衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2023年10月) | 衛生管理者 講習会・通信講座

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衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2023年10月)

ここでは、2023年(令和5年)10月公表の過去問のうち「労働生理」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2023年10月)
衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2023年10月)
衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2023年10月)
衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2023年10月)
衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2023年10月)



問21 血液に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)血液は、血漿(しょう)成分と有形成分から成り、血漿(しょう)成分は血液容積の約55%を占める。
(2)血漿(しょう)中の蛋(たん)白質のうち、アルブミンは血液の浸透圧の維持に関与している。
(3)白血球のうち、好中球には、体内に侵入してきた細菌や異物を貪食する働きがある。
(4)血小板のうち、リンパ球には、Bリンパ球、Tリンパ球などがあり、これらは免疫反応に関与している。
(5)血液の凝固は、血漿(しょう)中のフィブリノーゲンがフィブリンに変化し、赤血球などが絡みついて固まる現象である。


答え(4)
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。リンパ球は、白血球の一種で、血小板ではありません。血小板は血液凝固に関与する細胞成分です。



問22 心臓及び血液循環に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)心拍数は、左心房に存在する洞結節からの電気刺激によってコントロールされている。
(2)心臓の拍動による動脈圧の変動を末梢(しょう)の動脈で触知したものを脈拍といい、一般に、手首の橈(とう)骨動脈で触知する。
(3)心臓自体は、大動脈の起始部から出る冠動脈によって酸素や栄養分の供給を受けている。
(4)肺循環により左心房に戻ってきた血液は、左心室を経て大動脈に入る。
(5)大動脈を流れる血液は動脈血であるが、肺動脈を流れる血液は静脈血である。


答え(1)
(1)は誤り。洞結節は、右心房に存在します。左心房ではありません。
(2)(3)(4)(5)は正しい。



問23 呼吸に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)呼吸運動は、横隔膜、肋(ろっ)間筋などの呼吸筋が収縮と弛(し)緩をすることにより行われる。
(2)胸郭内容積が増し、その内圧が低くなるにつれ、鼻腔(くう)、気管などの気道を経て肺内へ流れ込む空気が吸気である。
(3)肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われるガス交換は、外呼吸である。
(4)血液中の二酸化炭素濃度が増加すると、呼吸中枢が刺激され、呼吸が速く深くなる。
(5)呼吸のリズムをコントロールしているのは、間脳の視床下部である。


答え(5)
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。呼吸リズムは、延髄にある呼吸中枢で制御されています。視床下部は、体温調節や内分泌系の調節に関与します。



問24 摂取した食物中の炭水化物(糖質)、脂質及び蛋(たん)白質を分解する消化酵素の組合せとして、正しいものは次のうちどれか。

A:炭水化物(糖質) B:脂質 C:蛋(たん)白質
(1)A:マルターゼ B:リパーゼ C:トリプシン
(2)A:トリプシン B:アミラーゼ C:ペプシン
(3)A:ペプシン B:マルターゼ C:トリプシン
(4)A:ペプシン B:リパーゼ C:マルターゼ
(5)A:アミラーゼ B:トリプシン C:リパーゼ


答え(1)
炭水化物(糖質)を分解する消化酵素として、アミラーゼ、ラクターゼ、マルターゼなどがあります。
脂質を分解する消化酵素として、リパーゼがあります。
蛋白質を分解する消化酵素として、ペプシン、トリプシンなどがあります。



問25 肝臓の機能として、誤っているものは次のうちどれか。

(1)コレステロールを合成する。
(2)尿素を合成する。
(3)ヘモグロビンを合成する。
(4)胆汁を生成する。
(5)グリコーゲンを合成し、及び分解する。


答え(3)
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。ヘモグロビン骨髄で合成されます。肝臓の役割には含まれません。



問26 代謝に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)代謝において、細胞に取り入れられた体脂肪、グリコーゲンなどが分解されてエネルギーを発生し、ATPが合成されることを同化という。
(2)代謝において、体内に摂取された栄養素が、種々の化学反応によって、細胞を構成する蛋(たん)白質などの生体に必要な物質に合成されることを異化という。
(3)基礎代謝量は、安静時における心臓の拍動、呼吸、体温保持などに必要な代謝量で、睡眠中の測定値で表される。
(4)エネルギー代謝率は、一定時間中に体内で消費された酸素と排出された二酸化炭素の容積比である。
(5)エネルギー代謝率は、動的筋作業の強度を表すことができるが、精神的作業や静的筋作業には適用できない。


答え(5)

(1)は誤り。同化とは、体内に取り入れた栄養素(アミノ酸や糖質など)を使って、体内で必要な物質(蛋白質やグリコーゲンなど)を合成する過程を指します。
これは、エネルギーを使って行われる反応です。
一方、細胞内に蓄えられた体脂肪グリコーゲンなどが分解されてエネルギーを発生させる過程は異化です。
異化は、複雑な分子を分解してエネルギーを生成する反応を指します。

(2)は誤り。体内に摂取された栄養素が蛋白質などの必要な物質に合成されるのは、同化の過程です。
同化は、エネルギーを使って新しい物質を作り出すことです。
異化とは、逆に、複雑な分子(グリコーゲン、脂肪、蛋白質など)が分解され、エネルギーを放出する過程を指します。
したがって、この選択肢は同化と異化の意味を取り違えています。

(3)は誤り。基礎代謝量は、心臓の拍動や呼吸、体温維持など、生命維持に必要な最低限のエネルギー消費量を指しますが、これは起きている安静時に測定されるものです。
睡眠中ではなく、通常は目覚めた状態で、心身ともに安静にしている状態で基礎代謝量が測定されます。
睡眠中は代謝がさらに低下しますが、それは基礎代謝とは異なります。

(4)は誤り。エネルギー代謝率とは、運動や活動時に消費されるエネルギーを基礎代謝量に対する割合で表すものです。
たとえば、激しい運動をしている時のエネルギー消費が基礎代謝の3倍であれば、エネルギー代謝率は3となります。
この選択肢で述べているのは、呼吸商(RQ:Respiratory Quotient)です。
呼吸商は、酸素消費量に対する二酸化炭素排出量の比率で、代謝されている栄養素(脂質、糖質、蛋白質)を推定するために使用されます。

(5)は正しい。



問27 筋肉に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)横紋筋は、骨に付着して身体の運動の原動力となる筋肉で意志によって動かすことができるが、平滑筋は、心筋などの内臓に存在する筋肉で意志によって動かすことができない。
(2)筋肉は神経からの刺激によって収縮するが、神経より疲労しにくい。
(3)荷物を持ち上げたり、屈伸運動を行うときは、筋肉が長さを変えずに外力に抵抗して筋力を発生させる等尺性収縮が生じている。
(4)強い力を必要とする運動を続けていると、筋肉を構成する個々の筋線維の太さは変わらないが、その数が増えることによって筋肉が太くなり筋力が増強する。
(5)刺激に対して意識とは無関係に起こる定型的な反応を反射といい、四肢の皮膚に熱いものが触れたときなどに、その肢を体幹に近づけるような反射は屈曲反射と呼ばれる。


答え(5)
(1)は誤り。心臓の筋肉である心筋は不随意筋に属しますが、横紋筋で構成されています。平滑筋ではありません。
(2)は誤り。筋肉は、神経から送られてくる刺激によって収縮しますが、神経に比べて疲労しやすいという特徴を持っています。
(3)は誤り。荷物を持ち上げたり、屈伸運動をするとき、関節運動に関与する筋肉には、等張性収縮が生じています。
(4)は誤り。強い力を必要とする運動を続けていても、筋線維の数は、大人になってからは増えないとされていますが、筋肉を構成する個々の筋線維の太さが太くなることによって、筋肉が太くなり筋力が増加します。
(5)は正しい。屈曲反射は刺激に対する無意識の反応です。熱いものに触れた際に手を引っ込める動作が典型例です。



問28 耳とその機能に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)騒音性難聴は、音を神経に伝達する内耳の聴覚器官の有毛細胞の変性によって起こる。
(2)耳介で集められた音は、鼓膜を振動させ、その振動は耳小骨によって増幅され、内耳に伝えられる。
(3)内耳は、前庭、半規管及び蝸(か)牛(うずまき管)の三つの部位からなり、前庭と半規管が平衡感覚、蝸(か)牛が聴覚をそれぞれ分担している。
(4)前庭は、体の回転の方向や速度を感じ、半規管は、体の傾きの方向や大きさを感じる。
(5)鼓室は、耳管によって咽頭に通じており、その内圧は外気圧と等しく保たれている。


答え(4)
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。前庭体の傾きの方向大きさを、半規管は回転の方向速度を感知します。この記述は逆になっています。



問29 ストレスに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)外部からの刺激であるストレッサーは、その形態や程度にかかわらず、自律神経系と内分泌系を介して、心身の活動を抑圧する。
(2)ストレスに伴う心身の反応には、ノルアドレナリン、アドレナリンなどのカテコールアミンや副腎皮質ホルモンが深く関与している。
(3)昇進、転勤、配置替えなどがストレスの原因となることがある。
(4)職場環境における騒音、気温、湿度、悪臭などがストレスの原因となることがある。
(5)ストレスにより、高血圧症、狭心症、十二指腸潰瘍などの疾患が生じることがある。


答え(1)
(1)は誤り。ストレッサーの影響により、自律神経系と内分泌系を介して心身の活動は活性化される場合もあります。
(2)(3)(4)(5)は正しい。



問30 ヒトのホルモン、その内分泌器官及びそのはたらきの組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。

A:ホルモン B:内分泌器官 C:はたらき
(1)A:ガストリン B:胃 C:胃酸分泌刺激
(2)A:アルドステロン B:副腎皮質 C:体液中の塩類バランスの調節
(3)A:パラソルモン B:副甲状腺 C:血中のカルシウム量の調節
(4)A:コルチゾール B:膵(すい)臓 C:血糖量の増加
(5)A:副腎皮質刺激ホルモン B:下垂体 C:副腎皮質の活性化


答え(4)
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。コルチゾール副腎皮質から分泌されるホルモンで、血糖量の増加に関与しますが、膵臓から分泌されるホルモンではありません。

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