衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2021年10月)
ここでは、2021年(令和3年)10月公表の過去問のうち「労働生理」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2021年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2021年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2021年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2021年10月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2021年10月)
問21 神経系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)神経系を構成する基本的な単位である神経細胞は、通常、1個の細胞体、1本の軸索及び複数の樹状突起から成り、ニューロンともいわれる。
(2)体性神経は、運動及び感覚に関与し、自律神経は、呼吸、循環などに関与する。
(3)大脳の皮質は、神経細胞の細胞体が集まっている灰白質で、感覚、思考などの作用を支配する中枢として機能する。
(4)交感神経系と副交感神経系は、各種臓器において双方の神経線維が分布し、相反する作用を有している。
(5)交感神経系は、身体の機能をより活動的に調節する働きがあり、心拍数を増加させたり、消化管の運動を高める。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。交感神経系は、身体の機能をより活動的に調節する働きがあり、心拍数を増加したり、消化管の運動を抑制します。
問22 心臓及び血液循環に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)心臓は、自律神経の中枢で発生した刺激が刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、規則正しく収縮と拡張を繰り返す。
(2)肺循環により左心房に戻ってきた血液は、左心室を経て大動脈に入る。
(3)大動脈を流れる血液は動脈血であるが、肺動脈を流れる血液は静脈血である。
(4)心臓の拍動による動脈圧の変動を末梢(しょう)の動脈で触知したものを脈拍といい、一般に、手首の橈(とう)骨動脈で触知する。
(5)動脈硬化とは、コレステロールの蓄積などにより、動脈壁が肥厚・硬化して弾力性を失った状態であり、進行すると血管の狭窄(さく)や閉塞を招き、臓器への酸素や栄養分の供給が妨げられる。
(1)は誤り。心臓の中にある洞結節(洞房結節)で発生した刺激が、刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、心臓は規則正しく収縮と拡張を繰り返します。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問23 消化器系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)三大栄養素のうち糖質はブドウ糖などに、蛋(たん)白質はアミノ酸に、脂肪は脂肪酸とグリセリンに、酵素により分解されて吸収される。
(2)無機塩及びビタミン類は、酵素による分解を受けないでそのまま吸収される。
(3)膵(すい)臓から十二指腸に分泌される膵液には、消化酵素は含まれていないが、血糖値を調節するホルモンが含まれている。
(4)ペプシノーゲンは、胃酸によってペプシンという消化酵素になり、蛋白質を分解する。
(5)小腸の表面は、ビロード状の絨(じゅう)毛という小突起で覆われており、栄養素の吸収の効率を上げるために役立っている。
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。膵臓は、消化酵素を含む膵液を十二指腸に分泌するとともに、血糖値を調節するホルモンを血液中に分泌します。
問24 呼吸に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)呼吸運動は、気管と胸膜の協調運動によって、胸郭内容積を周期的に増減させて行われる。
(2)胸郭内容積が増し、その内圧が低くなるにつれ、鼻腔(くう)、気管などの気道を経て肺内へ流れ込む空気が吸気である。
(3)肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われる酸素と二酸化炭素のガス交換を、肺呼吸又は外呼吸という。
(4)全身の毛細血管中の血液が各組織細胞に酸素を渡して二酸化炭素を受け取るガス交換を、組織呼吸又は内呼吸という。
(5)血液中の二酸化炭素濃度が増加すると、呼吸中枢が刺激され、肺でのガス交換の量が多くなる。
(1)は誤り。呼吸運動は、横隔膜や肋間筋などの呼吸筋が収縮と弛緩をすることで胸腔内の圧力を変化させ、肺を受動的に伸縮させることにより行われます。
肺自体に筋肉はありませんので、このように受動的に呼吸運動が行われます。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問25 腎臓・泌尿器系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)腎臓の皮質にある腎小体では、糸球体から蛋(たん)白質以外の血漿(しょう)成分がボウマン嚢(のう)に濾(こ)し出され、原尿が生成される。
(2)腎臓の尿細管では、原尿に含まれる大部分の水分及び身体に必要な成分が血液中に再吸収され、残りが尿として生成される。
(3)尿は淡黄色の液体で、固有の臭気を有し、通常、弱酸性である。
(4)尿の生成・排出により、体内の水分の量やナトリウムなどの電解質の濃度を調節するとともに、生命活動によって生じた不要な物質を排出する。
(5)尿の約95%は水分で、約5%が固形物であるが、その成分が全身の健康状態をよく反映するので、尿を採取して尿素窒素の検査が広く行われている。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。尿の成分は全身の健康状態をよく反映し、検体の採取も簡単であるため、尿蛋白、尿糖、尿潜血などの尿検査は健康診断などで広く行われています。
尿検査のほかに、腎臓の機能をみる検査として、血液中の尿素窒素があります。
問26 代謝に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)代謝において、細胞に取り入れられた体脂肪、グリコーゲンなどが分解されてエネルギーを発生し、ATPが合成されることを同化という。
(2)代謝において、体内に摂取された栄養素が、種々の化学反応によって、ATPに蓄えられたエネルギーを用いて、細胞を構成する蛋(たん)白質などの生体に必要な物質に合成されることを異化という。
(3)基礎代謝量は、安静時における心臓の拍動、呼吸、体温保持などに必要な代謝量で、睡眠中の測定値で表される。
(4)エネルギー代謝率は、一定時間中に体内で消費された酸素と排出された二酸化炭素の容積比で表される。
(5)エネルギー代謝率は、動的筋作業の強度を表すことができるが、精神的作業や静的筋作業には適用できない。
(1)は誤り。代謝において、体内に摂取された栄養素が、種々の化学反応によって、細胞を構成する蛋白質などの生体に必要な物質に合成されることを同化といいます。
(2)は誤り。代謝において、細胞内に蓄えられた体脂肪やグリコーゲンなどが分解されエネルギーが発生する過程を異化といいます。
(3)は誤り。基礎代謝量は、覚醒時の測定値です。睡眠中ではありません。
(4)は誤り。エネルギー代謝率は、作業に要したエネルギー量を基礎代謝量で割ったものになります。
(5)は正しい。エネルギー代謝率は、動的筋作業の強度をうまく表す指標の一つです。精神的作業や静的筋作業には適用できません。
問27 耳とその機能に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)耳は、聴覚、平衡感覚などをつかさどる器官で、外耳、中耳、内耳の三つの部位に分けられる。
(2)耳介で集められた音は、鼓膜を振動させ、その振動は耳小骨によって増幅され、内耳に伝えられる。
(3)内耳は、前庭、半規管、蝸(か)牛(うずまき管)の三つの部位からなり、前庭と半規管が平衡感覚、蝸牛が聴覚を分担している。
(4)半規管は、体の傾きの方向や大きさを感じ、前庭は、体の回転の方向や速度を感じる。
(5)鼓室は、耳管によって咽頭に通じており、その内圧は外気圧と等しく保たれている。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。内耳にある前庭は体の傾きの方向や大きさを感じ、半規管は体の回転の方向や速度を感じる平衡感覚器です。
問28 抗体に関する次の文中の[ ]内に入れるAからCの語句の組合せとして、適切なものは(1)~(5)のうちどれか。
「抗体とは、体内に入ってきた[ A ]に対して[ B ]免疫において作られる[ C ]と呼ばれる蛋(たん)白質のことで、[ A ]に特異的に結合し、[ A ]の働きを抑える働きがある。」
(1)A:化学物質 B:体液性 C:アルブミン
(2)A:化学物質 B:細胞性 C:免疫グロブリン
(3)A:抗原 B:体液性 C:アルブミン
(4)A:抗原 B:体液性 C:免疫グロブリン
(5)A:抗原 B:細胞性 C:アルブミン
「抗体とは、体内に入ってきた[ 抗原 ]に対して[ 体液性 ]免疫において作られる[ 免疫グロブリン ]と呼ばれる蛋(たん)白質のことで、[ 抗原 ]に特異的に結合し、[ 抗原 ]の働きを抑える働きがある。」
問29 体温調節に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)寒冷な環境においては、皮膚の血管が収縮して血流量が減って、熱の放散が減少する。
(2)暑熱な環境においては、内臓の血流量が増加し体内の代謝活動が亢(こう)進することにより、人体からの熱の放散が促進される。
(3)体温調節にみられるように、外部環境などが変化しても身体内部の状態を一定に保とうとする性質を恒常性(ホメオスタシス)という。
(4)計算上、100gの水分が体重70kgの人の体表面から蒸発すると、気化熱が奪われ、体温が約1℃下がる。
(5)熱の放散は、輻(ふく)射(放射)、伝導、蒸発などの物理的な過程で行われ、蒸発には、発汗と不感蒸泄(せつ)によるものがある。
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。高温にさらされ、体温が正常以上に上昇すると、内臓の血流量が減少し体内の代謝活動が減少することにより熱の生産量を減らし、皮膚の血管を拡張し、皮膚の血液量を増加させ人体からの放熱が促進されます。
問30 睡眠に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)睡眠と覚醒のリズムのように、約1日の周期で繰り返される生物学的リズムをサーカディアンリズムといい、このリズムの乱れは、疲労や睡眠障害の原因となる。
(2)睡眠は、睡眠中の目の動きなどによって、レム睡眠とノンレム睡眠に分類される。
(3)コルチゾールは、血糖値の調節などの働きをするホルモンで、通常、その分泌量は明け方から増加し始め、起床前後で最大となる。
(4)レム睡眠は、安らかな眠りで、この間に脳は休んだ状態になっている。
(5)メラトニンは、睡眠に関与しているホルモンである。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。レム睡眠では、眼球がキョロキョロ動き脳は覚醒に近い状態です。 一方、ノンレム睡眠は安らかな眠りで、この間に大脳は休んだ状態になります。
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