衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2024年4月)
ここでは、2024年(令和6年)4月公表の過去問のうち「労働衛生:有害(有害業務に係るもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、特例第1種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、第2種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2024年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2024年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2024年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2024年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2024年4月)
問11 特殊健康診断に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)有害業務への配置替えの際に行う特殊健康診断には、業務適性の判断と、その後の業務による影響を調べるための基礎資料を得るという目的がある。
(2)特殊健康診断において適切な健診デザインを行うためには、作業内容と有害要因へのばく露状況を把握する必要がある。
(3)情報機器作業に係る健康診断では、眼科学的検査などとともに、上肢及び下肢の運動機能の検査を行う。
(4)マンガンを取り扱う業務に常時従事する労働者に対して行う特殊健康診断の項目として、握力の測定がある。
(5)有機溶剤は、生物学的半減期が短いので、有機溶剤等健康診断における尿中の代謝物の量の検査のための採尿の時刻は、厳重に管理する必要がある。
答え(3)
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。情報機器作業に係る健康診断では、上肢(腕)の運動機能の検査を行いますが、下肢(脚)の運動機能の検査は含まれません。
●情報機器作業に係る健康診断(配置前健康診断の項目)
a 業務歴の調査
b 既往歴の調査
c 自覚症状の有無の調査
(a)眼疲労を主とする視器に関する症状
(b)上肢、頸肩腕部及び腰背部を主とする筋骨格系の症状
(c)ストレスに関する症状
d 眼科学的検査
(a)視力検査
i 遠見視力の検査
ii 近見視力の検査
(b)屈折検査
(c)自覚症状により目の疲労を訴える者に対しては、眼位検査、調節機能検査
e 筋骨格系に関する検査
(a)上肢の運動機能、圧痛点等の検査
(b)その他医師が必要と認める検査
問12 厚生労働省の「作業環境測定基準」及び「作業環境評価基準」に基づく作業環境測定及びその結果の評価に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)管理濃度は、有害物質に関する作業環境の状態を単位作業場所の作業環境測定結果から評価するための指標として設定されたものである。
(2)A測定は、単位作業場所における有害物質の気中濃度の平均的な分布を知るために行う測定である。
(3)B測定は、単位作業場所中の有害物質の発散源に近接する場所で作業が行われる場合において、空気中の有害物質の最高濃度を知るために行う測定である。
(4)A測定の第二評価値が管理濃度を超えている単位作業場所の管理区分は、B測定の結果に関係なく第三管理区分になる。
(5)B測定の測定値が管理濃度を超えている単位作業場所の管理区分は、A測定の結果に関係なく第三管理区分になる。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。B測定の測定値が管理濃度の1.5倍を超えている場合は、A測定の結果に関係なく第三管理区分となります。1.5倍という記述が抜けています。
問13 化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)シアン化水素による中毒では、細胞内での酸素利用の障害による呼吸困難、けいれんなどがみられる。
(2)硫化水素による中毒では、意識消失、呼吸麻痺(ひ)などがみられる。
(3)弗(ふっ)化水素による慢性中毒では、骨の硬化、斑状歯などがみられる。
(4)二酸化硫黄による慢性中毒では、慢性気管支炎、歯牙酸蝕(しょく)症などがみられる。
(5)二酸化窒素による中毒では、末梢(しょう)神経障害などがみられる。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。二酸化窒素による中毒・障害では、歯牙酸蝕症、慢性気管支炎、胃腸障害、粘膜刺激症状、急性肺水腫などがみられます。
問14 電離放射線による健康影響に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)電離放射線の被ばくによる生体への影響には、身体的影響と遺伝的影響がある。
(2)造血器、消化管粘膜など細胞分裂の頻度の高い細胞が多い組織・臓器は、一般に、電離放射線の影響を受けやすい。
(3)電離放射線に被ばく後、30日以内に現れる造血器障害は、急性障害に分類される。
(4)電離放射線の被ばくによる身体的影響のうち、白内障は晩発障害に分類される。
(5)電離放射線の被ばくによる発がんと遺伝的影響は、確率的影響に分類され、症状の程度は線量に依存する。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。発がんと遺伝的影響は、確率的影響に分類されます。また、発生率は線量に依存しますが、症状の程度は線量に依存しません。
問15 有機溶剤に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)有機溶剤の多くは、揮発性が高く、その蒸気は空気より軽い。
(2)有機溶剤は、脂溶性が低いため、脂肪の多い脳などには入りにくい。
(3)メタノールによる障害として顕著なものには、網膜の微細動脈瘤(りゅう)を伴う脳血管障害がある。
(4)二硫化炭素は、動脈硬化を進行させたり、精神障害を生じさせることがある。
(5)N,N-ジメチルホルムアミドによる障害として顕著なものには、視力低下を伴う視神経障害がある。
(1)は誤り。有機溶剤の蒸気は、一般に空気より重いという特徴があります。
(2)は誤り。すべて脂溶性であり、脂肪の多い脳などに入りやすい特徴があります。
(3)は誤り。メタノールによる障害は、主に視力障害が特徴で、脳血管障害は見られません。
(4)は正しい。
(5)は誤り。N,N-ジメチルホルムアミドによる障害として、頭痛、めまい、肝機能障害、消化不良があります。
問16 化学物質とその常温・常圧(25℃、1気圧)での空気中における状態との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
ただし、ガスとは、常温・常圧で気体のものをいい、蒸気とは、常温・常圧で液体又は固体の物質が蒸気圧に応じて揮発又は昇華して気体となっているものをいうものとする。
(1)アセトン ………………………………… ガス
(2)塩素 ……………………………………… ガス
(3)テトラクロロエチレン ………………… 蒸気
(4)ナフタレン ……………………………… 蒸気
(5)フェノール ……………………………… 蒸気
(2)(3)(4)(5)は正しい。
(1)は誤り。アセトンは、有機溶剤で、有機溶剤は常温・常圧ではすべて液体です。よって、蒸気として空気中に発生します。
問17 化学物質と、それにより発症するおそれのある主たるがんとの組合せとして、正しいものは次のうちどれか。
(1)塩化ビニル ………………………………… 肝血管肉腫
(2)ベンジジン ………………………………… 皮膚がん
(3)ビス(クロロメチル)エーテル …………… 膀胱(ぼうこう)がん
(4)クロム酸 …………………………………… 大腸がん
(5)石綿 ………………………………………… 胃がん
(1)は正しい。塩化ビニルは、肝血管肉腫の原因物質として知られています。
(2)は誤り。ベンジジンは、膀胱がんを主に発症するリスクがあります。
(3)は誤り。ビス(クロロメチル)エーテルは、肺がんが主なリスクです。
(4)は誤り。クロム酸は、主に上気道がんや肺がんのリスクを高めます。
(5)は誤り。石綿は、肺がんや胸膜中皮腫のリスクが高まります。
問18 厚生労働省の「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)リスクアセスメントの基本的手順のうち最初に実施するのは、労働者の就業に係る化学物質等による危険性又は有害性を特定することである。
(2)ハザードは、労働災害発生の可能性と負傷又は疾病の重大性(重篤度)の組合せであると定義される。
(3)化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討では、化学物質等の有害性に応じた有効な保護具の使用よりも作業手順の改善、立入禁止等の管理的対策を優先する。
(4)化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討では、法令に定められた事項を除けば、危険性又は有害性のより低い物質への代替等を最優先する。
(5)化学物質等による疾病のリスク低減措置の検討に当たっては、より優先順位の高い措置を実施することにした場合であって、当該措置により十分にリスクが低減される場合には、当該措置よりも優先順位の低い措置の検討は必要ない。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。ハザードは、危険性または有害性と定義されます。
問19 局所排気装置に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)キャノピ型フードは、発生源からの熱による上昇気流を利用して捕捉するもので、レシーバ式フードに分類される。
(2)スロット型フードは、作業面を除き周りが覆われているもので、囲い式フードに分類される。
(3)囲い式フードの排気効果を型別に比較すると、ドラフトチェンバ型は、カバー型より排気効果が大きい。
(4)ダクトの形状には円形、角形などがあり、その断面積を大きくするほど、ダクトの圧力損失が増大する。
(5)空気清浄装置を付設する局所排気装置を設置する場合、排風機は、一般に、フードに接続した吸引ダクトと空気清浄装置の間に設ける。
(1)は正しい。ちなみに、キャノピとは、傘や日除け・雨除けの庇(ひさし)という意味です。
(2)は誤り。スロット型フードは作業面が覆われていない形状で、囲い式には該当しません。
(3)は誤り。カバー型の方が、ドラフトチェンバ型よりも排気効果が大きくなります。
(4)は誤り。ダクトの断面積が大きいほど圧力損失は小さくなります。
(5)は誤り。排風機は空気清浄装置の下流側に設置するのが一般的です。
問20 呼吸用保護具に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)隔離式防毒マスクは、直結式防毒マスクよりも有害ガスの濃度が高い大気中で使用することができる。
(2)ガス又は蒸気状の有害物質が粉じんと混在している作業環境中で防毒マスクを使用するときは、防じん機能を有する防毒マスクを選択する。
(3)防毒マスクの吸収缶の色は、アンモニア用は緑色で、有機ガス用は黒色である。
(4)使い捨て式防じんマスクは、粒径1μm程度のヒュームには使用できない。
(5)防じんマスクは、面体と顔面との間にタオルなどを挟んで着用してはならない。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。粒径1μm程度のヒュームにも適用可能な製品も多いです。
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