衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2023年10月)
ここでは、2023年(令和5年)10月公表の過去問のうち「労働衛生:有害(有害業務に係るもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、特例第1種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、第2種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2023年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2023年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2023年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2023年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2023年10月)
問11 化学物質とその常温・常圧(25℃、1気圧)での空気中における状態との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
ただし、ガスとは、常温・常圧で気体のものをいい、蒸気とは、常温・常圧で液体又は固体の物質が蒸気圧に応じて揮発又は昇華して気体となっているものをいうものとする。
(1)アクリロニトリル ……………………… ガス
(2)アセトン ………………………………… 蒸気
(3)アンモニア ……………………………… ガス
(4)ホルムアルデヒド ……………………… ガス
(5)硫酸ジメチル …………………………… 蒸気
(1)は誤り。アクリロニトリルは、常温・常圧(25℃、1気圧)で液体です。したがって、蒸気が正しいです。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問12 労働衛生対策を進めていくに当たっては、作業環境管理、作業管理及び健康管理が必要であるが、次のAからEの対策例について、作業管理に該当するものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 座位での情報機器作業における作業姿勢は、椅子に深く腰をかけて背もたれに背を十分あて、履き物の足裏全体が床に接した姿勢を基本とする。
B 有機溶剤業務を行う作業場所に設置した局所排気装置のフード付近の気流の風速を測定する。
C 放射線業務を行う作業場所において、外部放射線による実効線量を算定し、管理区域を設定する。
D ずい道建設工事の掘削作業において、土石又は岩石を湿潤な状態に保つための設備を稼働する。
E 介護作業等腰部に著しい負担のかかる作業に従事する労働者に対し、腰痛予防体操を実施する。
(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)C,D
(5)D,E
Aは作業姿勢の改善なので、作業管理です。
Bは設備の管理(風速測定)なので、作業環境管理です。
Cは立ち入り場所の制限なので、作業管理です。
Dは湿潤化による粉じん発生防止なので、作業環境管理です。
Eは健康障害防止措置なので、健康管理です。
問13 化学物質等による疾病のリスクの低減措置について、法令に定められた措置以外の措置を検討する場合、優先度の最も高いものは次のうちどれか。
(1)化学物質等に係る機械設備等の密閉化
(2)化学物質等に係る機械設備等への局所排気装置の設置
(3)化学反応のプロセス等の運転条件の変更
(4)化学物質等の有害性に応じた有効な保護具の使用
(5)作業手順の改善
業務上の疾病リスクを減らすことができる根本的な対策ほど優先度の高いものになります。
優先度の高い順に、(3)(1)(2)(5)(4)となります。
問14 化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)一酸化炭素による中毒では、ヘモグロビン合成の障害による貧血、溶血などがみられる。
(2)弗(ふっ)化水素による中毒では、脳神経細胞が侵され、幻覚、錯乱などの精神障害がみられる。
(3)シアン化水素による中毒では、細胞内の酸素の利用の障害による呼吸困難、けいれんなどがみられる。
(4)塩化ビニルによる慢性中毒では、慢性気管支炎、歯牙酸蝕(しょく)症などがみられる。
(5)塩素による中毒では、再生不良性貧血、溶血などの造血機能の障害がみられる。
(1)は誤り。一酸化炭素による中毒では、息切れ、頭痛、意識障害などがみられます。
(2)は誤り。弗化水素の高濃度ばく露で、肺炎、肺水腫がみられ、慢性中毒では、骨の硬化、班状歯などがみられます。
(3)は正しい。シアン化水素は、細胞内での呼吸を阻害します。
(4)は誤り。塩化ビニルによる中毒では、肝臓の血管にがんができる肝血管肉腫などがみられます。
(5)は誤り。塩素による中毒では、流涙、咳、肺水腫がみられます。
問15 作業環境における騒音及びそれによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)騒音レベルの測定は、通常、騒音計の周波数重み付け特性Aで行い、その大きさはdBで表す。
(2)騒音性難聴は、初期には気付かないことが多く、また、不可逆的な難聴であるという特徴がある。
(3)騒音は、自律神経系や内分泌系へも影響を与えるため、騒音ばく露により、交感神経の活動の亢(こう)進や副腎皮質ホルモンの分泌の増加が認められることがある。
(4)騒音性難聴では、通常、会話音域より高い音域から聴力低下が始まる。
(5)等価騒音レベルは、中心周波数500Hz、1,000Hz、2,000Hz及び4,000Hzの各オクターブバンドの騒音レベルの平均値で、変動する騒音に対する人間の生理・心理的反応とよく対応する。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。等価騒音レベルは、ある時間範囲について、変動する騒音の騒音レベルをエネルギー的な平均値として表した量です。
中心周波数500Hz、1,000Hz、2,000Hz及び4,000Hzの各オクターブバンドの騒音レベルの平均値ではありません。
問16 金属などによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)ベリリウム中毒では、接触皮膚炎、肺炎などの症状がみられる。
(2)マンガン中毒では、歩行障害、発語障害、筋緊張亢(こう)進などの症状がみられる。
(3)クロム中毒では、低分子蛋(たん)白尿、歯への黄色の色素沈着、視野狭窄(さく)などの症状がみられる。
(4)カドミウム中毒では、上気道炎、肺炎、腎機能障害などがみられる。
(5)金属水銀中毒では、感情不安定、幻覚などの精神障害、手指の震えなどの症状がみられる。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。クロム中毒では、気道からの吸入で、咳、鼻中隔穿孔、上気道がん、肺がんなどが生じます。
問17 レーザー光線に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)レーザー光線は、おおむね1nmから180nmまでの波長域にある。
(2)レーザー光線は、単一波長で位相のそろった人工光線である。
(3)レーザー光線の強い指向性や集束性を利用し、高密度のエネルギーを発生させることができる。
(4)出力パワーが最も弱いクラス1又はクラス2のレーザー光線は、可視光のレーザーポインタとして使用されている。
(5)レーザー光線にさらされるおそれのある業務は、レーザー機器の出力パワーなどに基づくクラス分けに応じた労働衛生上の対策を講じる必要がある。
(1)は誤り。レーザー光線は、おおむね180nmから1mm(紫外線から赤外線)までの波長域にある単一波長で位相のそろった人工光線です。1nm~180nmは主に紫外線域で、誤りです。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問18 作業環境における有害要因による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた酸素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。
(2)熱けいれんは、高温環境下での労働において、皮膚の血管に血液がたまり、脳への血液の流れが少なくなることにより発生し、めまい、失神などの症状がみられる。
(3)全身振動障害では、レイノー現象などの末梢(しょう)循環障害や手指のしびれ感などの末梢(しょう)神経障害がみられ、局所振動障害では、関節痛などの筋骨格系障害がみられる。
(4)低体温症は、低温下の作業で全身が冷やされ、体の中心部の温度が35℃程度以下に低下した状態をいう。
(5)マイクロ波は、赤外線より波長が短い電磁波で、照射部位の組織を加熱する作用がある。
(1)は誤り。減圧症は、血液中に溶け込んでいた窒素が原因です。酸素ではありません。
(2)は誤り。熱けいれんは、筋肉が硬直したりけいれんを起こすことです。めまい、失神などの症状とは異なります。
(3)は誤り。レイノー現象などの末梢循環障害や手指のしびれ感などの末梢神経障害は、局所振動障害でみられる症状です。全身振動障害ではありません。
(4)は正しい。
(5)は誤り。マイクロ波は、赤外線より波長が長い電磁波です。赤外線の波長領域は、780nmから1mmで、マイクロ波の波長領域は、1mmから1mです。
問19 有害物質を発散する屋内作業場の作業環境改善に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)有害物質を取り扱う装置を構造上又は作業上の理由で完全に密閉できない場合は、装置内の圧力を外気圧より高くする。
(2)局所排気装置を設置する場合は、給気量が不足すると排気効果が低下するので、排気量に見合った給気経路を確保する。
(3)有害物質を発散する作業工程では、局所排気装置の設置を密閉化や自動化より優先して検討する。
(4)局所排気装置を設ける場合、ダクトが細すぎると搬送速度が不足し、太すぎると圧力損失が増大することを考慮して、ダクト径を決める。
(5)局所排気装置に設ける空気清浄装置は、一般に、ダクトに接続された排風機を通過した後の空気が通る位置に設置する。
(1)は誤り。このように密閉できない場合は、装置内の圧力を外気圧より低くします。
(2)は正しい。排気量に見合った給気がない場合、排気効果が低下します。
(3)は誤り。密閉化や自動化を、局所排気装置の設置より優先して検討します。
(4)は誤り。ダクトが細すぎると圧力損失が増大し、太すぎると搬送速度が不足することを考慮して、ダクト径を決めます。
(5)は誤り。排風機は、空気清浄装置の後に設けます。
問20 有害化学物質とその生物学的モニタリング指標として用いられる尿中の代謝物との組合せとして、正しいものは次のうちどれか。
(1)トルエン ……………………………… トリクロロ酢酸
(2)キシレン ……………………………… メチル馬尿酸
(3)スチレン ……………………………… 馬尿酸
(4)N,N-ジメチルホルムアミド ……… デルタ-アミノレブリン酸
(5)鉛 ……………………………………… マンデル酸
(1)は誤り。トルエンの尿中代謝物は、馬尿酸です。
(2)は正しい。
(3)は誤り。スチレンの尿中代謝物は、マンデル酸です。
(4)は誤り。N,N-ジメチルホルムアミドの尿中代謝物は、N-メチルホルムアミドです。
(5)は誤り。鉛の尿中代謝物は、デルタ-アミノレブリン酸です。
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