衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2018年4月)
ここでは、2018年(平成30年)4月公表の過去問のうち「労働生理」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2018年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2018年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2018年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2018年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2018年4月)
問21 血液に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)赤血球は、骨髄で産生され、寿命は約120日であり、全血液の体積の約60%を占めている。
(2)血液中に占める赤血球の容積の割合をヘマトクリットといい、貧血になるとその値は低くなる。
(3)好中球は、偽足を出してアメーバ様運動を行い、体内に侵入してきた細菌などを貪食する。
(4)リンパ球は、白血球の約30%を占め、Tリンパ球やBリンパ球などの種類があり、免疫反応に関与している。
(5)ABO式血液型は、赤血球による血液型分類の一つで、A型血液の血清は抗B抗体をもつ。
(1)は誤り。赤血球は、血球の中でもっとも多く、全血液の体積の「約40%」を占めています。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問22 呼吸に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)呼吸運動は、主として肋(ろっ)間筋と横隔膜の協調運動によって胸郭内容積を周期的に増減し、それに伴って肺を伸縮させることにより行われる。
(2)胸郭内容積が増し、内圧が低くなるにつれ、鼻腔(くう)、気管などの気道を経て肺内へ流れ込む空気が吸気である。
(3)肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われるガス交換を外呼吸という。
(4)通常の呼吸の場合の呼気には、酸素が約16%、二酸化炭素が約4%、それぞれ含まれる。
(5)身体活動時には、血液中の窒素分圧の上昇により呼吸中枢が刺激され、1回換気量及び呼吸数が増加する。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。運動などの身体活動時には、筋肉中の酸素が消費され、二酸化炭素が多く発生します。すると血液中の「二酸化炭素」分圧が上昇し、これにより呼吸中枢が刺激され、1回換気量及び呼吸数が増加します。
問23 心臓の働きと血液の循環に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)肺循環は、右心室から肺静脈を経て肺の毛細血管に入り、肺動脈を通って左心房に戻る血液の循環である。
(2)心臓は、自律神経の中枢で発生した刺激が刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、規則正しく収縮と拡張を繰り返す。
(3)心臓から拍出された血液を送る血管を動脈といい、心臓に戻る血液を送る血管を静脈という。
(4)大動脈や肺動脈には、動脈血が流れる。
(5)血圧は、血液が血管の側面を押し広げる力であり、高血圧の状態が続くと、血管壁の厚さは減少していく。
(1)は誤り。肺循環は、右心室から「肺動脈」を経て肺の毛細血管に入り、肺静脈を通って左心房に戻る血液の循環である。
(2)は誤り。心臓の右心房には洞房結節(洞結節)というペースメーカーが存在し、ここから電気的な刺激が発生して刺激伝道系という経路を介して、心筋に伝わることにより、心臓は規則正しく収縮と拡張を繰り返します。
(3)は正しい。
(4)は誤り。大動脈には酸素の多く含む動脈血が、肺動脈には二酸化炭素の多く含む静脈血が流れます。
(5)は誤り。血圧は、血液が血管の側面を押し広げる力で、高血圧の状態が続くと、血管壁の「厚さが増して」弾力性が失われ、内膜の傷を誘発し、やがてその傷の部分に血液の固まりやコレステロールがたまって、内腔を狭くなり、臓器への酸素や栄養分の供給が妨げられます。
問24 消化器系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)三大栄養素のうち糖質はブドウ糖などに、蛋(たん)白質はアミノ酸に、脂肪は脂肪酸とグリセリンに、酵素により分解されて吸収される。
(2)無機塩やビタミン類は、酵素による分解を受けないでそのまま吸収される。
(3)膵(すい)臓は、消化酵素を含む膵液を十二指腸に分泌するとともに、血糖値を調節するホルモンを血液中に分泌する。
(4)ペプシノーゲンは、胃酸によってペプシンという消化酵素になり、蛋白質を分解する。
(5)胆汁はアルカリ性で、蛋白質を分解するトリプシンなどの消化酵素を含んでいる。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。胆汁はアルカリ性の消化液ですが、消化酵素を含みません。胆汁は脂肪分解の働きを助けます。
問25 神経系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)自律神経系は、内臓、血管などの不随意筋に分布している。
(2)自律神経である交感神経と副交感神経は、同一器官に分布していても、その作用はほぼ正反対である。
(3)大脳皮質は、神経細胞の細胞体が集合した灰白質で、感覚、運動、思考などの作用を支配する中枢である。
(4)心臓に対しては、交感神経の亢(こう)進は心拍数を増加させ、副交感神経の亢進は心拍数を減少させる。
(5)消化管に対しては、交感神経の亢進は運動を促進させ、副交感神経の亢進は運動を抑制させる。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。交感神経系は消化管の運動を「抑制」します。一方、副交感神経系は消化管の運動を「亢進」します。
問26 腎臓・泌尿器系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)糸球体では、血液中の血球及び蛋(たん)白質以外の成分がボウマン嚢(のう)に濾(こ)し出され、原尿が生成される。
(2)尿細管では、原尿に含まれる大部分の水分、電解質、栄養分などが血液中に再吸収される。
(3)尿の生成・排出により、体内の水分の量やナトリウムなどの電解質の濃度を調節するとともに、生命活動によって生じた不要な物質を排泄(せつ)する。
(4)尿の約95%は水分で、約5%が固形物であり、その成分は全身の健康状態をよく反映するので、尿検査は健康診断などで広く行われている。
(5)血液中の尿素窒素(BUN)の値が低くなる場合は、腎臓の機能の低下が考えられる。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。尿素窒素は、腎臓から排泄される老廃物の一種で、腎臓の働きが低下すると尿中へ排泄されず、血液中の尿素窒素(BUN)の値が高くなります。
問27 筋肉に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)横紋筋は、骨に付着して身体の運動の原動力となる筋肉で意志によって動かすことができるが、平滑筋は、心筋などの内臓に存在する筋肉で意志によって動かすことができない。
(2)筋肉の縮む速さが速ければ速いほど、仕事の効率は大きい。
(3)荷物を持ち上げたり、屈伸運動を行うときは、筋肉が長さを変えずに外力に抵抗して筋力を発生させる等尺性収縮が生じている。
(4)強い力を必要とする運動を続けていても、筋肉を構成する個々の筋線維の太さは変わらないが、その数が増えることによって筋肉が太くなり筋力が増強する。
(5)筋肉は、収縮しようとする瞬間に最も大きい力を出す。
(1)は誤り。心臓の筋肉である心筋は不随意筋に属しますが、自律神経により支配されている横紋筋で構成されています。
(2)は誤り。筋肉の縮む速さが大きければ、仕事の効率が上昇するわけではなく、筋肉の縮む速さが適当なときに、仕事の効率は最も大きくなります。
(3)は誤り。荷物を持ち上げたり、屈伸運動をするとき、関節運動に関与する筋肉には、「等張性収縮」が生じています。
(4)は誤り。強い力を必要とする運動を続けていても、筋線維の数は、大人になってからは増えないとされていますが、筋肉を構成する個々の筋線維の太さが太くなることによって、筋肉が太くなり筋力が増加します。
(5)は正しい。
問28 視覚に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)遠距離視力検査は、一般に、5mの距離で実施する。
(2)ヒトの眼は、硝子体の厚さを変えることにより焦点距離を調節して網膜の上に像を結ぶようにしている。
(3)角膜が歪(ゆが)んでいたり、表面に凹凸があるために、眼軸などに異常がなくても、物体の像が網膜上に正しく結ばないものを乱視という。
(4)網膜には、錐(すい)状体と杆(かん)状体の2種類の視細胞がある。
(5)視作業の継続により、前額部の圧迫感、頭痛、複視、吐き気、嘔(おう)吐などの眼精疲労を生じ、作業の継続が困難になることがある。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。眼は、水晶体の厚さを変えることにより焦点距離を調節して網膜の上に像を結ぶようにしています。
問29 体温調節に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)体温調節中枢は、間脳の視床下部にある。
(2)体温調節のように、外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保つ生体の仕組みを同調性といい、筋肉と神経系により調整されている。
(3)寒冷にさらされ体温が正常以下になると、皮膚の血管が拡張して血流量を増し、皮膚温を上昇させる。
(4)不感蒸泄(せつ)とは、水分が発汗により失われることをいう。
(5)温熱性発汗は、全身でみられるが、特に足の裏で多い。
(1)は正しい。
(2)は誤り。体温調節にみられるように、外部環境などが変化しても身体内部の状態を一定に保つ仕組みを恒常性(ホメオスタシス)といい、主に神経系と内分泌系により調節されています。
(3)は誤り。寒冷にさらされ体温が正常以下になると、体内の代謝活動が増加することにより熱の生産量を増やし、皮膚の血管が収縮して皮膚の血流量を減少し、「皮膚温を低下」させ人体からの放熱が抑制されます。
(4)は誤り。発汗のほかに皮膚および呼気から水分が失われる現象を不感蒸泄といいます。
(5)は誤り。温熱性発汗は、全身で見られますが、精神性発汗は、手のひら、足の裏、腋などに多く見られます。
問30 ホルモンとその働きに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)副腎皮質から分泌されるコルチゾールは、血糖値を上昇させる。
(2)副腎髄質から分泌されるアドレナリンは、血糖値を低下させる。
(3)副甲状腺から分泌されるパラソルモンは、睡眠と覚醒のリズムの調節を行う。
(4)松果体から分泌されるメラトニンは、体内のカルシウムバランスの調整を行う。
(5)胃粘膜から分泌されるガストリンは、胃酸の分泌を抑制する。
(1)は正しい。
(2)は誤り。副腎髄質から分泌されるアドレナリンは、血糖値を上昇させます。
(3)は誤り。副甲状腺から分泌されるパラソルモンは、体内のカルシウムバランスの調整を行います。
(4)は誤り。松果体から分泌されるメラトニンは、睡眠と覚醒のリズムの調節を行います。
(5)は誤り。胃粘膜から分泌されるガストリンは、胃酸の分泌を促進します。
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