衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2023年10月)
ここでは、2023年(令和5年)10月公表の過去問のうち「関係法令:有害(有害業務に係るもの)」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、特例第1種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、第2種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2023年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2023年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2023年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2023年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2023年10月)
問1 常時400人の労働者を使用する製造業の事業場における衛生管理体制に関する(1)~(5)の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。
ただし、400人中には、屋内作業場において次の業務に常時従事する者が含まれているが、その他の有害業務はないものとし、衛生管理者及び産業医の選任の特例はないものとする。
深夜業を含む業務 200人
多量の高熱物体を取り扱う業務 50人
塩素を試験研究のため取り扱う作業を行う業務 30人
(1)総括安全衛生管理者を選任しなければならない。
(2)衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければならない。
(3)衛生管理者は、全て第一種衛生管理者免許を有する者のうちから選任することができる。
(4)産業医は、この事業場に専属でない者を選任することができる。
(5)特定化学物質作業主任者を選任しなくてよい。
答え(2)
(1)は正しい。常時300人以上の労働者を使用する製造業の事業場では、総括安全衛生管理者を選任しなければなりません。
(2)は誤り。常時1,000人を超える労働者を使用する事業場、または常時500人を超える労働者を使用する事業場で、多量の高熱物体を取り扱う業務などに常時30人以上の労働者を従事させる事業場では、衛生管理者のうち少なくとも1人を、専任の衛生管理者として選任しなければなりません。この事業場では、いずれの条件にも該当しませんので、専任の衛生管理者を選任する必要はありません。
(3)は正しい。常時500人を超える労働者を使用する事業場で、多量の高熱物体を取り扱う業務などに常時30人以上の労働者を従事させる事業場では、衛生管理者のうち1人を、衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任しなければなりません。この事業場では、この条件にも該当しませんので、全て第一種衛生管理者免許を有する者のうちから選任することができます。
(4)は正しい。常時1,000人以上の労働者を使用する事業場、または深夜業を含む業務などに常時500人以上の労働者を従事させる事業場では、産業医は、その事業場に専属の者でなければなりません。この事業場では、いずれの条件にも該当しませんので、専属でない者を産業医として選任することができます。
(5)は正しい。塩素などの特定化学物質を取り扱う事業場においては、事業場の規模、業種、その類にかかわらず、特定化学物質作業主任者を選任しなければなりません。ただし、試験研究のため取り扱う作業を行う業務を除きます。
問2 次の業務に労働者を就かせるとき、法令に基づく安全又は衛生のための特別の教育を行わなければならないものはどれか。
(1)赤外線又は紫外線にさらされる業務
(2)有機溶剤等を用いて行う接着の業務
(3)塩酸を用いて行う分析の業務
(4)エックス線回折装置を用いて行う分析の業務
(5)廃棄物の焼却施設において焼却灰を取り扱う業務
答え(5)
(1)(2)(3)(4)の業務は、法令上の特別の教育の実施は義務付けられていません。
(5)廃棄物の焼却施設において焼却灰を取り扱う業務は、下記の科目について特別の教育を行うことが義務付けられています。
1.ダイオキシン類の有害性
2.作業の方法及び事故の場合の措置
3.作業開始時の設備の点検
4.保護具の使用方法
5.その他ダイオキシン類のばく露の防止に関し必要な事項
問3 次の免許のうち、労働安全衛生法令に定められていないものはどれか。
(1)潜水士免許
(2)高圧室内作業主任者免許
(3)エックス線作業主任者免許
(4)石綿作業主任者免許
(5)ガンマ線透過写真撮影作業主任者免許
(1)(2)(3)(5)は、労働安全衛生法に定められる免許です。
(4)石綿作業主任者は、講習修了による資格で、免許制度ではありません。
問4 次の特定化学物質を製造しようとするとき、労働安全衛生法に基づく厚生労働大臣の許可を必要としないものはどれか。
(1)アルファ-ナフチルアミン
(2)塩素化ビフェニル(別名PCB)
(3)オルト-トリジン
(4)オルト-トルイジン
(5)ベンゾトリクロリド
答え(4)
特定化学物質の第1類物質は、製造する際、厚生労働大臣の許可が必要です。
対象となる物質は次の通りです。
1.ジクロルベンジジン及びその塩
2.アルファ-ナフチルアミン及びその塩
3.塩素化ビフェニル(別名PCB)
4.オルト-トリジン及びその塩
5.ジアニシジン及びその塩
6.ベリリウム及びその化合物
7.ベンゾトリクロリド
(4)オルト-トルイジンは、特定化学物質の第2類物質なので、許可を必要としません。
許可物質であるオルト-トリジンと、名称が似ているので注意しましょう。
問5 次のAからEの粉じん発生源について、法令上、特定粉じん発生源に該当するものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 屋内において、耐火物を用いた炉を解体する箇所
B 屋内の、ガラスを製造する工程において、原料を溶解炉に投げ入れる箇所
C 屋内において、研磨材を用いて手持式動力工具により金属を研磨する箇所
D 屋内において、粉状の炭素製品を袋詰めする箇所
E 屋内において、固定の溶射機により金属を溶射する箇所
(1)A,B
(2)A,E
(3)B,C
(4)C,D
(5)D,E
答え(5)
粉じんが発生する場所には、「一般的な粉じん発生源」と「特定粉じん発生源」の2つがあります。
●一般的な粉じん発生源とは、土石、岩石、金属など鉱物の掘削・破砕・研削・研磨作業、粉体材料の取り扱いや運搬などにより、粉じんが発生する箇所を指します。
●特定粉じん発生源とは、屋内などで、固定工具の動力などにより、粉じんが発生する箇所を指します。
このような箇所で作業を行う労働者は、粉じんばく露量が多くなり、健康リスクが高いとされています。
A,B,Cは、特定粉じん発生源ではなく、一般的な粉じん発生源です。
D,Eは、特定粉じん発生源です。
主な特定粉じん発生源は、次の通りです。
・屋内において、研磨材を用いて動力(手持式または可搬式動力工具によるものを除く。)により、岩石、鉱物若しくは金属を研磨し、もしくはばり取りし、または金属を裁断する箇所
・屋内において、鉱物等、炭素原料またはアルミニウム泊を動力(手持式動力工具によるものを除く。)により破砕し、粉砕し、またはふるい分ける箇所
・屋内において、セメント、フライアッシュまたは粉状の鉱石、炭素原料、炭素製品、アルミニウムもしくは酸化チタンを袋詰めする箇所
※フライアッシュとは、石炭を燃焼させたときに出る灰です。セメントやコンクリートに混ぜて使用します。
・屋内の、ガラスまたはほうろうを製造する工程において、原料を混合する箇所
・屋内の、耐火レンガまたはタイルを製造する工程において、原料(湿潤なものを除く。)を動力により成形する箇所
・屋内において、型ばらし装置を用いて砂型を壊し、もしくは砂落としし、または動力(手持式動力工具によるものを除く。)により砂を再生し、砂を混練し、もしくは鋳ばり等を削り取る箇所
・屋内において、手持式溶射機を用いないで金属を溶射する箇所 ほか
※溶射とは、高温で溶かした金属材料を、製品にスプレーで吹き付けてコーティングする技術です。
問6 有機溶剤等を取り扱う場合の措置について、有機溶剤中毒予防規則に違反しているものは次のうちどれか。
ただし、同規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。
(1)地下室の内部で第一種有機溶剤等を用いて作業を行わせるとき、その作業場所に局所排気装置を設け、有効に稼働させているが、作業者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。
(2)屋内作業場で、第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に最大0.4m/sの制御風速を出し得る能力を有する側方吸引型外付け式フードの局所排気装置を設け、かつ、作業に従事する労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させている。
(3)屋内作業場に設けた空気清浄装置のない局所排気装置の排気口で、厚生労働大臣が定める濃度以上の有機溶剤を排出するものの高さを、屋根から1.5mとしている。
(4)屋外作業場において有機溶剤含有物を用いて行う塗装の業務に常時従事する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、有機溶剤等健康診断を行っている。
(5)有機溶剤等を入れてあった空容器で有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものを、密閉して屋内の一定の場所に集積している。
答え(2)
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)違反している。側方吸引型外付け式フードの局所排気装置を設ける場合、0.5m/sの制御風速を出し得る能力のものでなければなりません。制御風速0.4m/sでは不十分です。
フードの型式ごとの制御風速は、次の表のとおりです。
問7 管理区域内において放射線業務に従事する労働者の被ばく限度に関する次の文中の[ ]内に入れるAからDの語句又は数値の組合せとして、法令上、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
「男性又は妊娠する可能性がないと診断された女性が受ける実効線量の限度は、緊急作業に従事する場合を除き、[ A ]間につき[ B ]、かつ、[ C ]間につき[ D ]である。」
(1)A:1年 B:50mSv C:1か月 D:5mSv
(2)A:3年 B:100mSv C:3か月 D:10mSv
(3)A:3年 B:100mSv C:1年 D:50mSv
(4)A:5年 B:100mSv C:1年 D:50mSv
(5)A:5年 B:250mSv C:1年 D:100mSv
「男性又は妊娠する可能性がないと診断された女性が受ける実効線量の限度は、緊急作業に従事する場合を除き、[ 5年 ]間につき[ 100mSv ]、かつ、[ 1年 ]間につき[ 50mSv ]である。」
問8 労働安全衛生規則の衛生基準について、誤っているものは次のうちどれか。
(1)炭酸ガス(二酸化炭素)濃度が0.15%を超える場所には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなければならない。
(2)強烈な騒音を発する屋内作業場においては、その伝ぱを防ぐため、隔壁を設ける等必要な措置を講じなければならない。
(3)多筒抄紙機により紙を抄くす 業務を行う屋内作業場については、6か月以内ごとに1回、定期に、等価騒音レベルを測定しなければならない。
(4)著しく暑熱又は多湿の作業場においては、坑内等特殊な作業場でやむを得ない事由がある場合を除き、休憩の設備を作業場外に設けなければならない。
(5)屋内作業場に多量の熱を放散する溶融炉があるときは、加熱された空気を直接屋外に排出し、又はその放射するふく射熱から労働者を保護する措置を講じなければならない。
(1)は誤り。炭酸ガス(二酸化炭素)濃度が1.5%を超える場所には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなければなりません。0.15%ではありません。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問9 法令に基づき定期に行う作業環境測定とその測定頻度との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
(1)溶融ガラスからガラス製品を成型する業務を行う屋内作業場の気温、湿度及びふく射熱の測定
…………………………………… 半月以内ごとに1回
(2)通気設備が設けられている坑内の作業場における通気量の測定
………………………………………………………… 半月以内ごとに1回
(3)非密封の放射性物質を取り扱う作業室における空気中の放射性物質の濃度の測定
…………………………………………………… 1か月以内ごとに1回
(4)鉛ライニングの業務を行う屋内作業場における空気中の鉛濃度の測定
………………………………………………………… 6か月以内ごとに1回
(5)常時特定粉じん作業を行う屋内作業場における空気中の粉じん濃度の測定
………………………………………………………… 6か月以内ごとに1回
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。鉛濃度の測定は、1年以内ごとに1回、定期に実施しなければなりません。6か月以内ごとに1回ではありません。
問10 労働基準法に基づき、満18歳に満たない者を就かせてはならない業務に該当しないものは次のうちどれか。
(1)さく岩機、鋲(びょう)打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務
(2)著しく寒冷な場所における業務
(3)20kgの重量物を継続的に取り扱う業務
(4)超音波にさらされる業務
(5)強烈な騒音を発する場所における業務
(1)(2)(3)(5)は該当する。
(4)は該当しない。超音波にさらされる業務は、満18歳未満が従事できない業務に該当しません。
なお、超音波とは、人間が聞き取れるよりも高い周波数の音波を指します。
超音波にさらされる業務には、プラスチックの溶着などに使用される超音波溶着機を取り扱う業務、振動により洗浄を行う超音波洗浄装置を取り扱う業務などがあります。
超音波にさらされた場合の障害として、手指等の組織壊死のほか、耳なり、頭痛などの症状が発生するおそれがあります。
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