衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2019年4月)
ここでは、2019年(平成31年)4月公表の過去問のうち「関係法令:一般(有害業務に係るもの以外のもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2019年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2019年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2019年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2019年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2019年4月)
問1 事業場の衛生管理体制に関する次の記述のうち、法令上、定められていないものはどれか。
ただし、衛生管理者及び産業医の選任の特例はないものとする。
(1)総括安全衛生管理者の選任は、総括安全衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に行わなければならない。
(2)常時1,000人を超え2,000人以下の労働者を使用する事業場では、4人以上の衛生管理者を選任しなければならない。
(3)常時50人以上の労働者を使用するゴルフ場業の事業場では、第二種衛生管理者免許を有する者のうちから衛生管理者を選任することができる。
(4)常時1,000人以上の労働者を使用する事業場では、その事業場に専属の産業医を選任しなければならない。
(5)常時500人を超え1,000人以下の労働者を使用し、そのうち、深夜業を含む業務に常時30人以上の労働者を従事させる事業場では、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければならない。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。このような規定はありません。
常時労働者1,000人を超える事業場、または常時労働者500人を超え、さらに、一定の有害業務に常時労働者30人以上の事業場では、衛生管理者のうち、少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければなりません。
選択肢では「深夜業を含む業務に常時30人以上」とありますが、この業務は専任の衛生管理者を選任しなければならない一定の有害業務に該当しません。
問2 常時使用する労働者数が300人で、次の業種に属する事業場のうち、法令上、総括安全衛生管理者の選任が義務付けられていない業種はどれか。
(1)通信業
(2)各種商品小売業
(3)旅館業
(4)ゴルフ場業
(5)医療業
(1)(2)(3)(4)は、義務付けられている。
(5)は義務付けられていない。医療業では、常時使用する労働者数が1,000人以上の事業場で、総括安全衛生管理者の選任が義務付けられています。
問3 産業医の職務として、法令に定められていない事項は次のうちどれか。
ただし、次のそれぞれの事項のうち医学に関する専門的知識を必要とするものに限るものとする。
(1)衛生教育に関すること。
(2)作業環境の維持管理に関すること。
(3)作業の管理に関すること。
(4)労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。
(5)安全衛生に関する方針の表明に関すること。
(1)(2)(3)(4)は、法令に定められている。
(5)は、法令に定められていない。安全衛生に関する方針の表明に関することは、総括安全衛生管理者が統括管理する業務の一つです。
問4 労働安全衛生規則に基づく医師による雇入時の健康診断に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)医師による健康診断を受けた後、3か月を経過しない者を雇い入れる場合、その健康診断の結果を証明する書面の提出があったときは、その健康診断の項目に相当する雇入時の健康診断の項目を省略することができる。
(2)雇入時の健康診断における聴力の検査は、1,000ヘルツ及び3,000ヘルツの音に係る聴力について行わなければならない。
(3)雇入時の健康診断の項目には、血糖検査が含まれているが、血液中の尿酸濃度の検査は含まれていない。
(4)雇入時の健康診断の結果に基づき、健康診断個人票を作成して、これを5年間保存しなければならない。
(5)雇入時の健康診断の結果については、事業場の規模にかかわらず、所轄労働基準監督署長に報告する必要はない。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。雇入時の健康診断における聴力の検査は、1,000ヘルツ及び「4,000ヘルツ」の音に係る聴力について行わなければなりません。
問5 労働時間の状況等が一定の要件に該当する労働者に対して、法令により実施することとされている医師による面接指導の結果に基づく記録に記載しなければならない事項として定められていないものは、次のうちどれか。
(1)面接指導を行った医師の氏名
(2)面接指導を受けた労働者の氏名
(3)面接指導を受けた労働者の家族の状況
(4)面接指導を受けた労働者の疲労の蓄積の状況
(5)面接指導の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について医師から聴取した意見
(1)(2)(4)(5)は、記載しなければならない。他にも「面接指導の実施年月日」「面接指導を受けた労働者の心身の状況」が、記載事項として定められています。
(3)は、記載事項として定められていない。
問6 雇入れ時の安全衛生教育に関する次の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。
(1)1か月以内の期間を定めて雇用するパートタイム労働者についても、教育を行わなければならない。
(2)教育事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。
(3)金融業の事業場においては、教育事項のうち、「整理、整頓及び清潔の保持に関すること」については省略することができない。
(4)各種商品小売業の事業場においては、教育事項のうち、「作業手順に関すること」については省略することができる。
(5)警備業の事業場においては、教育事項のうち、「作業開始時の点検に関すること」については省略することができる。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。各種商品小売業の事業場においては、「作業手順に関すること」について省略できません。
省略できる業種、できない業種を押さえましょう。
問7 事業場の建築物、施設等に関する措置について、労働安全衛生規則の衛生基準に違反していないものは次のうちどれか。
(1)日常行う清掃のほか、大掃除を、1年以内ごとに1回、定期に、統一的に行っている。
(2)男性20人、女性25人の労働者を常時使用している事業場で、労働者が臥(が)床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けていない。
(3)事業場に附属する食堂の炊事従業員について、専用の便所を設けているほか、一般の労働者と共用の休憩室を備えている。
(4)事業場に附属する食堂の床面積を、食事の際の1人について、0.8m2としている。
(5)労働衛生上の有害業務を有しない事業場において、窓その他の開口部の直接外気に向って開放することができる部分の面積が、常時床面積の25分の1である屋内作業場に、換気設備を設けていない。
(1)は違反している。大掃除は、6か月以内ごとに1回、定期に行わなければなりません。
(2)は違反していない。常時50人以上または常時女性30人以上の労働者を使用するときは、労働者が臥床する(横になる)ことのできる休養室または休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければなりません。
(3)は違反している。炊事従業員専用の休憩室と便所を設けなければなりません。
(4)は違反している。食堂の床面積は、食事の際の1人について、1.0m2以上としなければなりません。
(5)は違反している。室内換気が十分に行われる性能を有する設備を設けたとき以外は、窓、その他の開口部の直接外気に向って開放することができる部分の面積を、常時床面積の1/20以上になるようにしなければなりません。
選択肢では、1/25なので違反です。1/20>1/25なので注意しましょう。
問8 事務室の空気環境の調整に関する次の文中の[ ]内に入れるA及びBの数値の組合せとして、法令上、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「① 空気調和設備又は機械換気設備を設けている場合は、室に供給される空気については、1気圧、温度25℃とした場合の当該空気中に占める二酸化炭素の含有率が100万分の[ A ]以下となるように、当該設備を調整しなければならない。
② ①の設備により室に流入する空気が、特定の労働者に直接、継続して及ばないようにし、かつ、室の気流を[ B ]m/s以下としなければならない。」
(1)[A]1,000 [B]0.3
(2)[A]1,000 [B]0.5
(3)[A]2,000 [B]0.3
(4)[A]2,000 [B]0.5
(5)[A]2,000 [B]1
答え(2)
「① 空気調和設備又は機械換気設備を設けている場合は、室に供給される空気については、1気圧、温度25℃とした場合の当該空気中に占める二酸化炭素の含有率が100万分の[1,000]以下となるように、当該設備を調整しなければならない。
② ①の設備により室に流入する空気が、特定の労働者に直接、継続して及ばないようにし、かつ、室の気流を[0.5]m/s以下としなければならない。」
なお、100万分の1,000を、1,000ppmと表記することもあります。
「ppm(ピーピーエム)」とは、割合を表す単位です。
他に割合を表す単位として「%(パーセント)」が有名ですが、化学物質濃度などの割合を表すときに%だと桁が多くなり、わかりにくくなることがあるため、ppmを用いることがあります。
ちなみに、ppmは、parts per millionの頭文字を取ったもので、100万分の1を意味します。
問9 労働基準法に定める妊産婦に関する次の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。
ただし、労使協定とは、「労働者の過半数で組織する労働組合(その労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)と使用者との書面による協定」をいい、また、管理監督者等とは、「監督又は管理の地位にある者等、労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用除外者」をいう。
(1)時間外・休日労働に関する労使協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出ている場合であっても、妊産婦が請求した場合には、管理監督者等の場合を除き、時間外・休日労働をさせてはならない。
(2)1か月単位の変形労働時間制を採用している場合であっても、妊産婦が請求した場合には、管理監督者等の場合を除き、1週40時間及び1日8時間を超えて労働させてはならない。
(3)1年単位の変形労働時間制を採用している場合であっても、妊産婦が請求した場合には、管理監督者等の場合を除き、1週40時間及び1日8時間を超えて労働させてはならない。
(4)フレックスタイム制を採用している場合であっても、妊産婦が請求した場合には、管理監督者等の場合を除き、フレックスタイム制による労働をさせてはならない。
(5)妊産婦が請求した場合には、管理監督者等の場合であっても、深夜業をさせてはならない。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。フレックスタイム制を採用している場合には、妊産婦であっても、法定労働時間(1週40時間、1日8時間)を超えて労働させることができます。
問10 労働基準法に定める育児時間に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)生後満1年を超え、満2年に達しない生児を育てる女性労働者は、育児時間を請求することができる。
(2)育児時間は、必ずしも有給としなくてもよい。
(3)育児時間は、原則として、1日2回、1回当たり少なくとも30分の時間を請求することができる。
(4)育児時間を請求しない女性労働者に対しては、育児時間を与えなくてもよい。
(5)育児時間は、育児時間を請求することができる女性労働者が請求する時間に与えなければならない。
(1)は誤り。「生後満1年に達しない生児」を育てる女性労働者は、育児時間を請求できます。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
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