衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2024年4月)
ここでは、2024年(令和6年)4月公表の過去問のうち「労働生理」の10問について解説いたします。
この過去問は、第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の試験の範囲です。
なお、特例第1種衛生管理者試験の範囲には含まれません。
それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:有害(2024年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:有害(2024年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:関係法令:一般(2024年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働衛生:一般(2024年4月)
◆衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2024年4月)
問21 呼吸に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)呼吸は、胸膜が運動することで胸腔(くう)内の圧力を変化させ、肺を受動的に伸縮させることにより行われる。
(2)肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われるガス交換は、内呼吸である。
(3)通常の呼吸の場合の呼気には、酸素が約16%、二酸化炭素が約4%含まれる。
(4)チェーンストークス呼吸とは、肺機能の低下により呼吸数が増加した状態をいい、喫煙が原因となることが多い。
(5)身体活動時には、血液中の窒素分圧の上昇により呼吸中枢が刺激され、1回換気量及び呼吸数が増加する。
(1)は誤り。呼吸は横隔膜や肋間筋の動きによって胸腔内の圧力が変化し、肺が受動的に伸縮します。胸膜自体が運動するわけではありません。
(2)は誤り。肺胞と血液間でのガス交換は、外呼吸です。内呼吸ではありません。
(3)は正しい。
(4)は誤り。チェーンストークス呼吸は、呼吸をしていない状態から次第に呼吸が深まり、やがて再び浅くなって呼吸が止まる状態を交互に繰り返すパターンの呼吸のことです。これは、延髄の呼吸中枢の機能が衰えることで生じる現象です。喫煙が直接の原因になることはありません。
(5)は誤り。呼吸中枢は二酸化炭素分圧の上昇によって刺激されます。
問22 神経系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)神経細胞の細胞体が集合しているところを、中枢神経系では神経節といい、末梢(しょう)神経系では神経核という。
(2)大脳の外側の皮質は、神経細胞の細胞体が集合した灰白質で、感覚、運動、思考などの作用を支配する中枢として機能する。
(3)副交感神経系は、身体の機能を回復に向けて働く神経系で、休息や睡眠状態で活動が高まり、心拍数を減少し、消化管の運動を亢(こう)進する。
(4)自律神経系は、交感神経系と副交感神経系とに分類され、各種臓器に対して両方の神経が支配している。
(5)体性神経には感覚器官からの情報を中枢に伝える感覚神経と、中枢からの命令を運動器官に伝える運動神経がある。
(1)は誤り。中枢神経系で細胞体の集まりは神経核、末梢神経系での集まりは神経節と呼ばれます。記述は逆になっています。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問23 心臓及び血液循環に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)心臓は、自律神経の中枢で発生した刺激が刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、規則正しく収縮と拡張を繰り返す。
(2)肺循環により左心房に戻ってきた血液は、左心室を経て大動脈に入る。
(3)大動脈を流れる血液は動脈血であるが、肺動脈を流れる血液は静脈血である。
(4)心臓の拍動による動脈圧の変動を末梢(しょう)の動脈で触知したものを脈拍といい、一般に、手首の橈(とう)骨動脈で触知する。
(5)動脈硬化とは、コレステロールの蓄積などにより、動脈壁が肥厚・硬化して弾力性を失った状態であり、進行すると血管の狭窄(さく)や閉塞を招き、臓器への酸素や栄養分の供給が妨げられる。
(1)は誤り。心臓の中にある洞結節(洞房結節)で発生した刺激が、刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、心臓は規則正しく収縮と拡張を繰り返します。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問24 脂肪の分解・吸収及び脂質の代謝に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)脂肪は、膵(すい)臓から分泌される消化酵素である膵(すい)アミラーゼにより脂肪酸とグリセリンに分解される。
(2)胆汁は、アルカリ性で、消化酵素は含まないが、食物中の脂肪を乳化させ、脂肪分解の働きを助ける。
(3)肝臓は、過剰な蛋(たん)白質及び糖質を中性脂肪に変換する。
(4)コレステロールやリン脂質は、神経組織の構成成分となる。
(5)脂質は、糖質や蛋(たん)白質に比べて多くのATPを産生するエネルギー源となるが、摂取量が多すぎると肥満の原因となる。
(1)は誤り。膵臓から分泌される膵リパーゼが、脂肪を脂肪酸とモノグリセリドに分解します。膵アミラーゼは、炭水化物を分解する酵素です。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問25 腎臓又は尿に関する次のAからDの記述について、誤っているものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 腎臓の皮質にある腎小体では、糸球体から血液中の糖以外の血漿(しょう)成分がボウマン嚢(のう)に濾(こ)し出され、原尿が生成される。
B 腎臓の尿細管では、原尿に含まれる大部分の水分及び身体に必要な成分が血液中に再吸収され、残りが尿として生成される。
C 尿は淡黄色の液体で、固有の臭気を有し、通常、弱酸性である。
D 尿酸は、体内のプリン体と呼ばれる物質の代謝物で、健康診断において尿中の尿酸の量の検査が広く行われている。
(1)A,B
(2)A,C
(3)A,D
(4)B,C
(5)C,D
Aは誤り。糸球体から濾し出されるのは血漿成分全般で、糖も含まれます。
Bは正しい。尿細管で水分や必要成分が再吸収され、残りが尿として排出されます。
Cは正しい。尿は通常、弱酸性であり、固有の臭気を持つ液体です。
Dは誤り。健康診断では尿酸値は血中で測定され、尿中の尿酸量は測定されません。
問26 感覚又は感覚器に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)眼軸が短過ぎるために、平行光線が網膜の後方で像を結ぶものを遠視という。
(2)嗅覚と味覚は化学感覚ともいわれ、物質の化学的性質を認知する感覚である。
(3)温度感覚は、皮膚のほか口腔(くう)などの粘膜にも存在し、一般に冷覚の方が温覚よりも鋭敏である。
(4)深部感覚は、筋肉や腱にある受容器から得られる身体各部の位置、運動などを認識する感覚である。
(5)平衡感覚に関係する器官である前庭及び半規管は、中耳にあって、体の傾きや回転の方向を知覚する。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。前庭と半規管は、内耳にあり、平衡感覚に重要な役割を果たします。中耳ではありません。
問27 ヒトのホルモン、その内分泌器官及びそのはたらきの組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
A:ホルモン B:内分泌器官 C:はたらき
(1)A:アルドステロン B:副腎髄質 C:血糖量の増加
(2)A:インスリン B:膵(すい)臓 C:血糖量の減少
(3)A:パラソルモン B:副甲状腺 C:血中のカルシウム量の調節
(4)A:プロラクチン B:下垂体 C:黄体形成の促進
(5)A:副腎皮質刺激ホルモン B:下垂体 C:副腎皮質の活性化
(1)は誤り。アルドステロンは副腎皮質から分泌され、体内の水分・ナトリウムの調節に関与します。
なお、副腎髄質から分泌されるアドレナリンは、血糖増加に関係するホルモンです。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問28 免疫に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)抗原とは、免疫に関係する細胞によって異物として認識される物質のことである。
(2)抗原となる物質には、蛋(たん)白質、糖質などがある。
(3)抗体とは、体内に入ってきた抗原に対して体液性免疫において作られる免疫グロブリンと呼ばれる蛋(たん)白質のことである。
(4)好中球は白血球の一種であり、偽足を出してアメーバ様運動を行い、体内に侵入してきた細菌などを貪食する。
(5)リンパ球には、血液中の抗体を作るTリンパ球と、細胞性免疫の作用を持つBリンパ球がある。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。Tリンパ球は細胞性免疫を担当し、Bリンパ球が抗体(免疫グロブリン)を作ります。記述が逆になっています。
問29 ストレスに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)外部からの刺激であるストレッサーは、その形態や程度にかかわらず、自律神経系と内分泌系を介して、心身の活動を抑圧する。
(2)ストレスに伴う心身の反応には、ノルアドレナリン、アドレナリンなどのカテコールアミンや副腎皮質ホルモンが深く関与している。
(3)昇進、転勤、配置替えなどがストレスの原因となることがある。
(4)職場環境における騒音、気温、湿度、悪臭などがストレスの原因となることがある。
(5)ストレスにより、高血圧症、狭心症、十二指腸潰瘍などの疾患が生じることがある。
(1)は誤り。適度なストレッサー(外部環境からの刺激)は、身体的には活動を亢進し、心理的には意欲の向上を生じさせます。ただし、過度なストレッサーは、身体的に疲労が生じ、心理的には不安感を生じさせます。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
問30 体温調節に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)体温調節中枢は、間脳の視床下部にある。
(2)体温調節のように、外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保つ生体の仕組みを同調性といい、筋肉と神経系により調整されている。
(3)寒冷な環境においては、皮膚の血管が拡張して血流量を増し、皮膚温を上昇させる。
(4)計算上、体重70kgの人の体表面から10gの汗が蒸発すると、体温が約1℃下がる。
(5)不感蒸泄(せつ)とは、水分が発汗により失われることをいう。
(1)は正しい。
(2)は誤り。身体内部の状態を一定に保つ仕組みを、ホメオスタシス(恒常性)といいます。
(3)は誤り。寒冷環境では皮膚の血管が収縮し、熱を保持します。
(4)は誤り。体重70kgの人の体表面から100gの汗が蒸発すると、体温が約1℃下がります。
(5)は誤り。不感蒸泄は、体表面や呼気からの水分蒸散であり、発汗とは異なります。
-
同カテゴリーの最新記事
- 2024/10/14:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2024年10月)
- 2024/05/20:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2024年4月)
- 2022/05/20:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2022年4月)
- 2021/11/20:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2021年10月)
- 2021/05/20:衛生管理者の過去問の解説:労働生理(2021年4月)