衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2020年10月)
ここでは、2020年(令和2年)10月公表の過去問のうち「労働生理」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2020年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2020年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2020年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2020年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2020年10月)
問21 次のうち、正常値に男女による差がないとされているものはどれか。
(1)赤血球数
(2)ヘモグロビン量
(3)白血球数
(4)基礎代謝量
(5)ヘマトクリット値
(1)(2)(4)(5)は男女差があります。
(3)は正しい。血球の中で、白血球数や血小板数は、一般に男女差がありません。
問22 心臓の働きと血液の循環に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)心臓の中にある洞結節(洞房結節)で発生した刺激が、刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、心臓は規則正しく収縮と拡張を繰り返す。
(2)体循環は、左心室から大動脈に入り、毛細血管を経て静脈血となり右心房に戻ってくる血液の循環である。
(3)肺循環は、右心室から肺静脈を経て肺の毛細血管に入り、肺動脈を通って左心房に戻る血液の循環である。
(4)心臓の拍動は、自律神経の支配を受けている。
(5)大動脈及び肺静脈を流れる血液は、酸素に富む動脈血である。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。肺循環は、右心室から肺動脈を経て肺の毛細血管に入り、肺静脈を通って左心房に戻る血液の循環です。
問23 呼吸に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)呼吸運動は、横隔膜、肋(ろっ)間筋などの呼吸筋が収縮と弛(し)緩をすることにより行われる。
(2)胸腔(くう)の容積が増し、内圧が低くなるにつれ、鼻腔、気管などの気道を経て肺内へ流れ込む空気が吸気である。
(3)肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われるガス交換を外呼吸という。
(4)通常の呼吸の場合の呼気には、酸素が約16%、二酸化炭素が約4%含まれる。
(5)身体活動時には、血液中の窒素分圧の上昇により呼吸中枢が刺激され、1回換気量及び呼吸数が増加する。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。運動などの身体活動時には、筋肉中の酸素が消費され、二酸化炭素が多く発生します。すると血液中の二酸化炭素分圧が上昇し、これにより呼吸中枢が刺激され、1回換気量及び呼吸数が増加します。
問24 消化器系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)三大栄養素のうち、糖質はブドウ糖などに、蛋(たん)白質はアミノ酸に、脂肪は脂肪酸とグリセリンに、酵素により分解され、吸収される。
(2)無機塩及びビタミン類は、酵素による分解を受けないでそのまま吸収される。
(3)胆汁はアルカリ性で、蛋白質を分解するトリプシンなどの消化酵素を含んでいる。
(4)胃は、塩酸やペプシノーゲンを分泌して消化を助けるが、水分の吸収はほとんど行わない。
(5)吸収された栄養分は、血液やリンパによって組織に運搬されてエネルギー源などとして利用される。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。胆汁はアルカリ性の消化液ですが、消化酵素を含みません。胆汁は脂肪分解の働きを助けます。
問25 体温調節に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)寒冷な環境においては、皮膚の血管が拡張して血流量を増し、皮膚温を上昇させる。
(2)暑熱な環境においては、内臓の血流量が増加し体内の代謝活動が亢(こう)進することにより、人体からの熱の放散が促進される。
(3)体温調節のように、外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保つ生体の仕組みを同調性といい、筋肉と神経系により調整されている。
(4)体温調節中枢は、小脳にあり、熱の産生と放散とのバランスを維持し体温を一定に保つよう機能している。
(5)熱の放散は、ふく射(放射)、伝導、蒸発などの物理的な過程で行われ、蒸発によるものには、発汗と不感蒸泄(せつ)がある。
(1)は誤り。寒冷にさらされ体温が正常以下になると、体内の代謝活動が増加することにより熱の生産量を増やし、皮膚の血管が収縮して皮膚の血流量を減少し、皮膚温を低下させ人体からの放熱が抑制されます。
(2)は誤り。高温にさらされ、体温が正常以上に上昇すると、内臓の血流量が減少し体内の代謝活動が減少することにより熱の生産量を減らし、皮膚の血管を拡張し、皮膚の血液量を増加させ人体からの放熱が促進されます。
(3)は誤り。体温調節にみられるように、外部環境などが変化しても身体内部の状態を一定に保つ仕組みを恒常性(ホメオスタシス)といい、主に神経系と内分泌系により調節されています。
(4)は誤り。体温調節中枢は、間脳の視床下部にあり、熱を生産する産熱と熱を放出する放熱とのバランスを維持し体温を一定に保つよう機能しています。
(5)は正しい。
問26 腎臓又は尿に関する次のAからDの記述について、誤っているものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A ネフロン(腎単位)は、尿を生成する単位構造で、1個の腎小体とそれに続く1本の尿細管から成り、1個の腎臓中に約100万個ある。
B 尿の約95%は水分で、約5%が固形物であるが、その成分は全身の健康状態をよく反映するので、尿検査は健康診断などで広く行われている。
C 腎機能が正常な場合、糖はボウマン嚢(のう)中に濾(こ)し出されないので尿中には排出されない。
D 腎機能が正常な場合、大部分の蛋(たん)白質はボウマン嚢中に濾し出されるが、尿細管でほぼ100%再吸収されるので、尿中にはほとんど排出されない。
(1)A,B
(2)A,C
(3)A,D
(4)B,C
(5)C,D
A,Bは正しい。
Cは誤り。糖はボウマン嚢中に濾し出され、尿細管で再吸収されます。
Dは誤り。通常、蛋白質は、血中から濾し出されません。
問27 筋肉に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)横紋筋は、骨に付着して身体の運動の原動力となる筋肉で意志によって動かすことができるが、平滑筋は、心筋などの内臓に存在する筋肉で意志によって動かすことができない。
(2)筋肉は神経からの刺激によって収縮するが、神経より疲労しにくい。
(3)荷物を持ち上げたり、屈伸運動を行うときは、筋肉が長さを変えずに外力に抵抗して筋力を発生させる等尺性収縮が生じている。
(4)強い力を必要とする運動を続けていると、筋肉を構成する個々の筋線維の太さは変わらないが、その数が増えることによって筋肉が太くなり筋力が増強する。
(5)筋肉は、収縮しようとする瞬間に最も大きい力を出す。
(1)は誤り。心臓の筋肉である心筋は不随意筋に属しますが、自律神経により支配されている横紋筋で構成されています。
(2)は誤り。筋肉は、神経から送られてくる刺激によって収縮しますが、神経に比べて疲労しやすいという特徴を持っています。
(3)は誤り。荷物を持ち上げたり、屈伸運動をするとき、関節運動に関与する筋肉には、等張性収縮が生じています。
(4)は誤り。強い力を必要とする運動を続けていても、筋線維の数は、大人になってからは増えないとされていますが、筋肉を構成する個々の筋線維の太さが太くなることによって、筋肉が太くなり筋力が増加します。
(5)は正しい。
問28 耳とその機能に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)耳は、聴覚と平衡感覚をつかさどる器官で、外耳、中耳及び内耳の三つの部位に分けられる。
(2)耳介で集められた音は、鼓膜を振動させ、その振動は耳小骨によって増幅され、内耳に伝えられる。
(3)内耳は、前庭、半規管及び蝸(か)牛の三つの部位からなり、前庭と半規管が平衡感覚、蝸牛が聴覚を分担している。
(4)前庭は、体の回転の方向や速度を感じ、半規管は、体の傾きの方向や大きさを感じる。
(5)鼓室は、耳管によって咽頭に通じており、その内圧は外気圧と等しく保たれている。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。内耳にある前庭は体の傾きの方向や大きさを感じ、半規管は体の回転の方向や速度を感じる平衡感覚器です。
問29 睡眠などに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)睡眠は、睡眠中の目の動きなどによって、レム睡眠とノンレム睡眠に分類される。
(2)甲状腺ホルモンは、夜間に分泌が上昇するホルモンで、睡眠と覚醒のリズムの調節に関与している。
(3)睡眠と食事は深く関係しているため、就寝直前の過食は、肥満のほか不眠を招くことになる。
(4)夜間に働いた後の昼間に睡眠する場合は、一般に、就寝から入眠までの時間が長くなり、睡眠時間が短縮し、睡眠の質も低下する。
(5)睡眠中には、体温の低下、心拍数の減少などがみられる。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。脳にある松果体から分泌されるメラトニンは、夜間に分泌が上昇するホルモンで、睡眠と覚醒のリズムの調節に関与しています。
問30 ヒトのホルモン、その内分泌器官及びそのはたらきの組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
A:ホルモン B:内分泌器官 C:はたらき
(1)A:コルチゾール B:副腎皮質 C:血糖量の増加
(2)A:アルドステロン B:副腎皮質 C:血中の塩類バランスの調節
(3)A:パラソルモン B:副腎髄質 C:血糖量の増加
(4)A:インスリン B:膵(すい)臓 C:血糖量の減少
(5)A:メラトニン B:松果体 C:睡眠の促進
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。パラソルモンは、副甲状腺から分泌され、血中のカルシウムバランスの調節を行ないます。
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