衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2019年10月)
ここでは、2019年(令和元年)10月公表の過去問のうち「労働生理」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2019年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2019年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2019年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2019年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2019年10月)
問21 呼吸に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)呼吸運動は、呼吸筋が収縮と弛(し)緩をすることによって胸郭内容積を周期的に増減し、それに伴って肺を伸縮させることにより行われる。
(2)胸郭内容積が増し、内圧が低くなるにつれ、鼻腔(くう)、気管などの気道を経て肺内へ流れ込む空気が吸気である。
(3)肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われるガス交換を外呼吸という。
(4)通常の呼吸の場合の呼気には、酸素が約16%、二酸化炭素が約4%含まれる。
(5)身体活動時には、血液中の窒素分圧の上昇により呼吸中枢が刺激され、1回換気量及び呼吸数が増加する。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。運動などの身体活動時には、筋肉中の酸素が消費され、二酸化炭素が多く発生します。すると血液中の「二酸化炭素」分圧が上昇し、これにより呼吸中枢が刺激され、1回換気量及び呼吸数が増加します。
問22 心臓の働きと血液の循環に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)心臓の中にある洞結節(洞房結節)で発生した刺激が、刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、心臓は規則正しく収縮と拡張を繰り返す。
(2)体循環は、左心室から大動脈に入り、毛細血管を経て静脈血となり右心房に戻ってくる血液の循環である。
(3)肺循環は、右心室から肺動脈を経て肺の毛細血管に入り、肺静脈を通って左心房に戻る血液の循環である。
(4)心臓の拍動は、自律神経の支配を受けている。
(5)大動脈及び肺動脈を流れる血液は、酸素に富む動脈血である。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。大動脈及び「肺静脈」を流れる血液は、酸素に富む動脈血です。なお、肺動脈を流れる血液は、静脈血です。
問23 神経系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)神経系は、中枢神経系と末梢(しょう)神経系に大別され、中枢神経系は脳と脊髄から成る。
(2)大脳の内側の髄質は神経細胞の細胞体が集合した灰白質で、感覚、運動、思考などの作用を支配する中枢として機能する。
(3)神経系を構成する基本的な単位である神経細胞は、通常、1個の細胞体、1本の軸索及び複数の樹状突起から成り、ニューロンともいわれる。
(4)神経系は、機能的には、体性神経と自律神経に分類され、自律神経は更に交感神経と副交感神経に分類される。
(5)体性神経には、感覚器官からの情報を中枢神経に伝える感覚神経と、中枢神経からの命令を運動器官に伝える運動神経がある。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。大脳「皮質」は、神経細胞の細胞体が集合した灰白質で、感覚、運動、思考などの作用を支配する中枢です。
問24 消化器系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)三大栄養素のうち、糖質はブドウ糖などに、蛋(たん)白質はアミノ酸に、脂肪は脂肪酸とグリセリンに酵素により分解されて吸収される。
(2)無機塩、ビタミン類は、酵素による分解を受けないでそのまま吸収される。
(3)膵(すい)臓から十二指腸に分泌される膵液には、消化酵素は含まれていないが、血糖値を調節するホルモンが含まれている。
(4)ペプシノーゲンは、胃酸によってペプシンという消化酵素になり、蛋白質を消化する。
(5)小腸の表面は、ビロード状の絨(じゅう)毛という小突起で覆われており、栄養素の吸収の効率を上げるために役立っている。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。膵臓は、「消化酵素を含む」膵液を十二指腸に分泌するとともに、血糖値を調節するホルモンを血液中に分泌します。
問25 腎臓又は尿に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)血中の老廃物は、尿細管からボウマン嚢(のう)に濾(こ)し出される。
(2)血中の蛋(たん)白質は、糸球体からボウマン嚢に濾し出される。
(3)血中のグルコースは、糸球体からボウマン嚢に濾し出される。
(4)原尿中に濾し出された電解質の多くは、ボウマン嚢から血中に再吸収される。
(5)原尿中に濾し出された水分の大部分は、そのまま尿として排出される。
(1)は誤り。腎臓の構造と仕組みをしっかりと理解しましょう。血中の老廃物は、糸球体からボウマン嚢に濾し出されます。
(2)は誤り。通常、蛋白質は、血中から濾し出されません。
(3)は正しい。
(4)は誤り。電解質の多くは、尿細管から血中に再吸収されます。
(5)は誤り。水分の大部分は、尿細管から血中に再吸収されます。
問26 血液に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)血漿(しょう)中の蛋(たん)白質のうち、アルブミンは血液の浸透圧の維持に関与している。
(2)血漿中の水溶性蛋白質であるフィブリンがフィブリノーゲンに変化する現象が、血液の凝集反応である。
(3)赤血球は、損傷部位から血管外に出ると、血液凝固を促進させる物質を放出する。
(4)血液中に占める白血球の容積の割合をヘマトクリットといい、感染や炎症があると増加する。
(5)血小板は、体内に侵入してきた細菌やウイルスを貪食する働きがある。
(1)は正しい。
(2)は誤り。血漿中のフィブリノーゲン(線維素原)がフィブリン(線維素)に変化する現象が、「血液の凝固」です。
(3)は誤り。「血小板」は、損傷部位から血管外に出ると、血液凝固を促進させる物質を放出します。
(4)は誤り。血液の容積に対する「赤血球」の相対的容積をヘマトクリットといい、「貧血の程度を判定」するのに用いられます。
(5)は誤り。白血球のうち好中球や単球などは、偽足を出してアメーバ様運動を行い、体内に侵入してきた細菌やウイルスを貪食します。
問27 視覚に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)眼をカメラに例えると、虹(こう)彩は、しぼりの働きをする。
(2)眼は、硝子体の厚さを変えることにより焦点距離を調節して網膜の上に像を結ぶようにしている。
(3)角膜が歪(ゆが)んでいたり、表面に凹凸があるために、眼軸などに異常がなくても、物体の像が網膜上に正しく結ばないものを乱視という。
(4)網膜には、明るい所で働き色を感じる錐(すい)状体と、暗い所で働き弱い光を感じる杆(かん)状体の2種類の視細胞がある。
(5)明るいところから急に暗いところに入ると、初めは見えにくいが暗順応によって徐々に見えるようになる。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。眼は、「水晶体」の厚さを変えることにより焦点距離を調節して網膜の上に像を結ぶようにしています。
問28 抗体に関する次の文中の[ ]内に入れるAからCの語句の組合せとして、適切なものは(1)~(5)のうちどれか。
「抗体とは、体内に入ってきた[ A ]に対して[ B ]免疫において作られる[ C ]と呼ばれる蛋(たん)白質のことで、[ A ]に特異的に結合し、[ A ]の働きを抑える働きがある。」
(1)A=化学物質 B=体液性 C=アルブミン
(2)A=化学物質 B=細胞性 C=免疫グロブリン
(3)A=抗原 B=体液性 C=アルブミン
(4)A=抗原 B=細胞性 C=アルブミン
(5)A=抗原 B=体液性 C=免疫グロブリン
「抗体とは、体内に入ってきた[抗原]に対して[体液性]免疫において作られる[免疫グロブリン]と呼ばれる蛋(たん)白質のことで、[抗原]に特異的に結合し、[抗原]の働きを抑える働きがある。」
問29 代謝に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)代謝において、細胞に取り入れられた体脂肪やグリコーゲンなどが分解されてエネルギーを発生し、ATPが生産されることを同化という。
(2)代謝において、体内に摂取された栄養素が、種々の化学反応によって、ATPに蓄えられたエネルギーを用いて、細胞を構成する蛋(たん)白質などの生体に必要な物質に合成されることを異化という。
(3)基礎代謝は、心臓の拍動、呼吸運動、体温保持などに必要な代謝で、基礎代謝量は、覚醒・横臥(が)・安静時の測定値で表される。
(4)エネルギー代謝率は、一定時間中に体内で消費された酸素と排出された二酸化炭素の容積比で表される。
(5)エネルギー代謝率は、生理的負担だけでなく、精神的作業や静的筋作業の強度を表す指標としても用いられる。
(1)は誤り。代謝において、体内に摂取された栄養素が、種々の化学反応によって、細胞を構成する蛋白質などの生体に必要な物質に「合成」されることを「同化」といいます。
(2)は誤り。代謝において、細胞内に蓄えられた体脂肪やグリコーゲンなどが「分解」されエネルギーが発生する過程を「異化」といいます。
(3)は正しい。
(4)は誤り。エネルギー代謝率は、作業に要したエネルギー量を基礎代謝量で割ったものになります。
(5)は誤り。エネルギー代謝率は、一般に精神的作業や静的筋作業の強度を評価するためには用いられません。
問30 睡眠に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)睡眠と覚醒のリズムのように、約1日の周期で繰り返される生物学的リズムをサーカディアンリズムといい、このリズムの乱れは、疲労や睡眠障害の原因となる。
(2)睡眠は、睡眠中の目の動きなどによって、レム睡眠とノンレム睡眠に分類される。
(3)コルチゾールは、血糖値の調節などの働きをするホルモンで、通常、その分泌量は明け方から増加し始め、起床前後で最大となる。
(4)レム睡眠は、安らかな眠りで、この間に脳は休んだ状態になっている。
(5)メラトニンは、睡眠に関与しているホルモンである。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。レム睡眠では、眼球がキョロキョロ動き脳は覚醒に近い状態です。一方、ノンレム睡眠は安らかな眠りで、この間に大脳は休んだ状態になります。
-
同カテゴリーの最新記事
- 2024/10/14:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2024年10月)
- 2024/05/20:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2024年4月)
- 2022/05/20:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2022年4月)
- 2021/11/20:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2021年10月)
- 2021/05/20:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2021年4月)