衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2017年10月)
ここでは、2017年(平成29年)10月公表の過去問のうち「労働生理」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2017年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2017年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2017年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2017年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2017年10月)
問21 血液に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)血漿中の蛋白質のうち、アルブミンは血液の浸透圧の維持に関与している。
(2)血漿中の水溶性蛋白質であるフィブリンがフィブリノーゲンに変化する現象が、血液の凝集反応である。
(3)赤血球は、損傷部位から血管外に出ると、血液凝固を促進させる物質を放出する。
(4)血液中に占める白血球の容積の割合をヘマトクリットといい、感染や炎症があると増加する。
(5)血小板は、体内に侵入してきた細菌やウイルスを貪食する働きがある。
(1)は正しい。
(2)は誤り。血漿中のフィブリノーゲン(線維素原)がフィブリン(線維素)に変化する現象が、「血液の凝固」です。
(3)は誤り。「血小板」は、損傷部位から血管外に出ると、血液凝固を促進させる物質を放出します。
(4)は誤り。血液の容積に対する「赤血球」の相対的容積をヘマトクリットといい、「貧血の程度を判定」するのに用いられます。
(5)は誤り。白血球のうち好中球や単球などは、偽足を出してアメーバ様運動を行い、体内に侵入してきた細菌やウイルスを貪食します。
問22 心臓の働きと血液の循環に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)心臓の中にある洞結節(洞房結節)で発生した刺激が、刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、心臓は規則正しく収縮と拡張を繰り返す。
(2)体循環は、左心室から大動脈に入り、毛細血管を経て静脈血となり右心房に戻ってくる血液の循環である。
(3)肺循環は、右心室から肺動脈を経て肺の毛細血管に入り、肺静脈を通って左心房に戻る血液の循環である。
(4)心臓の拍動は、自律神経の支配を受けている。
(5)心筋は、意志と無関係に動く不随意筋であるが、平滑筋に分類される。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。心筋は、意志と無関係に動く不随意筋ですが、骨格筋と同様に「横紋筋」から成り、自動的に収縮と拡張をくり返します。
問23 肝臓の機能として、誤っているものは次のうちどれか。
(1)コレステロールの合成
(2)尿素の合成
(3)乳酸の合成
(4)胆汁の生成
(5)グリコーゲンの合成及び分解
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。乳酸は、筋肉の収縮時に酸素の供給が不足しているときに生成されるものです。
問24 呼吸に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)呼吸運動は、横隔膜、肋間筋などの呼吸筋が収縮と弛緩をすることで胸腔内の圧力を変化させ、肺を受動的に伸縮させることにより行われる。
(2)横隔膜が下がり、胸腔の内圧が低くなるにつれ、鼻腔、気管などの気道を経て肺内へ流れ込む空気が吸気である。
(3)肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われるガス交換を行う呼吸を外呼吸という。
(4)呼吸に関与する筋肉は、延髄にある呼吸中枢によって支配されている。
(5)呼吸中枢がその興奮性を維持するためには、常に一定量以上の一酸化炭素が血液中に含まれていることが必要である。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。呼吸中枢がその興奮性を維持するためには、常に一定量以上の「二酸化炭素」が血液中に含まれていることが必要です。
問25 体温調節に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)体温調節中枢は、小脳にあり、産熱と放熱とのバランスを維持し体温を一定に保つよう機能している。
(2)体温調節のように、外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保つ生体の仕組みを同調性といい、筋肉と神経系により調整されている。
(3)寒冷にさらされ体温が正常より低くなると、皮膚の血管が拡張して血流量を増し、皮膚温を上昇させる。
(4)計算上、体重70kgの人の体表面から10gの汗が蒸発すると、体温が約1℃下がる。
(5)発汗のほかに皮膚及び呼気から水分が失われる現象を不感蒸泄という。
(1)は誤り。体温調節中枢は、「間脳の視床下部」にあり、熱を生産する産熱と熱を放出する放熱とのバランスを維持し体温を一定に保つよう機能しています。
(2)は誤り。体温調節にみられるように、外部環境などが変化しても身体内部の状態を一定に保つ仕組みを「恒常性(ホメオスタシス)」といい、主に「神経系」と「内分泌系」により調節されています。
(3)は誤り。寒冷にさらされ体温が正常以下になると、体内の代謝活動が増加することにより熱の生産量を増やし、皮膚の血管が収縮して皮膚の血流量を減少し、「皮膚温を低下」させ人体からの放熱が抑制されます。
(4)は誤り。計算上、100gの汗が体重70kgの人の体表面から蒸発すると、気化熱が奪われ、体温を約1℃下げることができます。
(5)は正しい。
問26 腎臓・泌尿器系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)腎臓の腎小体では、糸球体から血液中の血球及び蛋白質以外の成分がボウマン嚢に濾し出され、原尿が生成される。
(2)腎臓の尿細管では、原尿に含まれる大部分の水分及び身体に必要な成分が血液中に再吸収され、残りが尿として生成される。
(3)腎臓は、背骨の両側に左右一対あり、それぞれの腎臓から複数の尿管が出て、膀胱につながっている。
(4)尿は淡黄色の液体で、固有の臭気を有し、通常、弱酸性である。
(5)尿の約95%は水分で、約5%が固形物であるが、その成分が全身の健康状態をよく反映するので、尿検査は健康診断などで広く行われている。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。それぞれの腎臓から、「1本ずつ」尿管が出て、膀胱に繋がっています。
問27 神経系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)神経系を構成する基本的な単位である神経細胞は、通常、1個の細胞体、1本の軸索及び複数の樹状突起から成り、ニューロンともいわれる。
(2)体性神経は、運動及び感覚に関与し、自律神経は、呼吸、循環などに関与する。
(3)大脳の皮質は、神経細胞の細胞体が集まっている灰白質で、感覚、思考などの作用を支配する中枢として機能する。
(4)交感神経系と副交感神経系は、各種臓器において双方の神経が分布し、相反する作用を有している。
(5)交感神経系は、身体の機能をより活動的に調節する働きがあり、心拍数を増加したり、消化管の運動を高める。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。交感神経系は心拍数を増加し、消化管の運動を「抑制」します。
問28 下の図は眼球の水平断面図であるが、図中に【網掛】又は【○】で示すAからEの部位に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)Aの【網掛】部分は角膜で、これが歪んでいたり、表面に凹凸があるために、見た物体の像が網膜上に正しく結ばないものを乱視という。
(2)Bの【網掛】部分は虹彩で、光量に応じて瞳孔の径を変える。
(3)Cの【網掛】部分は硝子体で、これの厚さを変えることにより焦点距離を調節して網膜上に像を結ぶようにしている。
(4)Dの【網掛】部分は網膜で、ここには、明るい所で働き色を感じる錐状体と、暗い所で働き弱い光を感じる杆状体の2種類の視細胞がある。
(5)Eの【○】部分は中心窩で、視力の鋭敏な部位である。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。Cの部分は「水晶体」で、これの厚さを変えることにより焦点距離を調節して網膜上に像を結ぶようにしています。
問29 ストレスに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)個人の能力や感性に適合しないストレッサーは、心理的には不安、焦燥感、抑うつ感などを、身体的には疲労を生じることがある。
(2)典型的なストレス反応として、副腎皮質ホルモンの分泌の著しい減少がある。
(3)ストレスにより、発汗、手足の震えなど自律神経系の障害が生じることがある。
(4)ストレスにより、高血圧症、狭心症、十二指腸潰瘍などの疾患が生じることがある。
(5)昇進、転勤、配置替えなどがストレスの原因となることがある。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。ストレスに伴う心身の反応には、ノルアドレナリン、アドレナリンなどのカテコールアミンや副腎皮質ホルモンが深く関与し、典型的なストレス反応として、その分泌の著しい「増加」があります。
問30 ホルモン、その内分泌器官及びそのはたらきの組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
A=ホルモン B=内分泌器官 C=はたらき
(1)A=コルチゾール B=副腎皮質 C=血糖量の増加
(2)A=メラトニン B=副腎髄質 C=体液中の塩類バランスの調節
(3)A=パラソルモン B=副甲状腺 C=血中のカルシウム量の調節
(4)A=インスリン B=膵臓 C=血糖量の減少
(5)A=グルカゴン B=膵臓 C=血糖量の増加
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。メラトニンは、脳の松果体から分泌され、睡眠と覚醒のリズムを調節するはたらきをします。
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