有害な化学物質を取り扱う設備を密閉化する。
E 鉛健康診断の結果、鉛業務に従事することが健康の保持のために適当でないと医師が認めた者を配置転換する。
(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)C,D
(5)D,E
A,Cは、作業管理に該当します。
B,Dは、作業環境管理に該当します。
Eは、健康管理に該当します。
問12 次の化学物質のうち、常温・常圧(25℃、1気圧)の空気中で蒸気として存在するものはどれか。
ただし、蒸気とは、常温・常圧で液体又は固体の物質が蒸気圧に応じて揮発又は昇華して気体となっているものをいうものとする。
(1)塩化ビニル
(2)ホルムアルデヒド
(3)二硫化炭素
(4)二酸化硫黄
(5)アンモニア
(1)は誤り。塩化ビニルは、ガスとして存在します。
(2)は誤り。ホルムアルデヒドは、ガスとして存在します。
(3)は正しい。二硫化炭素は、レーヨンなど化学繊維の製造工程でも使用される無色の液体で、空気中においては蒸気として存在します。
(4)は誤り。二酸化硫黄は、ガスとして存在します。
(5)は誤り。アンモニアは、ガスとして存在します。
問13 作業環境における有害要因による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)電離放射線による中枢神経系障害は、確率的影響に分類され、被ばく線量がしきい値を超えると発生率及び重症度が線量の増加に応じて増加する。
(2)金属熱は、鉄、アルミニウムなどの金属を溶融する作業などに長時間従事した際に、高温により体温調節機能が障害を受けたことにより発生する。
(3)潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた酸素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。
(4)振動障害は、チェーンソーなどの振動工具によって生じる障害で、手のしびれなどの末梢(しょう)神経障害やレイノー現象などの末梢循環障害がみられる。
(5)凍瘡(そう)は、皮膚組織の凍結壊(え)死を伴うしもやけのことで、0℃以下の寒冷にばく露することによって発生する。
(1)は誤り。電離放射線による中枢神経系障害は、確定的影響に分類され、被ばく線量がしきい値を超えると発生率及び重篤度が線量の増加に応じて増加します。
(2)は誤り。金属熱は、金属の溶融作業などで亜鉛、銅などの金属の酸化物のヒュームを吸入することにより発生し、悪寒、発熱、関節痛などの症状がみられます。
(3)は誤り。減圧症は、潜函作業者、潜水作業者などに発症するもので、高圧下作業からの減圧に伴い、血液中や組織中に溶け込んでいた窒素の気泡化が関与して発生し、皮膚のかゆみ、関節痛、神経の麻痺などの症状がみられます。
(4)は正しい。
(5)は誤り。凍瘡とは、しもやけのことで、異常な寒冷にばく露することによって発生する凍傷とは異なり、日常生活内での軽度の寒冷と湿気により発生します。
問14 金属による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)カドミウム中毒では、上気道炎、肺炎、腎機能障害などがみられる。
(2)鉛中毒では、貧血、末梢(しょう)神経障害、腹部の疝(せん)痛などがみられる。
(3)マンガン中毒では、筋のこわばり、震え、歩行困難などのパーキンソン病に似た症状がみられる。
(4)ベリリウム中毒では、溶血性貧血、尿の赤色化などの症状がみられる。
(5)金属水銀中毒では、感情不安定、幻覚などの精神障害や手指の震えなどの症状・障害がみられる。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。ベリリウムでは、触性皮膚炎、肺炎、ベリリウム肺などの症状がみられます。
問15 厚生労働省の「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」において示されている化学物質等による疾病に係るリスクを見積もる方法として、適切でないものは次のうちどれか。
(1)発生可能性及び重篤度を相対的に尺度化し、それらを縦軸と横軸として、あらかじめ発生可能性及び重篤度に応じてリスクが割り付けられた表を使用する方法
(2)取り扱う化学物質等の年間の取扱量及び作業時間を一定の尺度によりそれぞれ数値化し、それらを加算又は乗算等する方法
(3)発生可能性及び重篤度を段階的に分岐していく方法
(4)ILOの化学物質リスク簡易評価法(コントロール・バンディング)を用いる方法
(5)対象の化学物質等への労働者のばく露の程度及び当該化学物質等による有害性を相対的に尺度化し、それらを縦軸と横軸とし、あらかじめばく露の程度及び有害性の程度に応じてリスクが割り付けられた表を使用する方法
(1)(3)(4)(5)は適切。
(2)は不適切。このような方法は規定されていません。選択肢とよく似た方法として、発生可能性及び重篤度を一定の尺度によりそれぞれ数値化し、それらを加算又は乗算等してリスクを見積もる方法があります。
問16 作業環境における騒音及びそれによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)音圧レベルは、その音圧と、通常、人間が聴くことができる最も小さな音圧(20μPa)との比の常用対数を20倍して求められ、その単位はデシベル(dB)で表される。
(2)等価騒音レベルは、単位時間(1分間)における音圧レベルを10秒間ごとに平均化した幾何平均値で、変動する騒音レベルの平均値として表した値である。
(3)騒音レベルの測定は、通常、騒音計の周波数重み付け特性Aで行う。
(4)騒音性難聴の初期に認められる4,000Hz付近を中心とする聴力低下の型をC5dipという。
(5)騒音は、自律神経系や内分泌系へも影響を与え、交感神経の活動の亢(こう)進や副腎皮質ホルモンの分泌の増加が認められることがある。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。等価騒音レベルは、時間的に変動する騒音レベルのエネルギー的な平均値を表す量です。
問17 電離放射線などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)電離放射線には、電磁波と粒子線がある。
(2)エックス線は、通常、エックス線装置を用いて発生させる人工の電離放射線であるが、放射性物質から放出されるガンマ線と同様に電磁波である。
(3)エックス線は、紫外線より波長の長い電磁波である。
(4)電離放射線の被ばくによる白内障は、晩発障害に分類され、被ばく後、半年~30年後に現れることが多い。
(5)電離放射線を放出してほかの元素に変わる元素を放射性同位元素(ラジオアイソトープ)という。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。エックス線は、紫外線より波長の短い電磁波です。
問18 厚生労働省の「作業環境測定基準」及び「作業環境評価基準」に基づく作業環境測定及びその結果の評価に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)管理濃度は、有害物質に関する作業環境の状態を単位作業場所の作業環境測定結果から評価するための指標として設定されたものである。
(2)原材料を反応槽へ投入する場合など、間欠的に有害物質の発散を伴う作業による気中有害物質の最高濃度は、A測定の結果により評価される。
(3)単位作業場所における気中有害物質濃度の平均的な分布は、B測定の結果により評価される。
(4)A測定の第二評価値及びB測定の測定値がいずれも管理濃度に満たない単位作業場所は、第一管理区分になる。
(5)B測定の測定値が管理濃度を超えている単位作業場所は、A測定の結果に関係なく第三管理区分に区分される。
(1)は正しい。
(2)は誤り。原材料を反応槽へ投入する場合など、間欠的に有害物質の発散を伴う作業による気中有害物質の最高濃度は、B測定の結果により評価されます。
(3)は誤り。単位作業場所における気中有害物質濃度の平均的な分布は、A測定の結果により評価されます。
(4)は誤り。A測定の第一評価値およびB測定の測定値がいずれも管理濃度に満たない場合は、第一管理区分となります。
(5)は誤り。B測定の測定値が管理濃度の1.5倍を超えている場合は、A測定の結果に関係なく第三管理区分となります。
問19 特殊健康診断に関する次の文中の[ ]内に入れるAからCの語句の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「特殊健康診断において有害物の体内摂取量を把握する検査として、生物学的モニタリングがあり、トルエンについては、尿中の[ A ]を測定し、[ B ]については、[ C ]中のデルタアミノレブリン酸を測定する。」
(1)A:馬尿酸 B:鉛 C:尿
(2)A:馬尿酸 B:鉛 C:血液
(3)A:マンデル酸 B:鉛 C:尿
(4)A:マンデル酸 B:水銀 C:尿
(5)A:マンデル酸 B:水銀 C:血液
答え(1)
「特殊健康診断において有害物の体内摂取量を把握する検査として、生物学的モニタリングがあり、トルエンについては尿中の[馬尿酸]を測定し、[鉛]については、[尿]中のデルタアミノレブリン酸を測定する。」
▼「特殊健康診断」について法改正がありました。
例えば、特化則に規定されるスチレンの検査項目は、下記の通り改正されています。
【改正前】尿中のマンデル酸の量の測定
【改正後】尿中のマンデル酸及びフェニルグリオキシル酸の総量の測定
施行日は令和2年7月1日です。
また、特化則以外にも、有機則、鉛則、四アルキル則についても改正されています。
各規則が制定されてから40年以上が経ち、健康障害に関する事情が変わってきたため、大幅に変更されました。
施行日以降は、新基準での解答が求められますのでご注意ください。
【参考】化学物質取扱業務従事者に係る特殊健康診断の項目を見直しました(令和2年7月1日 施行)
問20 呼吸用保護具に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)防毒マスクの吸収缶の色は、一酸化炭素用は黒色で、有機ガス用は赤色である。
(2)高濃度の有害ガスに対しては、防毒マスクではなく、送気マスクか自給式呼吸器を使用する。
(3)型式検定合格標章のある防じんマスクでも、ヒュームのような微細な粒子に対して使用してはならない。
(4)防じんマスクの手入れの際、ろ過材に付着した粉じんは圧縮空気で吹き飛ばすか、ろ過材を強くたたいて払い落として除去する。
(5)防じんマスクは作業に適したものを選択し、顔面とマスクの面体の高い密着性が要求される有害性の高い物質を取り扱う作業については、使い捨て式のものを選ぶ。
(1)は誤り。吸収缶の色は、一酸化炭素用は赤色で、有機ガス用は黒色である。
(2)は正しい。
(3)は誤り。型式検定合格標章のある防じんマスクであれば、ヒュームに対して有効です。なお、ヒュームとは、金属蒸気などが空気中で凝固し、固体の微粒子となって空気中に浮遊しているものをいいます。
(4)は誤り。このような手入れの方法では、ろ過材を破損させるおそれがあります。防じんマスクの手入れは、水洗できるものは水洗し、できないものは湿らせた布などで粉じんをふき取りましょう。
(5)は誤り。防じんマスクは作業に適したものを選択し、顔面とマスクの面体の高い密着性が要求される有害性の高い物質を取り扱う作業については、取替え式のものを選びます。
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