衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2014年10月)
ここでは、2014年(平成26年)10月公表の過去問のうち「関係法令:有害(有害業務に係るもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第一種衛生管理者、特例第一種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、第二種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2014年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2014年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2014年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2014年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2014年10月)
問1 ある製造業の事業者の労働者数及び有害業務等従事状況並びに産業医及び衛生管理者の選任の状況は、次の①~③のとおりである。
この事業場の産業医及び衛生管理者の選任についての法令違反の状況に関する(1)~(5)の記述のうち、正しいものはどれか。
① 労働者数及び有害業務等従事状況
常時使用する労働者数は800人であり、このうち、深夜業を含む業務に400人が、多量の低温物体を取り扱う業務に30人が常時従事しているが、他に有害業務に従事している者はいない。
② 産業医の選任の状況
選任している産業医数は1人である。
この産業医は、この事業場に専属の者ではないが、産業医としての法令の要件を満たしている医師である。
③ 衛生管理者の選任の状況
選任している衛生管理者数は3人である。
このうち1人は、この事業場に専属でない労働衛生コンサルタントで、衛生工学衛生管理者免許を有していない。
他の2人は、この事業場に専属で、共に衛生管理者としての業務以外の業務を兼任しており、また、第一種衛生管理者免許を有しているが、衛生工学衛生管理者免許を有していない。
(1)選任している産業医がこの事業場に専属でないことが違反である。
(2)選任している衛生管理者数が少ないことが違反である。
(3)衛生管理者として選任している労働衛生コンサルタントがこの事業場に専属でないことが違反である。
(4)衛生工学衛生管理者免許を有する者のうちから選任した衛生管理者が1人もいないことが違反である。
(5)専任の衛生管理者が1人もいないことが違反である。
答え(5)
この形式の問題では、問題文と選択肢をよく読んで、理論的に選択肢の正誤を見極めていきましょう。それでは解説をご覧ください。
(1)は誤り。次のいずれかの事業場に該当する場合は、専属の産業医が必要になります。
・常時1000人以上の労働者を使用する事業場
・一定の有害業務(深夜業など)に常時500人以上の労働者を使用する事業場
問題文の①の状況を読むと「常時使用する労働者数は800人」とあり、「深夜業を含む業務に400人」とあります。
上記のどちらにも該当しませんので、この事業場の産業医が専属でないことは違反ではありません。
(2)は誤り。衛生管理者の選任数は、常時使用する労働者数(事業場の規模)によって増減します。
問題文の①の状況を読むと「常時使用する労働者数は800人」とあります。
500人を超え1000人以下の事業場では、3人の衛生管理者を選任しなければなりません。
問題文の③の状況を読むと「選任している衛生管理者数は3人」とあるので、衛生管理者の選任数について違反はありません。
(3)は誤り。衛生管理者を2人以上選任する場合で、その中に労働衛生コンサルタントがいる場合には、そのうち1人については事業場に専属の者でなくても構わないことになっています。
問題文の③の状況を読むと「選任している衛生管理者数は3人である。このうち1人は、この事業場に専属でない労働衛生コンサルタント」とあります。
すなわち、3人の衛生管理者の内、1人だけがこの事業場に専属でない労働衛生コンサルタントなので違反ではありません。
(4)は誤り。常時500人を超える労働者を使用する事業場で、特に有害な業務(多量の高熱物体を取り扱う業務など)に常時30人以上の労働者を従事させる事業場では、衛生管理者のうち1人を、衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任することになっています。
問題文の①の状況を読むと「多量の低温物体を取り扱う業務に30人が常時従事しているが、他に有害業務に従事している者はいない。」とあります。
低温物体の取り扱い業務は、衛生工学衛生管理者免許を有する者の選任条件には当てはまりませんので、違反はありません。
(5)は正しい。次のいずれかの事業場に該当する場合は、専任の衛生管理者が必要になります。
・常時1000人を超える労働者を使用する事業場
・常時500人を超える労働者を使用する事業場で、特に有害な業務に常時30人以上の労働者を従事させる事業場
特に有害な業務とは、多量の高熱物体を取り扱う業務、多量の低温物体を取り扱う業務などをいいます。
問題文の①の状況を読むと「多量の低温物体を取り扱う業務に30人が常時従事している」とありますので、専任の衛生管理者が必要になります。
したがって、専任の衛生管理者が1人もいないことは違反になります。
問2 労働安全衛生法に基づく技能講習を修了することによって取得できる資格は、次のうちどれか。
(1)潜水士の資格
(2)高圧室内作業主任者の資格
(3)エックス線作業主任者の資格
(4)石綿作業主任者の資格
(5)ガンマ線透過写其撮影作業主任者の資格
(4)は正しい。石綿作業主任者の資格は、「石綿作業主任者技能講習」を修了することで取得できます。
(1)(2)(3)(5)は誤り。これらは試験を受けて合格することで資格を取得できます。
問3 次のAからDまでの作業について、法令上、作業主任者の選任が義務付けられているものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 飼料の貯蔵のために使用しているサイロの内部における作業
B セメント製造工程においてセメントを袋詰めする作業
C 製造工程において硫酸を用いて行う洗浄の作業
D 水深10 m以上の場所における潜水の作業
(1)A,B
(2)A,C
(3)A,D
(4)B,C
(5)C,D
Aは正しい。この作業は、酸素欠乏危険場所における作業における作業なので、酸素欠乏危険作業主任者の選任が義務付けられています。
Bは誤り。これは粉じん作業ですが、粉じん作業では作業主任者の選任は義務付けられていません。
Cは正しい。この作業は、特定化学物質の取扱い作業なので、特定化学物質作業主任者の選任が義務付けられています。
Dは誤り。これは潜水作業なので、高圧環境下での作業になりますが、作業主任者の選任は義務付けられていません。ただし、潜水者自身は、潜水士の免許を持っていなければなりません。
問4 次の装置のうち、法令上、定期自主検査の実施義務が規定されているものはどれか。
(1)木工用丸のこ盤を使用する屋内の作業場所に設けた局所排気装置
(2)塩酸を使用する屋内の作業場所に設けた局所排気装置
(3)アーク溶接を行う屋内の作業場所に設けた全体換気装置
(4)酢酸エチルを重量の5%を超えて含有する接着剤を製造する工程において、当該接着剤を容器に注入する屋内の作業場所に設けた局所排気装置
(5)アンモニアを使用する屋内の作業場所に設けたプッシュプル型換気装置
(1)は誤り。木材粉じんが発生する作業場所の局所排気装置には、定期自主検査の実施義務が規定されていません。
(2)は誤り。塩酸やアンモニアは特定化学物質の第三類物質です。このような物質を使用する作業場所に設けた局所排気装置などは、定期自主検査の実施義務が規定されていません。
(3)は誤り。全体換気装置は、定期自主検査の実施義務が規定されていません。
(4)は正しい。酢酸エチル(含有量5%超)は、第二種有機溶剤等に該当します。この作業場所に設けた局所排気装置は、定期自主検査の実施義務が規定されています。
(5)は誤り。(2)の解説をご覧ください。
問5 次の作業環境測定を行うとき、法令上、作業環境測定士が測定を実施しなければならないものはどれか。
(1)チッパーによりチップする業務を行い著しい騒音を発する屋内作業場における等価騒音レベルの測定
(2)パルプ液を入れたことのある槽の内部において作業を行う場合の当該作業場における空気中の酸素及び硫化水素の濃度の測定
(3)常時セメントを袋詰めする作業を行う屋内作業場における空気中の粉じん濃度の測定
(4)溶融ガラスからガラス製品を成型する業務を行う屋内作業場における気温、湿度及びふく射熱の測定
(5)炭酸ガス(二酸化炭素)が停滞するおそれのある坑内の作業場における空気中の炭酸ガス濃度の測定
(3)は正しい。空気中の粉じん濃度の測定、空気中の鉛の濃度の測定などは、測定技術が必要になりますので、作業環境測定士が測定を実施しなければなりません。
(1)(2)(4)(5)は誤り。空気中の酸素及び硫化水素の濃度の測定は、酸素欠乏危険作業主任者が測定を行います。その他の騒音や空気環境の測定は、測定知識のある者が行います。
問6 特定化学物質の第一類物質に関する次の記述のうち、法令上、正しいものはどれか。
(1)第一類物質は、「クロム酸及びその塩」を始めとする7種の発がん性の認められた化学物質並びにそれらを一定量以上含有する混合物である。
(2)第一類物質を製造しようとする者は、あらかじめ、物質ごとに、かつ、当該物質を製造するプラントごとに厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
(3)第一類物質を容器に入れ、容器から取り出し、又は反応槽等へ投入する作業を行うときは、発散源を密閉する設備、外付け式フードの局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。
(4)第一類物質を取り扱う屋内作業場についての作業環境測定結果及びその評価の記録を保存すべき期間は3年である。
(5)第一類物質を取り扱う業務に常時従事する労働者に係る特定化学物質健康診断個人票を保存すべき期間は5年である。
(1)は誤り。第一類物質には、下記の7物質が該当します。
①ジクロルベンジジン及びその塩
②アルファ-ナフチルアミン及びその塩
③塩素化ビフェニル
④オルト-トリジン及びその塩
⑤ジアニシジン及びその塩
⑥ベリリウム及びその化合物
⑦ベンゾトリクロリド
(2)は正しい。第一類物質は、製造許可物質です。
(3)は誤り。反応槽等へ投入する作業などを行うときは、その発散源を密閉する設備、『囲い式』フードの局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければなりません。
(4)は誤り。第一類物質の多くは、極めて有害性の高い「特別管理物質」に該当します。これらを取り扱う屋内作業場についての作業環境測定結果及びその評価の記録を保存すべき期間は『30年』と長くなっています。
(5)は誤り。第一類物質の内、特別管理物質を取り扱う業務に常時従事する労働者に係る特定化学物質健康診断個人票を保存すべき期間は『30年』となっています。
問7 有機溶剤中毒予防規則に関する次の紀述のうち、誤っているものはどれか。
ただし、同規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。
(1)有機溶剤含有物とは、有機溶剤と有機溶剤以外の物との混合物で、有機溶剤を当該混合物の重量の10%を超えて含有するものをいう。
(2)第一種有機溶剤等であるトリクロルエチレンを総重量の4%、第二種有機溶剤等であるキシレンを総重量の8%含有し、残りは有機溶剤以外の物から成る混合物は、第二種有機溶剤等に区分される。
(3)有機溶剤等の区分を色分けにより表示するとき、第二種有機溶剤等については、黄色で行わなければならない。
(4)有機溶剤等を入れてあった空容器で有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものについては、密閉するか、又は屋外の一定の場所に集積しておかなければならない。
(5)有機溶剤等を入れたことのあるタンクで有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものの内部における業務に労働者を従事させるときは、当該労働者に送気マスクを使用させなければならない。
(1)は誤り。有機溶剤含有物とは、有機溶剤と有機溶剤以外の物との混合物で、有機溶剤を当該混合物の重量の『5%』を超えて含有するものをいいます。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問8 次の粉じん作業のうち、法令上、特定粉じん作業に該当するものはどれか。
(1)屋内のガラスを製造する工程において、原料を溶解炉に投げ入れる作業
(2)耐火物を用いた炉を解体する作業
(3)屋内において、研ま材を用いて手持式動力工具により金属を研まする箇所における作業
(4)屋内において、セメントを袋詰めする箇所における作業
(5)タンクの内部において、金属をアーク溶接する作業
(4)は正しい。粉じん作業には、通常の「粉じん作業」と「特定粉じん作業」とがあります。
「粉じん作業」よりも、「特定粉じん作業」の方が有害性が高く、屋内において、セメントを袋詰めする箇所における作業は、典型的な特定粉じん作業です。
(1)(2)(3)(5)は誤り。
問9 電離放射線障害防止規則に基づく管理区域に関する次の文中の[ ]内に入れるAからCの語句又は数値の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「① 管理区域とは、外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計が[ A ]間につき[ B ]を超えるおそれのある区域又は放射性物質の表面密度が法令に定める表面汚染に関する限度の10分の1を超えるおそれのある区域をいう。
② ①の外部放射線による実効線量の算定は、[ C ]線量当量によって行う。」
(1)[A]1か月 [B]1.3 mSv [C]70 μm
(2)[A]3か月 [B]1.3 mSv [C]70 μm
(3)[A]3か月 [B]1.3 mSv [C]1 cm
(4)[A]1か月 [B]5 mSv [C]1 cm
(5)[A]3か月 [B]5 mSv [C]70 μm
(3)は正しい。①管理区域は、3月間で1.3 mSvを超える区域と覚えておきましょう。ちなみに、単位のmSvは、ミリシーベルトと読みます。
②外部放射線とは、ガンマ線など身体の外から来る放射線のことです。また、実効線量とは人体への影響を考えた放射線量のことです。この計算には、1 cm線量当量という放射線量を用います。
(1)(2)(4)(5)は誤り。電離放射線障害防止規則に関する問題は、東日本大震災以降よく出題されるようになりましたので、しっかりとポイントを押さえておきましょう。
問10 労働基準法に基づく時間外労働に関する協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出る場合においても、労働時間の延長が1日2時間を超えてはならない業務は次のうちどれか。
(1)給湿を行う紡績又は織布の業務
(2)ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
(3)大部分の労働時間が立作業である業務
(4)病原体によって汚染された物を取り扱う業務
(5)受注、予約等の拘束型のVDT作業の業務
(2)は正しい。強烈な騒音作業場における長時間労働は、聴覚への悪影響が大きく、騒音性難聴になりやすくなることが分かっています。
他にも、異常気圧下における業務、重量物の取扱い等重激なる業務などは労働時間の延長が1日2時間を超えてはならない業務となっています。
(1)(3)(4)(5)は誤り。
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