衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2017年10月)
ここでは、2017年(平成29年)10月公表の過去問のうち「関係法令:有害(有害業務に係るもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、特例第1種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、第2種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2017年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2017年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2017年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2017年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2017年10月)
問1 ある製造業の事業場の労働者数及び有害業務等従事状況並びに産業医及び衛生管理者の選任の状況は、次の①~③のとおりである。
この事業場の産業医及び衛生管理者の選任についての法令違反の状況に関する(1)~(5)の記述のうち、正しいものはどれか。
ただし、産業医及び衛生管理者の選任の特例はないものとする。
① 労働者数及び有害業務等従事状況
常時使用する労働者数は600人であり、このうち、深夜業を含む業務に40人が、多量の低温物体を取り扱う業務に40人が常時従事しているが、他に有害業務に従事している者はいない。
② 産業医の選任の状況
選任している産業医数は1人である。
この産業医は、この事業場に専属の者ではないが、産業医としての法令の要件を満たしている医師である。
③ 衛生管理者の選任の状況
選任している衛生管理者数は3人である。
このうち1人は、この事業場に専属でない労働衛生コンサルタントで、衛生工学衛生管理者免許を有していない。
他の2人は、この事業場に専属で、共に衛生管理者としての業務以外の業務を兼任しており、また、第一種衛生管理者免許を有しているが、衛生工学衛生管理者免許を有していない。
(1)選任している産業医がこの事業場に専属でないことが違反である。
(2)選任している衛生管理者数が少ないことが違反である。
(3)衛生管理者として選任している労働衛生コンサルタントがこの事業場に専属でないことが違反である。
(4)衛生工学衛生管理者免許を有する者のうちから選任した衛生管理者が1人もいないことが違反である。
(5)専任の衛生管理者が1人もいないことが違反である。
(1)は誤り。常時1,000人以上の労働者を使用する事業場、または深夜業を含む業務などに常時500人以上の労働者を従事させる事業場では、産業医は、その事業場に専属の者でなければなりません。問題文では「常時使用する労働者数は600人」「深夜業を含む業務に40人」とありますので、違反ではありません。
(2)は誤り。常時500人を超え1,000人以下の労働者を使用する事業場では、衛生管理者を3人以上選任しなければなりません。問題文では「常時使用する労働者数は600人」「選任している衛生管理者数は3人」とありますので、違反ではありません。
(3)は誤り。衛生管理者を2人以上選任する場合は、そのうち1人だけ、事業場に専属でない労働衛生コンサルタントから衛生管理者を選任することができます。問題文では「1人は、この事業場に専属でない労働衛生コンサルタント」とありますので、違反ではありません。
(4)は誤り。常時労働者500人を超え、さらに、著しく暑熱な場所における業務などの有害業務に常時労働者30人以上の事業場には、衛生管理者のうち1人を、衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任しなければなりません。問題文では「多量の低温物体を取り扱う業務に40人」とありますが、この業務は衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任しなければならない有害業務に該当しませんので違反ではありません。
(5)は正しい。常時労働者1,000人を超える事業場、または常時労働者500人を超え、さらに、多量の低温物体を取り扱う業務などの有害業務に常時労働者30人以上の事業場では、衛生管理者のうち、少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければなりません。問題文では「多量の低温物体を取り扱う業務に40人」とありますので、専任の衛生管理者が1人もいないことが違反です。
問2 次の設備又は装置のうち、法令に基づく定期自主検査の実施頻度が1年以内ごとに1回とされていないものはどれか。
(1)鉛化合物を製造する工程において鉛等の溶融を行う屋内の作業場所に設置した局所排気装置
(2)トルエンを用いて洗浄を行う屋内の作業場所に設置したプッシュプル型換気装置
(3)塩化水素を取り扱う特定化学設備
(4)弗化水素を含有する気体を排出する製造設備の排気筒に設置した排ガス処理装置
(5)セメントを袋詰めする屋内の作業箇所に設置した局所排気装置に設けた除じん装置
(1)(2)(4)(5)の局所排気装置等については、1年以内ごとに1回、定期自主検査を実施しなければなりません。
(3)の特定化学設備またはその附属設備については、2年以内ごとに1回、定期自主検査を実施しなければなりません。
問3 地下室の内部の作業場において、常時、有機溶剤業務を行う場合の措置について、有機溶剤中毒予防規則に違反しているものは次のうちどれか。
ただし、同規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。
(1)第一種有機溶剤等を用いて洗浄作業を行う場所に、局所排気装置を設け有効に稼働させているが、作業者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。
(2)第二種有機溶剤等を用いて払しょく作業を行う場所に、プッシュプル型換気装置を設けブース内の気流の乱れもなく有効に稼働させているが、作業者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。
(3)第三種有機溶剤等を用いて吹付けによる塗装作業を行う場所に、全体換気装置を設け有効に稼働させているが、作業者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。
(4)作業場所に設置した局所排気装置で空気清浄装置を設けていないものの排気口の高さを、屋根から2 mとしている。
(5)第二種有機溶剤等を用いて、つや出し作業を行う場所の見やすい箇所に、有機溶剤等の区分を黄による色分けと色分け以外の方法を併用して表示している。
(1)(2)(4)(5)は違反していない。
(3)は違反している。第三種有機溶剤等を用いて吹付けによる塗装作業を行う場所では、全体換気装置を設けただけでは違反になります。
このような場所では、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置またはプッシュプル型換気装置を設けなければなりません。
問4 労働安全衛生法に基づく技能講習を修了することによって取得できる資格に該当しないものは、次のうちどれか。
(1)特定化学物質作業主任者
(2)有機溶剤作業主任者
(3)石綿作業主任者
(4)酸素欠乏危険作業主任者
(5)高圧室内作業主任者
(1)(2)(3)(4)は、技能講習を修了することによって資格を取得できます。
(5)は、高圧室内作業主任者は、高圧室内作業主任者免許試験に合格した者に与えられます。
なお、こちらの試験では受験資格は不要ですが、合格後の免許申請の際、実務経験を証明する書面が必要となります。
問5 次の有害業務に従事した者のうち、離職の際に又は離職の後に、法令に基づく健康管理手帳の交付対象となるものはどれか。
(1)シアン化ナトリウムを取り扱う業務に10年従事した者
(2)ビス(クロロメチル)エーテルを取り扱う業務に3年以上従事した者
(3)硝酸を取り扱う業務に5年以上従事した者
(4)ベンゼンを取り扱う業務に5年以上従事した者
(5)メタノールを取り扱う業務に10年以上従事した者
(1)(3)(4)(5)は、健康管理手帳の交付対象ではありません。
(2)ビス(クロロメチル)エーテルを取り扱う業務に3年以上従事した者は、健康管理手帳の交付対象です。
有害業務から離れた後も、業務に起因した疾病を早期発見するために、健康管理手帳の交付制度が始まりました。
健康管理手帳の交付を受けたら、指定の医療機関で、年に2回、無料で特定の項目について健康診断を受けることができます。
現在、 ビス(クロロメチル)エーテルは、製造禁止物質ですが、かつては工業で使用されており、その蒸気を吸入することで肺がんを起こすおそれがあります。
問6 次の特定化学物質を製造しようとするとき、労働安全衛生法に基づき、厚生労働大臣の許可を受けなければならないものはどれか。
(1)エチレンオキシド
(2)ベリリウム化合物
(3)オルト-フタロジニトリル
(4)ベータ-プロピオラクトン
(5)砒素化合物
(1)(3)(4)(5)は、製造許可物質に該当しません。
(2)ベリリウム化合物は、製造許可物質です。
ベリリウムは、原子番号4番の銀白色をした金属です。
銅に混ぜて、ベリリウム銅合金として原子力産業や航空宇宙産業など様々な場所で使われています。
ベリリウムの粉じんやヒュームを吸入することで、肺炎、気管支炎、肺がんなどを起こすおそれがあります。
問7 有害業務を行う作業場について、法令に基づき、定期に行わなければならない作業環境測定とその頻度の組合せとして、法令の定めと異なっているものは次のうちどれか。
(1)非密封の放射性物質を取り扱う作業室における空気中の放射性物質の濃度の測定
・・・・・ 6か月以内ごとに1回
(2)チッパーによりチップする業務を行う屋内作業場における等価騒音レベルの測定
・・・・・ 6か月以内ごとに1回
(3)通気設備が設けられている坑内の作業場における通気量の測定
・・・・・ 半月以内ごとに1回
(4)鉛蓄電池の解体工程において鉛等を切断する業務を行う屋内作業場における空気中の鉛の濃度の測定
・・・・・ 1年以内ごとに1回
(5)多量のドライアイスを取り扱う業務を行う屋内作業場における気温及び湿度の測定
・・・・・ 半月以内ごとに1回
(1)は誤り。放射性物質取扱作業室における空気中の放射性物質の濃度の測定は、1か月以内ごとに1回、定期に行わなければなりません。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問8 酸素欠乏症等の防止等に関する次の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。
ただし、空気呼吸器等とは、空気呼吸器、酸素呼吸器又は送気マスクをいう。
(1)第一種酸素欠乏危険作業については、その日の作業開始後速やかに、当該作業場における空気中の酸素の濃度を測定しなければならない。
(2)酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合で、当該作業を行う場所において酸素欠乏等のおそれが生じたときは、直ちに作業を中止し、労働者をその場所から退避させなければならない。
(3)酸素欠乏症等にかかった労働者を酸素欠乏等の場所において救出する作業に労働者を従事させるときは、当該救出作業に従事する労働者に空気呼吸器等を使用させなければならない。
(4)タンクの内部その他通風が不十分な場所において、アルゴン等を使用して行う溶接の作業に労働者を従事させるときは、作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を18%以上に保つように換気し、又は労働者に空気呼吸器等を使用させなければならない。
(5)労働者が酸素欠乏症等にかかったときは、遅滞なく、その旨を当該作業を行う場所を管轄する労働基準監督署長に報告しなければならない。
(1)は誤り。第一種酸素欠乏危険作業を行う場合は、その日の「作業を開始する前」に、その作業場における空気中の酸素濃度を測定しなければなりません。「作業開始後」ではありません。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問9 粉じん障害防止規則に基づく措置に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
ただし、同規則に定める適用除外及び特例はないものとする。
(1)屋内の特定粉じん発生源については、その区分に応じて密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置若しくは湿潤な状態に保つための設備の設置又はこれらと同等以上の措置を講じなければならない。
(2)常時特定粉じん作業を行う屋内作業場については、6か月以内ごとに1回、定期に、空気中の粉じんの濃度の測定を行い、測定結果等を記録して、これを5年間保存しなければならない。
(3)特定粉じん発生源の局所排気装置に、法令に基づき設ける除じん装置は、ヒュームとヒューム以外の粉じんとに応じて、除じん方式が定められている。
(4)特定粉じん作業以外の粉じん作業を行う屋内作業場については、全体換気装置による換気の実施又はこれと同等以上の措置を講じなければならない。
(5)粉じん作業を行う屋内の作業場所については、毎日1回以上、清掃を行わなければならない。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。常時特定粉じん作業を行う屋内作業場については、6か月以内ごとに1回、定期に、空気中の粉じんの濃度の測定を行い、測定結果等を記録して、これを「7年間」保存しなければなりません。
問10 労働基準法に基づき、満18歳に満たない者を就かせてはならない業務に該当しないものは次のうちどれか。
(1)さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務
(2)10kgの重量物を断続的に取り扱う業務
(3)多量の高熱物体を取り扱う業務
(4)著しく寒冷な場所における業務
(5)強烈な騒音を発する場所における業務
(1)(3)(4)(5)は該当する。
(2)は該当しない。満18歳に満たない者を就かせてはならない重量物を取り扱う業務については、次のように定められています。
●満16歳未満
[女]断続作業12kg、継続作業8kg
[男]断続作業15kg、継続作業10kg
●満16歳以上 満18歳未満
[女]断続作業25kg、継続作業15kg
[男]断続作業30kg、継続作業20kg
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